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日本の服の4枚に1枚は新品のまま廃棄…その数は年間10億枚ライフ・マネー 投稿日:2019.05.07 06:00

日本の服の4枚に1枚は新品のまま廃棄…その数は年間10億枚

 

 1年間に10億枚の新品の服が、一度も客の手に渡ることもないまま捨てられているらしい──。とんでもない数字だ。日本で供給されている服の4枚に1枚は、新品のまま捨てられている計算になる。

 

 誰しも、買った服が似合わなかったり、すぐに流行遅れになったりして、ほとんど着ずに捨ててしまった苦い経験はあるだろう。だが、そもそも商品として消費者の手元に渡ることすらないまま、大量に処分されているとしたら、そうした「無駄」とは全く別の次元の問題だ。

 

 廃棄は事実なのか。なぜ、そんなことが起きてしまうのか。 
 2018年3月、私は大阪市の在庫処分業者「Shoichi(ショーイチ)」の西成区にある倉庫の一つを訪ねた。ここに、アパレルメーカーや工場などから、「売れ残り」の品が大量に持ち込まれていると聞いたためだ。

 

 

 3階までの高さに一部が吹き抜けになった倉庫の中には、段ボール箱が何重にも整然と積み重ねられている。「メンズSS」「スカート20枚」。それぞれの箱には白い紙が貼られ、マジックペンでこんな文字が書き込まれている。

 

 箱の中身は、すべて新品の服。箱をのぞいてみると、きちんとたたまれ、そのまま店に出しても問題なさそうな商品ばかりだ。プレスされ、ビニールシートで保護されたものもある。

 

「在庫は常時出たり入ったりしてるので、きちんと把握できてるわけじゃないけど、他の倉庫と合わせて100万枚はありますね」と社長の山本昌一さんは言う。そんな話をしている間にも、トラックがやって来て段ボール箱が下ろされ、フォークリフトで奥へと運ばれていく。

 

 この日も、1日で4000~5000枚が持ち込まれたという。
 こうした衣料品はなぜ、ここに来ることになったのか。山本さんは段ボール箱を開けながら、説明してくれた。

 

「これはいわゆるB品で、工場で検品を通らなかったやつですね。素人目にはほとんどわからないけど、ここは結構チェックが厳しいメーカーさんです」

 

 段ボール箱の中にあったのは、女性もののグレーの薄手のパーカーが十数着。広げて見せてくれたが、私にはどこに問題があるのかは全くわからない。

 

「これはメーカーから持ち込まれたもの。お店で売れ残ったもんなんで、サイズがバラバラです」

 

 そこに入っていたのは、女性ものの茶色の落ち着いたデザインのパンツ。定番に近いので、店に置いておけば売れそうな気もするのだが、サイズがそろっていないと置いておくのは難しい、という事情らしい。

 

 持ち込まれた段ボール箱には、メーカーや売り主の名前が入ったものも少なくない。回りながら見ていくと、私も最近買ったことがある大手の通販業者や、10代のころに流行っていたブランドもある。

 

 山本社長によると、持ち込まれるのは圧倒的に女性ものが多い。納期に数日間に合わなかったためにメーカーが受け取りを拒否し、行き場がなくなったというようなケースもあり、一度も売り場にすら出ることがないまま、「処分品」となるものもあるという。

 

 こうして売れなくなった品の「行き先」を見つけるのがショーイチの仕事。自社の運営するオンラインショップで売ることもあれば、駅などで開催される催事に出すこともある。持ち込まれた商品のタグを手作業で外し、どのブランドの商品かはわからないようにしてから出品している。

 

 ブランドによっては、自社の商品を正価で売っている店舗の近くで売られると困るため、「催事場はNG」など、条件を付けてくるところもある。買い取りの値段はこうした条件にもよるが、定価の1割ほどで買い取り、17~18パーセントで売れるのが一般的な相場。まれに、どうしても売れ残って廃棄する場合もあるが、全体の1パーセント以下だという。

 

 それにしても、なぜこんなに売れ残るのか。山本さんの紹介で、同社に商品を持ち込んだことのある60代の男性に話を聞くことができた。女性ものの衣料品や雑貨を扱うアパレルメーカーで長く営業担当をしていたという。以前は岐阜など国内の工場で作っていたが、いまは主に中国で作っている。

 

「服っちゅうのは、半年とか1年くらい前に、流行の見込みを立てて発注するんですが、外れてしまうことも多いんですわ。特に、冬物のアウターなんかは大変で、寒ければ売れるけど、暖冬になると3分の1は売れ残る。値段下げてもだめなんです」

 

 次の年にまた売る、という選択肢はないのだろうか。

 

「やっぱり流行がありますからね、1~2年置くともうだめです。メーカーも、毎日、ものを作ってるわけなので、そのまま在庫として抱えてると、資金もショートしてしまう。次の仕入れのためにも、早めにさばかなあかん。その意味では、ここ(ショーイチ)みたいにタグを変えて、ブランド名がわからんようにして売ってくれるっちゅうのはすごくありがたいですわ」

 

 零細から大手まで、こうしたメーカーとの取引を続けてきた山本社長は、「うちみたいな企業は、いまのアパレル業界に必要なインフラ」と表現した。

 

「どんな有能な人でも、ちょうど売れる量だけ作るのは不可能。客がどのくらい買ってくれるかをきちんと予測するのは無理なんで、多めに作るか、もしくは客を待たせるか、ということになる。

 

 でも、待ってまで買ってもらえる商品はそう多くない。販売機会をなるべく逃さないためには、やっぱり多めに作るしかないのかなと思います」

 

 

 以上、仲村和代/藤田さつき著『大量廃棄社会 アパレルとコンビニの不都合な真実』(光文社新書)をもとに再構成しました。朝日新聞の人気企画「2030 SDGsで変える」企画からの書籍化です。

 

●『大量廃棄社会』詳細はこちら

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