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元榮太一郎「僕の勝ち方」(2)起業で見た天国と地獄

社会・政治 投稿日:2020.03.06 20:00FLASH編集部

元榮太一郎「僕の勝ち方」(2)起業で見た天国と地獄

 

 国会議員の所得ランキングで、ここ2年連続で2位にランクインしているのが、参議院議員の元榮太一郎氏(44、自民党)だ。

 

 弁護士資格をもつ元榮氏は、代表弁護士を務める「弁護士法人 法律事務所オーセンス(以下、オーセンス)」と、法律で困っているユーザーと弁護士をつなぐための法律相談サイト「弁護士ドットコム」をおもな事業とする、「弁護士ドットコム株式会社(以下、弁コム)」の創業経営者でもある。

 

 

「所得の報道や経歴が理由なのか、“生まれついての貴族” みたいに勘違いしている人もいるんですが……まったく違います(笑)。むしろ、雑草魂で生きてきたタイプなんです。

 

 しかも、ここにくるまでの人生はピンチの連続で、思い返すたびに “ヒヤリ・ハット” ですよ。『一歩間違えばどうなっていたかわからないな』って」

 

 元榮氏の原風景は、最寄りの辻堂駅からバスで20分かかる「湘南ライフタウン(神奈川県)」にある羽根沢団地という “マンモス団地” だ。

 

「父は慶應の大学院を卒業し、大手電機メーカーで半導体の技術者を務める、いわゆる “エリートサラリーマン” でした。でも、僕が着る服は従兄弟のおさがりばかりですし、家族で外食をしたのも数えるほど。大流行していたファミコンも買ってもらえず、いまでも僕はゲーム下手がコンプレックスです(笑)。

 

 親が中小企業の社長で近所の戸建てに住む同級生のほうが、明らかにお金回りがよく、『あれ、なんかおかしいぞ』と感じていて。いま考えれば、3人のきょうだいを大学まで出してくれたのですから、『学資の貯金をしていたんだ』と理解できます。

 

 ただ当時は、少年心ながらぼんやり『いい大学を出ていい会社に入るのと、生活の豊かさはリンクしないのか。将来は自由業に就きたいな』と思っていました」

 

 小中高を公立で過ごした元榮氏は、現役で慶應大学法学部に進学。大学2年の2月に、その後の人生を変える「ピンチ」がおとずれる。

 

「これから始めるバイト代をあてにして、諸費用込み100万円ぐらいで、10年落ちの中古のフォルクスワーゲンをローンで買ったんです。事件は、納車からわずか2週間後に起こりました。

 

 碑文谷(東京・目黒)あたりで縦列駐車していた車を発進させようとしたら、僕の後方不注意で、後ろから走ってきた車と物損事故を起こしてしまったんです。

 

 向こうが少し先に行って止まり、僕も降りて向こうの傷を見たとき、『やってしまった』という思いがこみ上げてきて、膝から崩れ落ちました。

 

 相手は、とある信用金庫の副支店長が乗った社用車で。すぐに相手方の保険会社の示談交渉担当から、『修理代は50万円です。そちらの過失ですから、全額払ってください』と連絡がありました」

 

 ところが、車の購入時に数万円の支出をけちり、任意保険に加入していなかった。両親に金銭的援助を求める家庭ではなかったことと、承認をとらずに車を買ってしまったうしろめたさもあり、「自分でなんとかしよう」と、元榮氏はある行動に出た。

 

「相手は名のある金融機関の役職者です。『直接謝罪に行けば、寛大な判断で許してくれるのでは』という甘い考えで、弁の立つサークルの先輩に付き添ってもらい、信用金庫を訪ねました。

 

 カウンター裏の応接室に通され、入ってきた副支店長さんに謝罪とともに『50万円も払うのは、ご勘弁いただけませんか』とお願いすると、突然べらんめえ口調になって、こうおっしゃったんです。

 

『おまえらみたいなガキが、わざわざこんなところまで来て、ふざけんな。言われたとおりに全額払ってりゃいいんだよ!』

 

 もちろん浅はかな行動に出た僕が悪いんですが、優良企業で立場のある人が、カウンターのすぐ裏でこんな怒鳴り声を発する姿に、大人の2面性を感じ、大きなショックを受けて。打つ手もなくなり、保険会社からの電話にも居留守を使って、現実逃避をしていました」

 

 1カ月後、見かねた母親が、元榮氏に救いの手を差し伸べる。

 

「『弁護士会の法律相談っていうのがあるんだよ』と言われて、すぐに行ってみました。そしたら担当の弁護士さんが、即座にこう教えてくださったんです。

 

『たくさん交通事故があるから、こういうケースは相場が決まっていて、100対0にはなりませんよ。たしかにあなたが悪いんだけど、法的な過失は70%なんです。むこうも、車が出てきたときの前方注意する義務に違反しているから30%悪い。相手の修理代50万円のうち、15万円はむこうの責任だから、払うのは35万円でいいんですよ』

 

 それを聞いて、恐る恐る相手の保険会社に伝えたところ、あっさりその通りに話がまとまって。それまでの人生で最大のピンチを救われて、弁護士の威力を感じました。それで、『こんなに困った人の役に立てる弁護士ってカッコいいな。絶対、弁護士になろう』と決意したんです」

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