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ドラマ『silent』聖地巡礼で思い出す甘酸っぱい青春の記憶…相手の “心” をちゃんと聞いてきた?/女子アナ横井弘海のエンタメ時間

芸能・女子アナ 投稿日:2022.12.17 16:00FLASH編集部

ドラマ『silent』聖地巡礼で思い出す甘酸っぱい青春の記憶…相手の “心” をちゃんと聞いてきた?/女子アナ横井弘海のエンタメ時間

青葉紬役の川口春奈(写真・フジテレビ)

 

 12月22日、人気連続ドラマ『silent』(フジテレビ系)がついに最終回を迎えます。

 

 主人公の青羽紬(川口春奈)が、高校時代に幸せな日々を過ごした恋人の佐倉想(目黒蓮[Snow Man])と、音のない世界で “出会い直す” という、切なくも温かいラブストーリー。

 

 想は、地元・群馬を離れ、東京の大学へ進学したタイミングで、突然紬に別れを告げ、姿を消してしまう。それから8年の月日が流れ、紬は幼なじみで想の友人でもあった戸川湊斗 (鈴鹿央士)と将来を考えるように。

 

 

 そんなとき、紬が駅で偶然に想を見かけたことから、ドラマが始まります。想は、若年性の難聴を発症し、聴力を失っていたのです。

 

 このドラマをめぐって、今、あちこちでサイレントブームが巻き起こっています。

 

 いわゆる「見逃し配信」と呼ばれる民放公式テレビ配信サービス「TVer」では、再生数の記録を次々と塗り替え、歴代最高記録となる531万再生を達成。「SNS流行語大賞」2022年でも、第2位に「#silent」が選ばれました。

 

 実は、私は元テレビ東京の友人にすすめられ、途中から見始めてはまりました。ディレクターだった中島洋子さんがこんなふうに番組の魅力を熱く語ったことがきっかけです。

 

「主人公の2人だけでなく、周りの人たちみんなに感情移入してしまうくらい1人1人の描き方が丁寧で深い。

 

 耳が聞こえる人と、生まれつき耳が聞こえない人、途中から聞こえなくなった人の間にある壁、それを乗り越えていく過程を押しつけがましくなく、自然に理解して共感できるという意味で、社会的にも優れたドラマだと思う」

 

 この言葉を聞いて、即「TVer」を利用開始。仰るとおり、登場人物の誰もがよい人で、しかも切ない味を出していることに感動しました。第1回から見始めて、その後、何度も見返しては涙しています。

 

 ついに、ドラマの舞台として登場する小田急線「世田谷代田駅」にも出かけてしまいました。改札を出ると、目の前に美しい富士山が見える静かな小さい駅ですが、今は平日の昼間から若い女性たちが多数下車。想が座った駅前のベンチを順番待ちして記念写真を撮る聖地として賑わっていました。

 

 近所に住む知人は、ワンコとの散歩コースに立ち寄るカフェもロケで貸し切りになって入れないと、少しご機嫌斜めでしたが、お天気のいい日の散歩コースにオススメです。

 

 このあたりは、小田急線の地下化にともない、「東北沢駅」~「下北沢駅」~「世田谷代田駅」の線路跡地を開発して、オシャレな商業施設あり、可憐な草花が生い茂る遊歩道ありの「下北線路街」と呼ばれています。

 

 近隣の方にはしばらくにぎやかすぎるかもしれませんが、『silent』効果で、甘酸っぱい青春の街というような印象が新たに生まれたのではないでしょうか。

 

 聖地と言えば、想と紬がしばしば語り合うシーンで使われる目黒区駒場の「アネアカフェ松見坂」も、入店するのに行列ができていました。2人が座った窓際中央の席は、「silent席」としてネット予約を受け付けるそう。一度は座りたい、という気持ちもわかります。

 

 さて、ストーリーのみならず、ファッションやインテリア、音楽など、その世界観も含めて見どころ満載の『silent』は、登場人物が「言葉」についてよく語ります。それは、言葉を生業にしている自分にも、とても響くところです。

 

 たとえば、高校生の想が「言葉は何のためにあるのか」と作文で読むシーン。これは、ドラマを見ている私たちへの問いかけに違いないと思っています。

 

 作文を発表する声を聞いて、高校生の紬は「好きな声で言葉を紡ぐ人」と恋に落ちましたが、8年後に再会し、ようやく打ち解けてきたある日、想が「声を聞きたい。もう聞こえないなら、好きにならなければよかった」と涙を流したとき、紬はこんな言葉を発します。

 

「人それぞれ違う考え方があって、違う生き方をしてきたのだから、わかり合えないことは絶対ある。それでも一緒にいたいと思う人と一緒にいるために言葉があるのだと思う」

 

 紬の、女性としての成長を感じた瞬間です。

 

 また、手話の先生の春尾正輝(風間俊介)が語った「手話はコミュニケーションの手段でしかなかった。言葉の意味を理解することと、相手の思いがわかることは違う。結局は伝えたいとか、受け取ろうとか、そういう気持ちがあるかどうかなのだと思う」という言葉も印象的でした。

 

 ドラマのなかで展開される、そんな静謐なコミュニケーションを見ながら、胸がキュンキュン鳴ります。春尾先生が言うとおり、互いの目を見ながら一生懸命に伝えたり、理解しようとしたりする気持ちに、心が動かされるのでしょう。

 

 同時に、自分が発する言葉や聞き取る姿勢に、本当に心がこもっているのか、という思いも生じます。『silent』は、せつなくて、もどかしくて、自分の淡い恋心まで思い出させてくれますが、うまくいかなかった恋で、自分は相手の “心” をちゃんと聞こうとしていたのかな、なんて反省も。

 

 話は尽きませんが、最終話(第11話)は、SNS上の「もっと見たい」という声に応えるべく、15分拡大での放送が決定したそうです。はたして、『silent』は、どんなラストを迎えるのか。涙にくれるのか、笑顔で祝福できるのか、番組が始まるのをドキドキしながら待っています。

横井弘海

東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)

( SmartFLASH )

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