「感染拡大を最優先にしながら考えていきたい」
8月6日、「広島原爆の日」の平和記念式典で「広島市」を「ひろまし」、「原爆」を「げんぱつ」などと読み間違えた菅義偉首相(72)は、17日の記者会見でも冒頭のように「防止」を読み飛ばし、真逆の意志を表明してしまった。
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「菅首相は感染が収まらないことに焦っています。もともと首相は、9月下旬の国連総会で主要国に比べて日本は感染が抑制できたことをアピールし、解散総選挙に臨むつもりでした。その構想が見事に崩れたわけです」(「インサイドライン」編集長・歳川隆雄氏)
東京都など大都市圏で、新型コロナは “感染爆発” の様相だ。菅首相は17日に、緊急事態宣言の対象拡大と9月12日までの延長を決定した。報道各社の世論調査で続々と支持率は20%台を記録し、国民からの風当たりが “暴風” に切り替わった菅政権。さらに菅首相を悩ますのが、加藤勝信官房長官(65)だという。
「加藤さんが官邸にほとんどいないんです。官邸には在席表代わりの名前表示板があって、加藤さんは “不在” の時間が閣僚でいちばん長い。官邸内でも働きぶりの評判は悪いし、官房長官時代には安倍晋三前首相の泥をさんざん被ってきた菅さんは『加藤は逃げてばかりで役に立たん』と不満を溜めています」(政治部デスク)
10月21日に衆議院議員の任期満了が迫り、その前には9月29日の投開票が確実視される「自民党総裁選」が待ち構えている。土壇場の2カ月、支持率低迷と自身の不満を解消する「起死回生の一手を首相は考えている」と、ジャーナリストの須田慎一郎氏は話す。
「総裁選では菅首相の勝利は安泰です。“出馬宣言” の高市早苗前総務相、意欲を見せる下村博文政調会長、派閥で背中を押される岸田文雄元外相など、対立候補の名前は挙がっていますが、ほとんど争点がないんですよ。
最大の争点はコロナ対策ですが、各候補は首相との明確な違いは出せないでしょう。首相が支持率回復のために考えているのは、総裁選後の内閣改造なんです」
来年度予算の概算要求が始まる9月以降の内閣改造は異例。支持率回復のための “やけっぱち” ともいえる策だ。
「なので、大臣を動かすのはなるべく最小限にしたい。そこで菅首相が目玉に考えているのが、河野太郎ワクチン担当相を官房長官に据える人事。“不在の加藤” ではなく、ワクチン対応で発信力を見せる河野氏で流れを変えて、総選挙に向かいたいんです」(須田氏)
しかし、全国各地でのワクチン供給不足により、急激に批判を浴び始めた河野氏。焦りの菅首相には、その “国民評価” すら見えていないのか……。
さらに、「9月もコロナ対策に追われれば、総裁選後にさらなる支持率低下も起こりうる」(前出・政治部デスク)という状況に、自民党内部もようやく危機感を覚えたようだ。
「これまで政権の陰で足の引っ張り合いをおこなってきた “安倍・麻生・二階” といった大物たちも『総選挙に負けたい』とは思っていない。菅首相がさらなる補強と考えるのが、総裁選出馬予定の “ポスト菅” たちを入閣させ、選挙の顔を増やすこと。『窮地になれば党も動く』と目論む “挙党一致” 内閣なんですよ」(須田氏)
“落ち目のヒーロー” が目玉では心許ない。
(週刊FLASH 2021年9月7日号)