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本邦初公開「赤の女王」のマスクにご対面…古代メキシコ展で文明の興亡に思いを馳せる/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

芸能・女子アナ 投稿日:2023.07.29 16:00FLASH編集部

本邦初公開「赤の女王」のマスクにご対面…古代メキシコ展で文明の興亡に思いを馳せる/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

国立博物館入口のポスター

 

 特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン」が、現在、上野の東京国立博物館 平成館東京で、9月3日まで開催中。その後、福岡の九州国立博物館(10月3日~12月10日)、大阪の国立国際美術館(2024年2月6日~5月6日)を巡回します。

 

 マヤ、アステカ、テオティワカンというメキシコの代表的な古代文明の全貌を、

 

 

第1章 古代メキシコへのいざない
第2章 テオティワカン 神々の都
第3章 マヤ 都市国家の興亡
第4章 アステカ テノチティトランの大神殿

 

 という構成で、本邦初公開の「レイナ・ロハ(赤の女王)」のマスクはじめ約140件の貴重な出土品を紹介しています。

 

 古代メキシコ文明は、マヤ文明の都市遺跡チチェン・イツァ、都市遺跡のテオティワカン、メキシコシティ中央広場のアステカ文明(14~16世紀)の遺構であるテンプロ・マヨール(中央神殿)などが世界遺産に登録され、世界的に人気の観光地として開放されている一方、いまだ解明されていないことも多い文明です。

 

 個人的には、マヤの子孫のお尻に、私たちと同じ蒙古斑がついていることに、とても親しみを感じています。

 

 公式の図録に、岡山大学の杉山三郎特任教授の解説があり、「ベーリング海峡が陸続きだった1万年以上前、日本を含む北東アジア沿岸の海洋民が海岸づたいに北米、中米、南米へと渡っていった」とあります。アジアから渡ったメソアメリカ先住民が、16世紀にスペインに征服されるまで、旧大陸とはまったく異なる高度な文明社会を築いていたのです。ある意味、わたしたちと共通の先祖を持つ文明です。いったいどんな世界だったのか、興味がわきませんか?

 

 メソアメリカで展開された多彩な文明のルーツともいわれるのは、紀元前1500年頃、メキシコ湾岸部に興ったオルメカ文明です。広大な自然環境のなかで人々の暮らしを支えたのは、トウモロコシをはじめとする栽培植物と野生の動植物でした。やがて、天体観測に基づく正確な暦が生み出され、豊穣と災害をもたらす神々への祈りや畏れからさまざまな儀礼が発達し、生贄(いけにえ)が捧げられたとのこと。

 

 展覧会場を歩いてみると、オルメカ文明と同じく、自然との共存は古代メキシコにとって大切なキーワードだったと感じられます。

 

 また、展覧会のポスターに掲げられた「祈り、畏れ、捧げた。」のキャッチコピーは、生贄を意味しているに違いありません。展示説明を読むと、人間も動物も、おびただしい数の生贄が、副葬品とともに捧げられていたことがわかります。

 

 生贄が生きたまま心臓を取り出して、その新鮮な血を太陽の神に捧げないと、太陽が昇ってこなくなると信じられていたとも、生贄の数は為政者の力を示したとも言われます。「チャクモール像」という横たわった人の像は、見た目ちょっとかわいいのですが、人身供犠の犠牲者から取り出した心臓を置くこともあったようで、それを知ってからはどんな感想をもったらよいか、なかなか「深い」と見入ってしまいました。

 

 それにしても、この展覧会の展示物は、現代のメキシコに通じるような、独特な色や形、ユーモラスな表情など、どれもとても魅力的です。

 

 とくに、「レイナ・ロハ」は必見。紀元前1200年頃から16世紀までメソアメリカ一帯で栄えたマヤ文明は、1世紀頃には王朝が成立します。こちらは在位615年~683年の支配者であるパカル王の妃のもの。石棺と遺体が発見されたのは1994年のことでした。遺体が辰砂という水銀朱で覆われていたことから、「レイナ・ロハ(赤の女王)」と呼ばれています。

 

 埋葬時に被葬者の顔面にかぶせて副葬された可能性が高いと言われるマスクや首飾り、頭飾りなど、当時の生活を想像できる貴重な展示。でも、私の一番のお気に入りは、テオティワカン最大のモニュメントである「太陽のピラミッド」正面広場から出土した謎の石彫「死のディスク石彫」です。中央に舌を出した頭蓋骨、周辺に放射状に放つ光のような装飾ディスクが彫り込まれています。

 

 先住民の死生観では、西に沈んだ太陽は水の地下界をさまよい、夜明けとともに東から再生すると信じられていたそうです。太陽のピラミッドは言葉どおり、太陽を象徴し、この石彫は沈んだ夜の太陽を表すそうです。

 

 現代のメキシコに行くと、ドクロはどこでも大人気のモチーフですが、古典期のテオティワカンでは頭蓋骨のモチーフは稀だったとか。そんな人気の変遷も想像しながら、古代メキシコに思いをはせました。

 

 涼しい会場で、ひとつひとつゆっくり見ていけば、あちこちに発見がありそうです。

横井弘海

東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)

( SmartFLASH )

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