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インフルエンザワクチンをもう一度学び直す…鼻に噴霧する “生” タイプとは?

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.10.30 11:00 最終更新日:2023.10.30 11:00

インフルエンザワクチンをもう一度学び直す…鼻に噴霧する “生” タイプとは?

写真:ロイター/アフロ

 

 インフルエンザワクチンは小児のインフル発症を防いでくれるだけでなく、重症化、入院を予防してくれます。

 

 日本では、小児の接種は悪名高い「前橋レポート」(群馬県前橋市の医師会が、市内の小学生を対象としてインフルエンザワクチンの効果を調査したレポート。調査結果として、集団接種した地域としていない地域とで罹患率や超過死亡などに大きな差が認められないとしたが、この研究内容には多くの疑問が呈されている)以降、定期接種がなされなくなりましたが、本当は推奨されてよい大事なワクチンです。

 

 

 ですから、インフルエンザワクチンは定期接種ではないものの、日本では自治体の多くが助成をしています。地方が助成しており、効果が科学的に分かっているのに、「定期接種」に組み込まれないって理不尽ですよね。

 

 さらに、小児のインフルエンザワクチンは運用が間違っています。なぜか日本では、小児のインフルエンザワクチンは2回接種が行なわれることが多いです。しかし、本来は「生まれてはじめての接種」だけが2回です。翌年からは、年1回でよいのです。

 

 あと、インフルエンザワクチンも不活化ワクチンです。

 

 ワクチンは古典的には、生ワクチンと不活化ワクチンに分けられます。生ワクチンは「生きている」病原体の病原性を減らしたり、なくしたりしたワクチンです。不活化ワクチンは病原体を殺してワクチンにしたものです。一般には生ワクチンのほうが、抗体産生能力が高く、長期間の免疫が得られます。

 

 インフルエンザワクチンは「不活化」ワクチンだと申しましたが、じつは生ワクチンもあるのです。それがフルミスト。

 

 フルミストは鼻に噴霧するインフルエンザワクチンです。2023年2月に日本でも承認されました(第一三共)。もっとも、米国では2003年から使っていたワクチンです。20年遅れで日本にやってきたって感じです。

 

 インフルエンザウイルスはA型とB型に大別されます。不活化ワクチンはA型2種類、B型2種類をカバーしているワクチンです。フルミストも同様で、A型2種類、B型2種類、合計4種類をカバーするワクチンです。注射のワクチンと変わりありません。

 

 ただし、効果の程はそれほどでもありません。

 

 2~17歳を対象とした研究ですと、通常のインフルエンザワクチンの効果が67%だったのに対して、フルミストは20%しかありませんでした。95%信頼区間でいえばマイナス6%から39%ということで、これはよくありません。信頼区間がゼロ以下からゼロ以上の範囲ということは、「効くか効かないかはっきりしない」ことを意味しているからです。

 

 そもそもフルミストは生ワクチンです。ですから、免疫抑制があったり妊娠していたりすると禁忌です。

 

 確かに痛くないという利点はあるのですが、効かなければ意味がないですし、使えなくても意味がありません。悩ましいですね。

 

 米国では2016~2017、2017~2018年シーズンにはフルミストの推奨を取り下げていました。その後、米国では新たなウイルス株を使ってフルミストを生産しましたが、2018~2019年には使用量が少なすぎてその効果は吟味できませんでした。

 

 そして新型コロナ到来。インフルは数年間、まったく流行しなかったのでした。こうした中で、このワクチンが日本に入ってくるわけで、どのくらい役に立つものなのかは、今後の吟味が必要です。

 

 ちなみにフルミストは低温でのみ増殖するよう生ワクチンを操作されています。低温の鼻では増殖しますが、肺などの身体深部では増殖せず、よってワクチンがインフルエンザの下気道感染のような症状を起こすことはない、と説明されています。

 

 米国では2~49歳に使えますが、日本ですと2~19歳に適応があります。痛いのは絶対に嫌、という方にはおすすめかもしれません。

 

 

 以上、岩田健太郎氏の新刊『ワクチンを学び直す』(光文社新書)をもとに再構成しました。それぞれのワクチンがどう活用されるのかを、包括的に、かつわかりやすく解説します。

 

●『ワクチンを学び直す』詳細はこちら

( SmartFLASH )

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