ライフ・マネーライフ・マネー

「自動運転バス」が走る街では「家の前にバス停」が実現していた!導入2年以上で自動運転事故はほぼゼロ

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.04.22 16:00 最終更新日:2023.04.22 16:00

「自動運転バス」が走る街では「家の前にバス停」が実現していた!導入2年以上で自動運転事故はほぼゼロ

茨城県境町で自動運転バスが運行されている様子(写真提供・BOLDLY)

 

“町民の足” として大いに活躍している自動運転バス。佐治氏も境町も驚いたのはその経済効果である。

 

「運行から2年が経過しましたが、これまで1万5000人以上の方々に乗車いただき、河野太郎デジタル担当大臣やドイツのバイエルン州議会など、自動運転バスに関する視察だけで、256団体、1401名(2023年3月30日現在)を受け入れるなど、町のPRにもつながっています。

 

 テレビや新聞などのメディアに取り上げられることも多く、BOLDLYが試算したところによると、およそ7億円もの経済効果が生まれています」(境町企画部地方創生課の担当者)

 

 佐治氏も声を揃える。

 

「視察にいらしてくださった多くの方から、『かわいい』『かっこいい』というような評価をいただきます。その結果スポンサーがつきましたし、ある企業からは町に1000万円の寄付がありました。

 

 とにかく使っていただこうと、自動運転バスは無料でスタートしたのですが、仮に運賃を100円としたら10万人乗車しないと1000万円にはなりません。

 

 境町の人口は約2万人ですから、こういった寄付はかなり大きいと思います。マスコミの方も視察にいらっしゃるので、ニュースや記事になったりします。

 

 すると、町外に住んでいるお孫さんが自動運転バスに乗ることを目的に遊びに来たりするんですね。ゴールデンウィークなどは、すごい賑わいですよ。

 

 結果的に住民の方も『境町に住んでいてよかった』と満足度も高くなり、おじいさんやおばあさんの目が輝いてくるんです(笑)。今や自動運転バスは “町おこし” のようになっていると思います」

 

 これまでに起きた事故は2件のみ。1件は自動運転バスが停車中に、バックしてきた一般車と衝突した事故で、一般車の過失が10割。もう1件は、町の所有地内での新人トレーニング中、「手動モード」時に施設とぶつかる物損事故だった。自動運転による事故はほぼゼロと言っていい。

 

 現在、時速20kmの運行速度で、計3台を運行している。

 

「利用者から『速度が遅い』などの声はありません。病院やスーパーに行くのに1分1秒を争っているわけではないからでしょう。

 

 反対に『そんなに速度を上げるな』と、おじいさん、おばあさんに怒られたこともあります(笑)。

 

 いまのところは住民の方からは時速20kmぐらいがベストという評価ですが、必要があれば速度を上げていきたいと思います」(佐治氏)

 

 気になる自治体の費用面だが、境町では「ふるさと納税」と補助金を活用しており、境町の持ち出しはゼロ。佐治氏は「自動運転バスは住民が育てていくもの」だと語る。

 

「これまで住民のみなさんがルールを守ってくれているので、事故も起きていません。でも、『センサーがあるから止まってくれるだろう』などと、急に飛び出したりすれば、事故が起きてしまいます。

 

 境町のみなさんは『交通弱者のために』と、ルールを守ってくれているんです。自動運転バスは交通弱者が多く、困っている人が多い地域にこそ、普及させたい。まさに、地域の住民が育てていくものだと思っています」

 

 境町企画部地方創生課の担当者も今後についてこう話す。

 

「『高齢者が買い物に行けるようになった』『これで免許を返納しても生活できる』『塾の送り迎えがいらなくなった』などの声をいただくとともに、『ほかのルートも拡張してほしい』『夜の便も運行してほしい』などのご要望もいただいています。

 

 今後も境町の “横に動くエレベーター” として、自動運転バスを地域のみなさまと育てていくとともに、『誰もが生活の足に困らない町』を目指していきたいと思います」

 

 自動運転バスは、交通弱者を助ける公共交通本来の役割だけでなく、町そのものに活気をもたらす大きな存在となっている。

( SmartFLASH )

12

今、あなたにおすすめの記事

ライフ・マネー一覧をもっと見る