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成城崩落事故に人災告発! ショベルカー2台を埋めて「自然崩落に」の衝撃指示…工事許可を出した世田谷区は呆れる回答

社会・政治 投稿日:2023.03.29 06:00FLASH編集部

成城崩落事故に人災告発! ショベルカー2台を埋めて「自然崩落に」の衝撃指示…工事許可を出した世田谷区は呆れる回答

集合住宅の外壁を残し、擁壁代わりにしていた現場。土木業者が指摘していたとおりに、この壁が次々と崩落した

 

「轟音とともに壁が崩れたんです。すぐに救急車や消防車が何台も来て騒然としましたが、幸い怪我人はいませんでした。あんなに深く掘ったら壁が倒れるんじゃないかと心配していましたが……」

 

 東京・世田谷区成城の高級住宅街で、2月13日に発生した建設現場の崩落事故。付近の住民は冒頭のとおり、事故を予期していた。

 

 現場は世田谷通りに面した傾斜地。もともとあった集合住宅を外壁だけを残して解体し、新たにマンションを建設する途中で起こった事故だった。崖の土砂崩れを防ぐための擁壁(ようへき)代わりに残されていた旧建物の外壁が滑り落ち、建設予定地内に崩れた。

 

 

 建設予定のマンションは「コーポラティブハウス」と呼ばれ、入居希望者によって結成された建設組合が、土地取得から設計までをおこない、施工業者に発注したものだ。

 

「事故現場のマンションは、コーポラティブハウスで多数の実績を誇る工務店が仲介し、建てられる予定です。その工務店顧問のF氏が、今回の建設組合の代理人になり、工事手法にも指示を出していました」(建設関係者)

 

 しかし、この建設工事で建設組合から地下部分の掘削作業を受注していた土木業者は「この事故は明らかに人災です」と、怒りをこめて話す。

 

「地下2階・地上5階のマンションを建てるため、私たちは土地を6メートルほど掘削する作業を請け負いました。じつは作業開始時から、『古い外壁はいつ崩れてもおかしくない状態だから対処してほしい』と、F氏に訴えていたんです。

 

 外壁は基礎部分が削られており、本来、壁の中に必要な杭も外れていた。支えるためのH鋼(えいちこう)という柱が何本か打たれていましたが、十分ではありません。

 

 このまま作業をするのは危険だ、とひと目でわかりましたよ。でも、F氏は『2月中に地下を掘り終えないと銀行の融資が下りない。作業を急いでほしい』と、言うばかりだったんです」

 

 その結果、崖とともに外壁が崩れ落ち、油圧ショベル2台などの機材が崩落に巻きこまれて、下敷きになった。

 

「事故現場を復旧するため、当然、油圧ショベルや土砂を現場から撤去しないといけませんが、あろうことかF氏が施工業者に『自然崩落ということにしよう。全部土砂で埋めてしまえ。早く整地しないと、工期が遅れて融資がストップする』と言ったというのです」(前出・土木業者)

 

 崩落事故から9日後、土木業者らが阻止しようとするなか、ダンプカー25台が現場に現われ、油圧ショベルを地下から撤去しないままで埋め戻し作業を強行した。現場は混乱し、警察官も出動した。

 

 今回の崩落事故について、F氏に話を聞くと「施工者でも設計者でもないので答えられない」と言うのみ。

 

 また、施工業者はこれまでに住民説明会を2回開き、崩落事故の原因説明をおこなっているが、本誌取材に回答はなかった。

 

 地下に埋めたショベルカーを掘り返さなければ、当初の建設計画は進められないが、いまだ土木業者には、今後の予定が伝えられていない。

 

 本来ならマンション建設工事は行政の許認可事業。現場がある世田谷区に責任はないのか。一級建築士の資格を持つ建築エコノミストの森山高至氏は、こう指摘する。

 

「現在、行政による建築確認はほとんどが民間委託されていますが、あくまで委託しているだけ。区の責任がないわけではありません。また、建築工事の審査も民間の機関に届け出る形になっていますが、本来は区がやるべきことです」

 

 だが、許可を出した世田谷区からは呆れる回答が……。

 

「建設工事中の安全確認については、民間の指定検査機関が確認し、区の者が現場に行く必要はありません。区が届け出を受けつけるのは、審査を通過した完成済みの建物だけです。

 

 油圧ショベルを埋めたまま、整地したことは把握していますが、我々が何かを言う権限はありませんよ」(建築審査課)

 

 と、建設工事については “我関せず” というのだ。

 

 混乱は埋め戻し騒動だけではない。崩落現場の崖の上にはマンションや住宅が建ち、現在も6世帯が避難を余儀なくされている。マンションの住人はこう怒りを表わした。

 

「世田谷区が避難指示を出したので、やむなく避難しました。最初は公民館に避難しろと。その後、築75年の民家を提示され『ここならタダですが、新築の一軒家に避難したいなら敷金、礼金を払ってほしい』というのです。納得がいかないので、今はウイークリーマンションを自分で借りて避難しています」

 

 世田谷区は当初、土砂崩れを災害と判断したため、住民に避難を指示したという。

 

「しかし、崩落原因が事故とわかった。施工業者が崖崩れを防ぐ山留(やまどめ)の作業をおこない、安全確認の報告を受けたら、避難指示を解除するつもりです」(前出・建築審査課)

 

 と、またも他人事のような物言い。

 

 ショベルカーを埋められた土木業者は、こう吐露する。

 

「僕らも手抜き工事に加担したと言われるかもしれません。でも、施主の強い指示に従わざるを得なかった。施工業者も世田谷区といった行政もこんな杜撰(ずさん)な仕事を放置していたら、また同じような崩落事故が起こると思います」

 

 事故原因まで埋葬してはいけない。

( 週刊FLASH 2023年4月11日号 )

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