トランペットを愛した男は、薬物により壮絶な最期を迎えた。8月16日、イギリス検察庁は、麻薬密売組織のメンバーであるエメカ・ダウダウォダ容疑者(19)に、懲役31年を言い渡した。
共犯者も同じく有罪となり、3人で合計90年の懲役刑となった。これほど重い判決が言い渡されたのは、クスリの密売だけでなく、2名の命を残忍な手法で奪ったからだ。
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最初に犠牲となったのは、ウィリアム・アルガー氏(当時53)。アルガー氏は、地元では有名なジャズ奏者だったが、重度の薬物依存で、ダウダウォダ容疑者からクスリを買う関係だった。
カネが底を尽いてクスリ代を払えなくなったアルガー氏は、2019年12月に殺害された。報道によると、当時のアルガー氏は自宅を「取引所」として貸し出すなど、メンバーたちと服従関係にあったという。
殺された理由は単純だ。アルガー氏が飼っていた猫を虐待され、ちょっとしたクレームをつけたことが、怒りを買ったのだ。
自宅の浴室で20回ほど刺され、そのまま体をバラバラに切断された。手足は近所の自然保護区に遺棄され、頭部と胴体はリビングルームに放置された。共犯者のなかには、肉片に酸をかけ、溶かそうとした者もいた。
クリスマスに帰省しなかったアルガー氏を不審に思った93歳の母親が、警察と一緒に自宅へ行くと、リビングは血の海で、遺体は腐敗していたという。
ダウダウォダ容疑者らは、その後、商売敵だった密売人を殺害。このときも、被害者の胸部をナイフで滅多刺しにしている。監視カメラの映像から容疑者が捜査線に浮上し、逮捕に至った。
ニュースサイトのコメント欄には
《こんな奴らに責任能力はあるのか?》
《こいつらは、我々の血税で飯を食いながら刑務所で過ごしていくのか。死刑が妥当だ》
《彼らには悪魔が宿っている》
などの声が寄せられた。
法廷で裁判長は「アルガーさんは、仲間思いの優しい人柄だったため、猫をかばったのです。お金がなくなったことにつけ込み、徹底的に利用したあげく、死にまで追い込みました」と、その凶行を強く非難した。
猫を愛する心優しきトランペッターの残酷な最期だった。
写真:ロンドン警視庁提供