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鳥インフルで卵が高騰!ニワトリ430万羽が殺処分された茨城県に運搬・焼却コストを聞いてみた

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.04.18 14:52 最終更新日:2023.04.18 14:54

鳥インフルで卵が高騰!ニワトリ430万羽が殺処分された茨城県に運搬・焼却コストを聞いてみた

2023年1月、茨城県城里町の養鶏場で鶏の殺処分に臨む県職員ら(写真・時事通信)

 

「もう、踏んだり蹴ったり……ギブアップだよ、まったく……」

 

 茨城県内の養鶏業者が、こう悲鳴をあげる。ロシアによるウクライナ侵攻の影響をもろに受けて、飼料穀物の高騰が止まらないところにもってきて、高病原性鳥インフルエンザに感染した大量のニワトリが、殺処分に追い込まれ、事業継続が危機に陥っているからだ。

 

 鳥インフルエンザの影響から、鶏卵が品薄をきたし、それが価格に跳ね返ってどんどん値上がり。いまや卵は消費者に届きにくくなっている。さらに、親子丼や月見うどん、オムライスなどがメニューから消えた飲食店も現われるほどだ。

 

 

 とりわけ、茨城県が受けた鳥インフルエンザによる打撃は甚大だ。農林水産省の統計によると、茨城県における2022年の鶏卵採算量は、約21万6200トン。全国シェアの4.44%を占めている。

 

 産出額も約452億円に達し、全国トップを誇っている。ところが、茨城県城里町、八千代町、坂東市など各地で鳥インフルエンザが発生し、ざっと430万羽ものニワトリが殺処分され、壊滅状態となっているのだ。

 

 坂東市では2月11日、115万羽の採卵鶏が鳥インフルエンザに感染し、殺処分された。あまりの処分数の多さに、県当局は陸上自衛隊に出動を要請するほどだった。

 

 卵不足や値上がりで、人々の食生活をおびやかしている鳥インフルエンザだが、発生原因はいまだ特定されていないという。茨城県農林水産部畜産課課長補佐の大谷芳子氏は、こう推測する。

 

「一般的には、ロシアのシベリア地方などから飛来した、鳥インフルエンザウイルスを持った渡り鳥などが発生源といわれ、そのウイルスが野鳥や小動物に付着し、それらが鶏舎に侵入してニワトリに感染する、と考えられています。

 

 従来は、晩秋から冬にかけてが発生シーズンでしたが、近年は10月ごろから翌年5月ごろまで続く傾向にあり、時期が長期化したぶん、リスクも高まっています」

 

 鳥インフルエンザに感染したニワトリにはどのような症状があらわれるのか。また、外見などでわかるものなのか。

 

「感染と同時に死んでしまうニワトリもいますが、鳥インフルエンザに感染すると、鶏冠(とさか)や足にチアノーゼが現れ、赤紫色に変色するので、それが見つかれば、感染したことがわかります」(大谷課長補佐)

 

 ただ、濃密な接触がない限り、通常では鳥インフルエンザが人間に感染することはないといわれ、過度に恐れる必要はない。また、鳥インフルエンザが発生した養鶏場から出荷された鶏卵や肉を食べても、ヒトに感染したとの事例はなく、食品衛生の観点からも回収する必要はないと、農水省発表の「国民の皆様へ(鳥インフルエンザについて)」では説明している。

 

 気になるのは、鳥インフルエンザに感染したニワトリの、殺処分後の死骸の行方だ。

 

「処分には、土の中に埋めるのと焼却の、ふたつの方法があります。土の中に埋める場合は、鶏舎の近くに深さ4mほどの穴を掘り、ブルーシートを敷いて漏水防止をしたうえで、フレコンパック(化学繊維製の丈夫な袋)にニワトリを入れた後、土で埋めます。

 

 鶏舎の近くに穴を掘るスペースがなかったり、埋却するのに数が多すぎたりする場合は、密封容器に入れて焼却処分されます。その際は、ニワトリを焼却場まで運搬する業者と、焼却をおこなう業者をそれぞれ委託しています」(同)

 

 ちなみに焼却処分に関しては、運搬業者と焼却業者に対して随意契約で委託されているという。

 

「鳥インフルエンザに感染したニワトリの殺処分に要する薬剤、資機材、人員、運搬などの経費は、家畜伝染病予防法に基づき、国と県が全額負担し、農場経営者の負担はありません」(同)

 

 運搬は、どんな業者がいくらで受注しているのか。

 

 鳥インフルエンザに感染したニワトリの殺処分に使用した防護服、長靴、手袋などの運搬業務は、茨城県産業資源循環協会が委託されている。友部哲哉事務局次長がこう説明する。

 

「随意契約で業務を委託されているのは、緊急性を要し、入札をおこなう時間的猶予がないからです。また、当協会は発生現場に人員を派遣して、鳥インフルエンザに感染したニワトリを運搬車に積み込み、焼却場まで運んで積み荷を降ろすまでの業務を県から委託され、それを運搬業者に再委託しています。

 

 ただし、どの運搬業者にいくらで委託しているか、個別の案件は具体的には申し上げられません」

 

 同協会発行の、産業廃棄物に関する収集運搬価格によると、鳥インフルエンザに感染したニワトリ4トンをコンテナ車で運搬した場合、1台1回あたり、片道の距離25kmで平均2万4500円。片道75kmで平均4万3700円となっている。

 

 では、焼却処分場の価格はどうなのか。こちらも、処分場側に対して、県は随意契約で委託している。

 

「鳥インフルエンザに感染したニワトリの焼却処分は、県内13カ所の処分場に委託しています。単価は処分場によって違い、1kgあたりもっとも安くて33円から、高いと138円となっています。ただし、全体の契約金額やどの焼却場に委託しているかを、具体的に申し上げるのは差し控えます」(大谷課長補佐)

 

 近年、毎年のように発生している鳥インフルエンザ。消費者は、卵や鶏肉の値上がりには敏感だが、殺処分に関してさまざまな業者が関与している事実までご存じだろうか。

 

取材&文・岡村青

( SmartFLASH )

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