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ドイツに学ぶ「有休」事情…違法な残業させたら上司に罰金も

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2020.03.02 16:00 最終更新日:2020.03.02 16:00

ドイツに学ぶ「有休」事情…違法な残業させたら上司に罰金も

 

 日本人の消化率の低さは異常です。先日、私の知り合いの日本人女性がツアーで母親と一緒に10日間のヨーロッパ旅行をしたのですが、一緒に行ったツアー仲間から「学生さん?」と聞かれたのだそう。

 

 知り合いは40代で、初めはなぜこのように尋ねられるのか不思議に思っていたそうですが、質問してきた日本人客は「10日間も旅行できる人は会社員ではないはずだから大学生に違いない」と思ったのだということでした。全くもって日本人らしい話だと思いました。

 

 

 ドイツを含むヨーロッパでは10日間どころか3週間ぐらい続けて休む人も普通にいますが、日本では1週間の有休でさえ「長い」と言われます。だから、10日間海外旅行をしている人=学生さんと見なされてしまうわけです。

 

 ちなみに私自身は日本の会社に8年ほど勤めた経験がありますが、ある時に10日間会社を休んでドイツの実家に帰ったところ、戻ってきてから友達に「10日も休むなんて出世を諦めたんだね」と言われたことを思い出します。それほどニッポンでは有休が特別視されているのでした。

 

 ただ最近は、有休を取れずに悔しい思いをした経験に「戒名」をつけ、供養するという「有給浄化」イベントが都内で開催されるなど、休みを取れない辛さにもスポットが当たるようになってきています。

 

 法律面でも明るい兆しが見えます。それは2019年4月から日本で有休の取得が義務化されたことです。その日数は「5日」ということです。

 

 筆者の母国ドイツでは20日以上ある有休を皆が使い切るのに、なぜ日本では与えられた有休全てを消化することを義務化しないのか疑問が残るところですが、それでも一歩前進したのは間違いありません。

 

 この「5日間ルール」は全ての企業に適用され、違反した企業には罰金が科せられる可能性があります。

 

 私の出身国であるドイツでは法律で義務付けられている有休は年に24日間ですが、多くの企業ではそれ以上の日数を従業員に与えており、年30日間の有休がある人も多くいます。

 

 この30日を1年の間に2、3回に分けて使うのですが、ドイツでは病欠は有休から引かれないため、日本のように「万一、病気になった時のために取っておこう」と考える人はいません。

 

 ドイツ人は有休は全部使い切ります。それは、従業員側の権利意識が強いということに加え、有休を取らせない企業には罰則があるからです。ドイツでは労働安全局(日本の労働基準監督署に相当)がこのチェックに当たり、従業員に十分な休息を与えていない企業は処罰の対象となります。

 

 有休の消化や違法な残業について、ドイツの労働安全局が「企業が従業員に違法な働き方をさせていないか」を随時チェックしています。1日の労働時間は最長で10時間と定められているため、企業がもし毎日10時間以上の労働を社員に強いていたり、週末に働かせていることが発覚した場合には、罰金のペナルティがあります。

 

 面白いのは、上司が部下に違法な残業を強いる場合、この罰金は会社ではなく、上司のポケットマネーから支払われる場合があるということです。経営者には最高で1万5000ユーロ(約210万円)の罰金が科されます。

 

 2009年にはテューリンゲン州の労働安全局が、ある病院の院長が医師たちに超過労働をさせていたという理由で6838ユーロ(約85万円)の罰金を科しました。

 

 有休に関しても、基本的には全て使いきることが原則です。そのため部下が有休を取るよう上司が目を光らせていることも多いのです。

 

 ドイツでは1日に認められている最長の労働時間は10時間と書きましたが、何日か連続で10時間を超える残業があっても即違反になるわけではありません。多く働いた分を他の日に「調整」すれば問題ありません。つまり、残業した分を「お金」でもらうのではなく「時間」で調整するというわけです。

 

 お金をもらったほうが良いと考える人もいるかもしれませんが、この「時間調整」の良いところは、過労を防げることです。具体的に言うと、たとえば、定時が17時の会社で20時まで3時間の残業をしたら、次の週に定時より3時間早く上がる、つまり14時にオフィスを後にするというわけです。

 

 ここでの「10時間」は、あくまでも1日の最長の労働時間であり、ほとんどの企業ではそれより少ない8時間でその日の業務を終了します。

 

 また、その日の仕事が終わってから次の就労までに、少なくとも11時間は空けなければいけない「インターバル規制」もあるため、従業員が過度に疲労することは日本と比べて少ないと言えるでしょう。

 

 日本も義務化への第一歩を歩み出したので、今後に期待したいです。

 

 

 以上、サンドラ・ヘフェリン氏の新刊『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)をもとに再構成しました。日本を愛する日独ハーフの作家が、日本の「負の連鎖」を断ち切る方法を提言します。

 

●『体育会系』詳細はこちら

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