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「検察はもみ消し、口封じも当たり前。安倍派5人衆の立件見送りも “裏取引” の結果では?」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第32回】
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2024.02.07 06:00 最終更新日:2024.02.07 06:00
大山鳴動して、起訴された議員は3人。最大の裏金を受け取った「安倍派5人衆」をはじめ幹部の立件は見送られ、捜査打ち切りとなった。
この結果は予想どおりやったね。検察は、こういう着地点を考えていたと思う。
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今回、不思議やったのは、期間限定の捜査だったこと。当初から短期決戦、すなわち臨時国会が終わってから捜査を始め、不逮捕特権で議員を逮捕できなくなる次の通常国会までに捜査を終える必要があると報じられていた。
だが、これは嘘の情報。国会が始まっても捜査は続けられるし、逮捕許諾請求を出せば逮捕もできる。実際、過去には十数名の国会議員が会期中に逮捕されている。にもかかわらず、「国会が始まるまで」という情報を流し続けてきたのは、検察は初めからやる気がなかった証拠や。そんな短い期間で、満足な捜査ができるはずがない。
さらに、検察はやる気がないどころか、初めからバーター取引があったんやないかと私は疑っている。
検察は、人事に口出しされることを極端に嫌う組織。安倍政権は、黒川弘務検事長の定年延長を閣議決定し、検察には当時の恨みがある。
だから、政治家に検察の人事に関与させないかわりに、検察は大物国会議員の立件は見送る。早い段階で、そういう阿吽の呼吸での “手打ち” があったんやないか。
ところが、シナリオどおりに事は進まなかった。それは、年末年始あたりから急に「安倍派の幹部も立件か」とか、「安倍元総理は裏金をやめろと言ったが、幹部が継続した」という報道が出るようになったことからわかる。その裏には、検察の上層部と捜査現場のそれぞれの思惑があったと、私はみている。
焦点である国会議員と会計責任者の共謀があったかどうかについて、現場は捜査を進めるうちに立証可能と思ったんやないか。全国から優秀な検事が大勢集まって捜査するうちに、イケるという判断になってきたんやと思う。
だいたい、「客観的資料が乏しく、共謀の立証が困難」なんて嘘。状況証拠の積み重ねで十分のはずや。
ともかく、検察の現場は立件できそうだとマスコミに漏らした。それが「安倍派幹部も立件へ」という報道になったんやないか。ジャーナリストの田﨑史郎さんや元東京地検特捜部の若狭勝さんも、テレビで「立件あり」と言っていたように、本当に立件できる状況やったんやと思う。
ところが、年が明けてすぐに「立件見送り」と報道されたのは、現場主導で捜査が進むのを恐れた検察の上層部が阻止しようと、見送りの方針をリークしたからやないか。
さらにびっくりしたのは、不起訴となった幹部がみんな「嫌疑なし」だったこと。普通は「嫌疑不十分」となるはず。「嫌疑なし」では、検察審査会に上がってきたときに、強制起訴に持っていくのが難しくなる。検察の上層部はそこまで読んで、「嫌疑なし」としたんやと思う。
結局、当初のストーリーどおりの結果になり、それがまさに検察の体質を表わしている。検察は究極の公務員。私も多くの検察官を知っているが、正義感よりも組織防衛と保身と出世が、むしろ彼らの関心事だったりする。正義の仮面を被っているが、その下はせこい役人かもしれん。
私が最初に検察不信になったのは、司法修習生のころ。当時の研修担当の裁判官から、「裁判官や検察官にも裏金がある」と、直接聞いたことがあるから。
たとえばカラ出張。実際は出張していないがしたことにして、そのお金を総務の金庫にプールし、懇親会の会費や職員への餞別に充てたりしているとの話だった。それを聞いて、「検察や裁判官が裏でそんなことをしているのか」と仰天したのを覚えている。
そして2002年4月の三井環事件では、検察の裏金の存在が明らかになった。
大阪高検の三井環公安部長が、検察が裏金を作っていて、自分もその一端を担っていたことをテレビ番組で告発しようとしていたら、収録の3時間前に、いきなり逮捕された。容疑は、虚偽の証書申請など些末なもの。しかも簡単に保釈せず、裁判でも実刑判決が出た。
三井氏は検察による口封じで冤罪だと主張し、実際に後の高裁の判決で、検察の裏金があったと一部認定されている。検察と裁判所が組織を挙げて、裏金疑惑のもみ消しをしたと受け取られても仕方がない。無茶苦茶な話や。
同年10月の石井紘基刺殺事件も、私にとっては忘れられない。石井さんはかつて私が秘書として仕えていた恩師。
石井さんは事件当時、民主党の衆院議員。政府の無駄遣いや不正を追及し、とくに特別会計について詳細な調査をしていた。旧統一教会やオウム真理教など、カルト宗教問題にも取り組んでいた。
そんな石井さんが、右翼の男に刺殺された。「家賃の工面を断わられたため、仕返しした」と実行犯が供述したことになっているが、それは検察の作文だといわれている。
実際、後になって、服役中の実行犯は、面会に訪れたテレビディレクターに対し、「頼まれて殺した」と証言した。カネがらみの個人的な事件として処理した検察の対応が、不思議でならない。
また、検察が政治家の捜査に甘いといわれるが、例外的に “終わった政治家” は叩く。金丸事件の金丸信氏も、政治家人生の晩年に狙われ、脱税事件で失脚した。陸山会事件の小沢一郎さんの場合は、官僚と対立して虎の尾を踏んだから検察が動いたという説がある。 “堕ちた犬” を叩く。それが検察や。
最近、司法修習生時代の同期や弁護士仲間から、「泉、検察批判ばかりしていたら、特捜部に逮捕されるで」と言われたりする。
たしかに、今までの検察のやり方を見ると冗談ではすまんかもしれん。怖い国や。