15日、来日した韓国の国会議員団が安倍首相批判のためにやってくるとされた靖国神社。その入口には早朝から殺気だった右翼団体メンバーらが陣取っていた。韓国からの取材陣との間には、接触を阻止する機動隊員が立ちはだかる。結局、議員団は神社に近づけず、500メートルほど離れた路上で「軍国主義を復活させようとしている安倍首相の愚かさを強く警告する」と声明を読み上げた。
光復節(日本からの独立を祝う祝日)のある8月は韓国では反日シーズンだが、現役の議員が靖国で抗議をおこなうとは尋常ではない。なぜ、韓国はここまで行動をエスカレートさせたのか。ソウル在住でマスコミ関係の仕事に就く韓国人男性(44)は、次のように話す。
「韓国人にとっての靖国は、最近のサッカーで話題になった旭日旗と同じく日本の帝国主義の象徴、シンボルだよね。A級戦犯が祀られている靖国を参拝するということは、いかなる理由があろうと、軍国主義を全面否定していないという意思の表われだし、過去を反省していないということでしょ」
しかし冷静に歴史の流れを振り返ってみると、韓国の靖国批判は、ご都合主義としかいえない。
「韓国が国家として靖国参拝を批判しはじめたのは、中国が中曽根政権時代に公式参拝を批判して以降のことです。中国の後追いですね。韓国はなんにしても中国のマネをするのです」
こう語るのは元時事通信社ソウル特派員で『悪韓論』の著者である室谷克実氏だ。当時、親日派といわれた胡耀邦・中国共産党総書記を追い落とす権力闘争の手段として、中国は靖国問題を取り上げた。結果的に中曽根氏は参拝を取りやめる。中国は靖国が外交カードとして使えることを学習。そして、韓国はそれに便乗したのだ。
そもそも靖国神社に祀られているのは戦没者であり、当時は日本の植民地で日本と戦争をしていない韓国とは関係がない。
前出のソウル在住韓国人にこの点を問うと、「国民の多くは『韓国が日本と戦争していない』とは思っていません。日本に実効支配され正規軍はなかったとしても、国内では独立運動があった」と気色ばむが、論理的に破綻していないか。
かつて、サッカー日韓戦で、猿のマネをして日本人を侮辱した韓国人選手がいたが、「韓国の靖国批判」こそ、「中国の猿マネ」なのである。
一方、在韓30年の産経新聞ソウル駐在特別記者兼論説委員・黒田勝弘氏は、今回の国会議員団の行動をこう断ずる。
「端的に言うと、野党政治家の国内向け政治パフォーマンスです。日本国内でやっているけど、それが韓国内に伝わることを期待して、韓国向けにやっているわけですね。自分がいかに愛国者であり、民族主義者であるかということを政治家として宣伝したい。日本相手だと大きな拍手喝采を浴びるだろうという計算があるのです」
現在、韓国では情報機関をめぐる議論で与野党が激しい対立状況にあり、野党が国会審議をボイコット。前出の室谷氏は次のように解説する。
「国家情報院が選挙に介入し、朴槿惠大統領が僅差の勝利を収めたことから、野党は当選無効を言いたてています。今回の靖国パフォーマンスには、朴大統領への揺さぶりがある。野党は頑張っているが、朴大統領は、反日を何もやっていないという印象を韓国国民に与えようという意図なのです」
(週刊FLASH 2013年9月3日号)