国立がん研究センターが6月末に発表した「全国がん罹患モニタリング集計 2012年罹患数・率報告」が話題だ。今回、初めて 全47都道府県の登録データが揃い、「ガンになりやすい県」の比較が可能になったからだ。
男性10万人あたりのガンの罹患率を見ると、トップの秋田県は、最下位の鹿児島県より、約1.7倍もガンにかかりやすい。
しかし、いまや男性では62%が、一度はガンと診断される時代。問題は、ガンにかかっても「治るかどうか」ではないだろうか。
そこで、本誌は最新の公表値である2012年のデータをもとに、男性のガンの「生還率」を独自に算出した。各都道府県には、医療機関から罹患者数が、市町村から死亡者数が報告される。その値をもとに、独自に計算したものだ。
これにより、あなたの住む都道府県のガン治療の有効性がわかるのだ。全部位のガン生還率トップは長野。同県でガンの緩和ケアをおこなう平方眞・愛和病院副院長はこう語る。
「長野県は農村医療や地域医療の先進県といわれます。かつては塩辛い食べ物が多く、胃ガンや脳卒中の割合も高かった。
今では、県や住民も減塩や野菜摂取を進める『食生活改善運動』など、予防医学に積極的ですので、検診で生存率が高い早期ガンが見つかることが多いと考えられます」
47都道府県のガン治療の実力を研究している長浜バイオ大学教授の医学博士・永田宏氏は「ガン医療に地域間格差があるのは一目瞭然」と断言する。
「専門医が大都市に集中していることは否めない。ただ、人口あたりで見ると、地方でも充実している県はあります。たとえば、日本海側。福井や石川は実力のある病院が多い」
6月末の報告では、ガンと診断された人の割合は日本海側で高く、石川は秋田、和歌山に次ぐワースト3位。しかし、生還率では2位という、典型的な「ガンになっても治る県」だ。総合8位になった隣の福井県も胃ガン、大腸ガンの生還率が高く、男性の平均寿命は80.47歳と全国第3位(2013年)。
医学博士で山野医療専門学校副校長の中原英臣医学博士が説明する。
「早期のガン治療に関しては、標準的治療が普及しているため、都道府県格差はそれほどない。しかし、難しい手術になると、地域、病院、診療科によって格差が出てくる。『このガンならこの病院』と、情報を集めておくことが、生還率を高めるために大切です」
住んでいる都道府県のガン治療体制の情報を集めることが、ガンからの生還の第一歩なのだ。
(週刊FLASH 2016年8月16、23日号)