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琴ノ若 “角界随一のサラブレッド”が告白「引く怖さを大怪我が教えてくれた」

スポーツ 投稿日:2022.09.16 06:00FLASH編集部

琴ノ若 “角界随一のサラブレッド”が告白「引く怖さを大怪我が教えてくれた」

九月場所では盛り返せるか(写真・高橋マナミ)

 

 2022年、琴ノ若(24)の快進撃が止まらない。

 

 一月場所は11勝4敗で、2回めの敢闘賞を受賞。三月場所は2大関を破り、千秋楽まで優勝争いを演じて11勝4敗。2場所連続で敢闘賞を受賞した。五月場所は初日から3日連続で大関を破る大活躍で9勝6敗。

 

 七月場所も初日から連続で正代、御嶽海の2大関を撃破。部屋に新型コロナ感染者が出たため、途中休場となったが、10日目まで7勝3敗で、またもや土俵を沸かせた。

 

 

 父は元関脇・琴ノ若(54)。母方の祖父は、先代・佐渡ヶ嶽親方の第53代横綱・琴櫻だ。この血筋に加え、恵まれた体格。大器が覚醒しつつある。

 

 だが、7年前の入門からここまで、けっして平担な道のりではなかった。埼玉栄高校から、父が師匠を務める佐渡ヶ嶽部屋に入門すると、5場所めで幕下まで番付を上げたが、そこからは伸び悩んだ。

 

「やはり、先代や師匠のことを周囲から言われますからね。そのことをはねのけようと、よけいなことに頭を使ってた部分はあったと思うんです」

 

 だが、思考を変えることで、飛躍のきっかけを掴んだ。

 

「十両に上がる少し前に、自分の生まれというものを、逆にプラスに考えなきゃという気持ちになったんです。それで重圧をあまり感じないようになり、そこから少しずつではありますが、のびのびと相撲を取れるようになったんです。

 

 関取になれば、師匠から『琴ノ若』の名をいただけることになっていたので、その名を自分のものにしなければと、気持ちが変わっていったのは大きかったですね」

 

 入門から約4年で十両に昇進。十両を4場所で通過し、2020年三月場所で新入幕。その後、左膝の怪我もあり十両に陥落するも、ひと場所で幕内復帰。それから2年間、幕内の地位を守っている。

 

 今年の五月場所は、西前頭二枚目の地位で9勝6敗。本来なら三役昇進があってもおかしくはないが、ここは“番付運”に恵まれなかった。そして、東前頭二枚目の七月場所でも、勝ち越しまであと一番というところで、休場を余儀なくされた。三役を目前にしながら、まだ手が届かない。

 

「先場所の休場は、もちろん悔しかったですよ。勝ち越しをしたかったし、優勝争いにも加わりたかったですからね。三役については、まあ番付は生き物、運も実力のうちといいますから。それに、あと一番二番上積みできていれば、三役に上がれていた地位ですから。

 

 そこは地力をつけて、きっちりと決められる相撲を取ればいいということ。三役に上がって(元関脇の)師匠に追いつきたいという気持ちは、当然ありますよ」

 

 今年に入っての快進撃にも、あるきっかけがあったという。

 

「去年の九月場所で怪我をした左膝がけっこう深刻で、手術してもおかしくないほどの状態だったんです。そこで、埼玉栄高の山田監督にいい先生を紹介していただいて。それで、なんとか十一月場所の土俵に上がることができたんです。

 

 その怪我以降、後ろに下がるのが怖くなったんです。それまでは、土俵際に下がって引いてみたり、投げを打ったりとか、“捌く”ような相撲が多かったんです。でも、そんな相撲を取っていたら、また大怪我をする。

 

 そこから、自分から前に出て攻めていくようになりました。攻めていったほうが、膝への負担は少ないんですよ。怪我の功名ってわけでもないんですが、自分の相撲は大きく変わったと思います」

 

 同部屋の後輩の存在も大きいという。2学年下の東前頭十一枚目・琴勝峰とは、柏相撲少年団から埼玉栄高と、ずっと稽古を共にしてきた。

 

「火をつけてくれる存在です。自分の2年後に部屋に入門してきて、自分が関取に上がったすぐ後に、勝峰も関取に上がりましたから。出世のスピードは向こうのほうがずっと早かったので、負けてられないという気にはなりますね」

 

 趣味は、という問いには、

 

「特にこれといってないです。ドラマを観るくらいですかね。NHKの朝ドラ『ちむどんどん』は観てますよ。でも、稽古後に観てるので、朝ドラじゃなくて昼ドラですね(笑)」

 

 好きな女性タレントを聞くと、2分ほど悩み、

 

「……う~ん。どの女優さんもきれいなので難しいですね。以前、聞かれたときには今田美桜さんって……。でもこれ、本当に記事になるんですか?」と、はにかんだ。

 

 今は相撲が最優先。目指す先にあるのは「琴櫻」だ。15年前に亡くなった祖父である先代師匠とは、大関昇進で「琴櫻」を襲名するという約束事がある。

 

「まずは三役ですよね。そこでやっと、先代の名を継ぐことへのスタートラインに立つことができるわけですから。もちろん、早く約束を果たして、先代にいい報告ができたらいいと思います」

 

 幼いころから祖父の膝に乗って稽古を見ながら、2歳でまわしを締めたという相撲の申し子。“櫻”が満開になる日は近い。

 

琴ノ若傑太(ことのわかまさひろ)
1997年11月19日生まれ 千葉県松戸市出身 189センチ、167キロ 佐渡ヶ嶽部屋 埼玉栄高在学中の2015年10月に入門。十一月場所で初土俵。2019年七月場所で新十両。2020年三月場所で新入幕。敢闘賞を3回受賞。九月場所は先場所と同じく自己最高位の東前頭二枚目

 

コーディネート・金本光弘

( 週刊FLASH 2022年9月27日・10月4日合併号 )

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