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奨学金貸付残高9.5兆円 7割が利子のついた借金、返済に追われ少子化につながる悪循環で「名称を『学生ローン』に」論争

社会・政治 投稿日:2023.03.30 20:37FLASH編集部

奨学金貸付残高9.5兆円 7割が利子のついた借金、返済に追われ少子化につながる悪循環で「名称を『学生ローン』に」論争

少子化対策は岸田政権の最大の課題だが…

 

 岸田文雄首相は3月29日、少子化対策についての読売新聞のインタビューに応じ、教育費の負担軽減について、卒業後、収入に応じて返済する「出世払い方式」の奨学金制度の導入に向けて取り組む考えを示した。また、返済不要の「給付型奨学金」の対象について、2024年度から、多子世帯や理工農学部系の学生には、世帯年収380万~600万円の中間層まで拡大することを表明した。3月30日、読売新聞が報じた。

 

 

 だが、SNSでは「出世払い方式」の奨学金制度や、返済不要の「給付型奨学金」の対象を拡大することについて、こんな批判の声が上がっている。

 

《給付型奨学金って変な日本語、そもそも奨学金は返済不要な物で、返済しなければいけない物は学生ローン》

 

《奨学金は相変わらず基本返済させるんだw ほんと学生ローンて正式名称にして欲しい》

 

《奨学金と言う名の学生ローンを借りて大学に行って返済が終わるのは40歳近く、自然と少子化になるよ》

 

 日本は、奨学金といっても貸与型がほとんど。そのため「名称を『学生ローン』にしろ」という声は多い。

 

 3月28日の参院予算委員会では。共産党の田村智子参院議員がこの問題を取り上げた。

 

 田村氏は、労働者福祉中央協議会がおこなった奨学金返済の生活設計への影響調査で、結婚への影響が37.5%、出産と子育てへの影響が3割超となっていることを指摘。日本学生支援機構の貸与型奨学金の総貸付残高が、2021年度末で9.5兆円にのぼることを明らかにしたうえで、こう岸田首相に迫った。

 

「学生を含めてだが、おもに20代、30代の若者が総額9.5兆円もの借金を、この日本では負っている。これは2006年度末と比べると、2倍の規模になっている」

 

「そのうちの7割は、利子までついた借金。これは異常じゃないか、支援策が必要ではないか」

 

 岸田首相が「これまでさまざまな対策を用意し、令和6年度(2024年)から、さらなる対策を用意する」と応じると、田村氏はこうたたみかけた。

 

「政府の策だと、返済は猶予とか、減額はするが、後ろに先延ばしになっていくだけ。いつまでたっても借金総額は、本人にとっては減っていかない。アメリカでは、バイデン大統領が連邦政府の学生ローン返済をひとり最大1万ドル(約130万円)まで免除する、ということを昨年、発表した。日本でも、たとえば全員に一気に返済総額の半額を免除する。これぐらいの対策をするべきではないか」

 

 対して、岸田首相はこう答えた。

 

「昨年8月、バイデン大統領が年収12万5000ドル(約1625万円)未満の大学卒業者に対して、学生ローンを1万ドル減免すると発表したことは、報道等により承知している」

 

「単純に比較できるものではないと考えている。日本では、年間の平均授業料が国立で54万円、私立で93万円。米国では、州立で300万円、私立で500万円。そして日本では、低所得世帯に無利子で貸与をおこなっている。有利子でも0.37%。米国は原則すべて有利子で、4.99%。結果として、日本はひとりあたり平均154万円だが、米国はひとり当たり平均521万円となっている。日本として、負担軽減に向けて独自の政策を進めていくことが重要であると考えている」

 

 日本学生支援機構によると、2017年度に給付型奨学金制度が創設されて以降、2021年度まで5年間の支給実績は、累計で2900億円。貸与型奨学金の残高9.5兆円に比べると、あまりに少ない。日本の貸与型奨学金は、米国の学生ローンと比べ、金利は破格的に安いが、はたして「奨学金」と呼ぶべきものなのか。議論は続きそうだ。

( SmartFLASH )

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