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「不審死」が相次ぐロシアの新興財閥幹部たち “暗殺”の可能性をジャーナリストに聞いた
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.09.08 20:35 最終更新日:2022.09.08 20:36
ロイター通信によると、ロシア第2位の石油会社・ルクオイルのラビル・マガノフ会長が9月1日、入院先の病院で窓から転落死した。ロシア国内では「自殺」と報じられている。マガノフ氏は心臓発作で入院し、抗うつ剤も飲んでいたという。
同社は、5月にも役員のアレクサンデル・スボティン氏がモスクワ近郊で遺体で見つかっている。代替医療のために、シャーマン(宗教的職能者)を訪問した後だったという。そのほか、ロシアでは1月に世界最大級の天然ガス企業・ガスプロムの幹部が自殺し、その後、4月までに同社の関係者3人が自殺するなど、2022年に入って亡くなったオリガルヒ(新興財閥の富豪)や実業家は8人に上る、とCNNは報じている。
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相次ぐ大物の死に対し、SNSでは別の原因を疑う声が上がっている。
《ルクオイル会長が病院の窓から転落死 → プーチンの命令でFSBに落とされた?》
《ウクライナ侵攻後に偶然の不幸な事故で亡くなったロシアエネルギー企業幹部はこれで4人目》
《1人を除いてすべてが、プーチンがウクライナに侵攻した2月24日以降の出来事だ。これは偶然ではない》
「他殺」の可能性はあるのだろうか? 世界の情報機関の動きについて詳しい、ジャーナリストの黒井文太郎氏に聞いた。
「現在、ロシア国内はかなり混乱しています。石油業界は大変動の時期で、国の将来を悲観するオリガルヒが、会社の資産を海外へ持ち逃げするケースが相次いでおり、内部トラブルが多発しているという報告があります。
要は、お金の分捕り合いのなかで、ライバルにマフィアを雇って殺される、というパターンです。ロシアは、そうしたお金をめぐる殺人事件が非常に多い国なんですね。これだけ企業関係者の死が続いているので、自殺よりは他殺の可能性のほうが圧倒的に高いと思います」
またルクオイルは、ロシアのウクライナ侵攻に批判的立場をとっていた。政府が会長の死に関係しているのだろうか?
「政府機関による犯行かどうかは、ちょっと疑問です。FSB(ロシア連邦保安庁)というところに、暗殺を企てるセクションがあり、これまでプーチン政権に対して批判的な人たちを暗殺したとされてきました。おもに、ジャーナリストや政治活動家です。オリガルヒのなかにも殺されたといわれる人物がいますが、それはプーチン政権にパージされて海外に逃げ、自ら反プーチンの活動をしたり、活動家に資金提供したりなど、明らかにプーチンに歯向かっているケースです。今回、亡くなった面々を見る限り、内部トラブルで殺された可能性が高いと思います」
エネルギー系の企業は、海外への輸出に依存しているため、欧米の経済封鎖を嫌い、ウクライナ侵攻を続けるプーチンに反対するところが多いと考えられるが……。
「いえ、むしろそれらの経営者クラスは、プーチンと癒着しています。プーチンのおかげで、企業のトップに就いていられるからです。資源事業にはもともと国が絡んでいるし、彼らは才覚だけでのし上がったわけではない。プーチンに逆らうと自身の進退に関わります。だから、国内でトップでいる間は、政治的にプーチンに反対するということは避けるのです。
ルクオイルの会長の場合は、政府からどれくらい危険視されていたか次第です。政府に害を与えると見なされていたのであれば、国の機関に殺されたのかもしれません」
これまでにも、ロシアの政府機関による暗殺、暗殺未遂の可能性を指摘されてきた事件は多い。反対派を暴力により排除してきたとすれば、真の民主化は遠のくばかりだ。
( SmartFLASH )