打っては、46本塁打、100打点。投げては9勝2敗、156奪三振――。前人未到の記録を打ち立てた大谷翔平の勢いには、日本国民が湧いた。
マスコミも総動員で大谷の活躍を報道した2021年。本誌は、新聞社、通信社らに「我が社が選ぶ大谷のベストショット」を聞いた。
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時事通信・薮下裕之(Ryo Yabushita)カメラマンは9月4日、レンジャーズ戦(スコアは4−1)を振り返り、こう語る。
「レンジャーズ戦で9勝めを飾った翌日。6回に43号3ランを放つと、8回には単打で出塁。三塁側のカメラマンエリアで、私は盗塁を想定して身構えました。
カメラの性能も上がり、たいていはシャッターを切り続ければ撮影できますが、瞬時の交錯プレーでは、確信のないまま『撮れていてくれよ~』という思いでシャッターを切り、すぐにモニターで確認作業に入ります。
このときの二盗もその流れのはずでしたが、滑り込んだ大谷選手が二塁手の向こう側に消え、驚いてシャッターを切る手を止めました。
すると次の瞬間にベースを大きくオーバーランして二塁手の横へ飛び出してきたのです。慌ててシャッターを切ると、仰向けになった大谷選手は、自身の股の間から顔をのぞかせ、その長い脚でベースにタッチを試みましたが届かず、二塁手がゆっくりとタッチ。
直後、大谷選手は大の字になって天を仰いだのですが、私の位置からはその表情を見たくても視野に入らず……。よけいにその表情が気になり、この場面が心に残ったのかもしれません。スタンドのファンのどよめきも、スタートを切ったときの歓声からため息に変わりました」