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「自動運転バス」が走る街では「家の前にバス停」が実現していた!導入2年以上で自動運転事故はほぼゼロ

ライフ・マネー 投稿日:2023.04.22 16:00FLASH編集部

「自動運転バス」が走る街では「家の前にバス停」が実現していた!導入2年以上で自動運転事故はほぼゼロ

茨城県境町を走る実際の自動運転バス(写真提供・BOLDLY)

 

 4月1日に施行された「改正道路交通法」によって、特定条件下での運転を自動化する「レベル4走行」が可能になった。これで、無人自動運転の車が公道を走れるようになり、各地で実用化に向けた実証実験がおこなわれている。

 

 そんななか、ひと足早く、自動運転のバスが公道を走る “未来の世界” を実現している地域がある。

 

 北海道上士幌町と茨城県境町、そして5.9ヘクタールの広さを誇る羽田空港に近い大型複合施設「羽田イノベーションシティ」(東京都大田区)だ。

 

 

 なかでも2020年11月の運行開始から2年が経った茨城県境町では、すっかり町民の足として親しまれている。

 

 運行開始前、境町にとって交通弱者への支援は急務だった。境町企画部地方創生課の担当者はこう話す。

 

「境町には鉄道の駅がなく、車が生活の足として必要不可欠です。そのため高齢者が免許を返納したくてもできない状況にありました」

 

 少子高齢化により、全国各地で同じような公共交通の課題を抱えており、境町も頭を悩ませていた。

 

「公共交通の充実について検討を進めるなかで、2019年11月に自動運転バスのニュース記事を目にしました。

 

 地方では、バス運転手のなり手が確保できず、地域交通の維持が困難になりつつあります。この問題を解決するため、自動運転バスの導入を決断しました」(同)

 

 こうして境町が連絡を取ったのが、自動運転バスを運行しているソフトバンク傘下のBOLDLY(ボードリー)株式会社だった。

 

 現在、境町で運行されている自動運転バスは、乗務員1人が乗車しているが、いずれは「レベル4走行」での運行を目指すという。同社の佐治友基社長がこう話す。

 

「旧来のバス路線は、自治体やバス事業者が都市計画や土地活用の計画などを考慮して、人通りが多くなりそうな場所を想定して決めていたと思うんです。

 

 でも、自動運転バスを走らせたい地域は、昔はバス路線があったが現在はなくなって困っている人が多い地域なので、お年寄りや子育て中のお母さん世代などに、どこに立ち寄るルートが必要か、さまざまな声を聞きました。

 

 すると、役場や郵便局や病院などの公的施設を結ぶルート以外に、学校や公園やスーパーなどにバス停を設置してほしいという意見が多かったんです。

 

 当社では、携帯電話を所持している方が町内のどこに何時間滞在したかなどをマップ上で見える化して、自動運転のルートがきちんと住民の方の “足” になっているか、町のみなさんと話し合いながらルートを決めています」

 

 現在の運行ルートは2つ。佐治氏によると、自動運転バスの運行によって思いもよらないメリットがいくつもあったという。まずはバス停の設置についてである。

 

「バス停はルートと同様、住民のみなさんと話し合いながら決めていますが、『私の家の前に置いてください』『隣の家のお母さんが病院通いをしているので、家の前にバス停があったらいいと思います』など、切実な声がありました。

 

 そのため、かなり実生活に即したバス停になっています。その際に非常に驚いたのが、住民のみなさんが自分の家の敷地内、民有地と呼ばれる場所にバス停を置かせてくださったことです。

 

 道路上に置くとなると行政手続き上、道路使用許可などが必要になってくるのですが、民有地なのでその必要はないですし、管理も非常に楽です。

 

 バスの停車場所だとわかるように、自分の敷地内の路面にプリントをしてくれている方もいます。こうしたご協力は本当にありがたいと思っています」

 

 スーパーや病院などは、当初、公道上にバス停を設置していたが、「雨が降ったときや荷物が多いときにバス停まで歩かなくてすむ」ということで、敷地内にバス停を置くことを許可。バスが入ってきて、出入り口からすぐ乗れるようにしているという。

 

「より使いやすいように、住民自身がバスの路線のデザインに関わっていることがすごい」と、佐治氏は話す。

 

 実は、自動運転バスの運行が交通安全の面でもひと役買ったという。

 

「自動運転バス導入初期、郵便局や病院など住民が出かける場所は交通量が多く、路上駐車が両側を埋めているような状態でした。そんな道路を自動運転バスが通れるのかと心配されてました。

 

 ところが、『自動運転バスを走らせます。路上駐車がないほうがスムーズに走れるのでご協力をお願いします』といった告知をおこなったところ、翌日ぐらいから、一気に路上駐車がなくなったんです。

 

 これは世界的に見ても珍しい事例で、たとえば中国などは『自動運転だから避けてくれるんでしょ』と突っ込んできたり、割り込んできたりするような町もあります。

 

 でも、境町の住民の方々は『交通弱者のためだから』と非常に協力的でした。その結果、警察からも路上駐車がなくなり、交通安全の面で非常によかったと評価されています」

( SmartFLASH )

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