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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』精神科医が考える国内外の重大トピックス
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.01.16 06:00 最終更新日:2023.01.16 06:00
年も明けてはや10日。今回は、2023年のゆくえを占う意味もこめて、昨年から続いている重大トピックスを精神科医の視点で考察してみます。
■まん延するコロナうつ
ついに4年めに突入したコロナ禍。新型コロナウイルスはこの3年間に人のメンタル面においても大きなダメージを与えました。
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以前、この連載にも書きましたが、「うつ状態」の人の割合はコロナ前の2倍以上に増えている、メンタルクリニックを受診したくても3カ月待ちが普通、という話を聞きました。テレワークなどの新しい働き方が普及するなか、コミュニケーションがうまく取れない、人間関係を構築しづらいなどの問題から「うつ状態」になる人が増えているようです。
小・中学校では、給食時間におしゃべり禁止の「黙食」が今も励行されている学校があると聞きます。高校や大学でも修学旅行や各種行事の中止、部活の制限など、青春を謳歌するどころか、普通に会話したり、友達と遊んだりすること自体がためらわれるような状況が続いているところもあります。
「失われた3年」を過ごしてきた子供たちが将来、人とうまくコミュニケーションを取っていけるのか、懸念を抱いてしまいます。
■戦争への不安
2022年2月24日に開始されたロシアによるウクライナへの軍事侵攻。
両軍の死傷者数が合わせて20万人を超えるなか、現代において、このような一方的な軍事侵攻が許されるのかという憤りにかられます。
台湾をめぐる中国との緊張関係、北朝鮮のミサイル発射問題などを考えると、日本でも同じような軍事紛争が起きる可能性は十分あります。大変な時代になってきました。
■政治家・著名人への襲撃
2022年7月8日、安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃され死亡しました。今の日本において、このような暗殺事件が起きるのかという衝撃。そして、悲しみ……。
しかし、その後、旧統一教会と議員との癒着ぶりが大きくクローズアップされたり、国葬儀をめぐる議論が世論を二分する事態になったりしたためか、銃撃事件自体の記憶は人々の間で薄らいでいる感があります。
そんななか、11月29日には東京都立大学のキャンパス内で教授の宮台真司氏が何者かに襲われ重傷を負うという事件も起きました。言論活動をおこなう人への襲撃というのは、日々情報を発信し続けている私にとっても、他人事ではありません。
■広がる情報戦
ウクライナがロシアに対して善戦している理由のひとつに、ウクライナのゼレンスキー大統領が情報戦に長けている、ということが挙げられるでしょう。
熱のこもったゼレンスキー大統領の演説は、国境を越えて多くの人の共感を呼び、多くの国から物心両面の支援を取りつけました。このように、SNSや動画で影響力を持つことは、国家や企業の生き残りにおいて不可欠な要素になっています。
一方でコロナ禍では、デマ情報や信憑性が疑わしい情報に振り回された人もたくさんいました。正しい情報を得ることは、私たち個人においても、不可欠なスキルになっているといえます。
■アジアのエンタメに世界が注目
村上春樹の短編小説を映画化した濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が、米国アカデミー賞国際長編映画賞を受賞しました。『おくりびと』(2009年)以来、13年ぶりの快挙です。
2020年には、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が、アカデミー作品賞、監督賞など四冠に輝きました。そして、2022年は韓国発のNetflixドラマ『イカゲーム』が、非英語圏のドラマとして初めてエミー賞で監督賞など6部門を受賞しました。日本や韓国など、アジアのエンターテインメントが世界的に注目を浴びているのです。
日本製作の映画、アニメ、漫画、ゲームなどのコンテンツは、世界中の憧れの対象で、これらのクリエイターは世界を舞台に活躍できる時代になっています。世界的に活躍する日本人がもっと増えてほしいと願います。