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中日・ロドリゲスだけじゃない「スパイ映画さながら」亡命目指すキューバ選手たち 一般国民も30万人が脱出

スポーツ 投稿日:2023.03.30 15:58FLASH編集部

中日・ロドリゲスだけじゃない「スパイ映画さながら」亡命目指すキューバ選手たち 一般国民も30万人が脱出

亡命疑惑が出ている中日のジャリエル・ロドリゲス(写真・時事通信)

 

 3月28日深夜に突如、亡命疑惑が持ち上がった中日ドラゴンズのジャリエル・ロドリゲス投手(26)。キューバ代表として先のWBCに出場したロドリゲスは、再来日予定だった3月29日、中部国際空港に姿を見せなかったことで、MLB入りを目指して亡命したのでは? と大騒動になっている。

 

 社会主義国のキューバでは、プロ野球選手も国家公務員。キューバ国籍を持つ野球選手は、そのままではメジャーでプレーできないが、より多くの報酬を求めメジャーでプレーするためには、亡命するよりほかに手立てはなく、そういった選手は昔からあとを絶たない。

 

 

 スポーツ総合サイトの「THE DIGEST」が、過去に亡命したプロ野球選手の例を紹介しているので、一部を抜粋する。

 

《2007年から2017年までMLBで活躍したユネル・エスコバーは、2004年に他の5選手とともに亡命し、森へ逃れて幅50mの川を渡り、夜は木の上に見張りを立てながら、2週間かけて乗船地点まで向かったという。》

 

《海外遠征中に亡命した選手もいる。控え捕手としてメジャーで12年(2005~16年)プレーしたブライアン・ペーニャは自身の手記によると、宿泊先のトイレの窓から抜け出し、待っていた車に乗り込んだ。決行のサインは、窓の外にぶら下げられた緑のバッティンググラブ。赤のグラブなら延期と打ち合わせていたという。》

 

《メジャー通算178勝を挙げたリバンヘルナンデス(1996~2012年)のケースはスパイ映画さながらだ。彼は遠征で訪れていたメキシコのモンタレーから亡命したのだが、練習中にサインを求めてきた女性の手帳にある男の写真が挟んであり、彼女は電話番号を記した紙をヘルナンデスの手に滑り込ませて『彼に連絡して』と囁いた。ヘルナンデスはその男の手引きでドミニカ共和国へ亡命を成功させた。》

 

 このように、亡命を成功させる選手がいる一方、何度も失敗することも珍しくなく、さらに成功してもそれで終わりではないという。

 

 2019年から2022年まで千葉ロッテでも活躍したレオネス・マーティンの場合は、《家族や友人とメキシコにたどり着いたものの、亡命をお膳立てした一味に家族が軟禁され、稼いだ金の3分の1以上を渡すことを約束させられた。12年にドジャースでデビューし、センセーショナルな活躍を見せたヤシエル・プイーグも似たような目に遭い、亡命を成功させた後もたびたび脅迫を受けていた》と「THE DIGEST」は報じている。

 

 彼らは、人生を賭けて命がけで海を渡っていることがわかるが、これはプロ野球選手だけに限った話ではない。「NHK国際ニュースナビ」は、2023年3月20日に『もうキューバにはいられない… なぜ?!30万人の国外大脱出』として、キューバという国の現状を報じている。

 

 それによれば、いまキューバでは、若者を中心とする人々が米国を目指して次々と島を脱出しており、2022年の1年間で、人口1130万人の3%に当たる30万人あまりがキューバから消えたという。キューバを出て、法的な手続きを経ずにアメリカに入国した人たちは過去最多。2020年のおよそ1万5000人、2021年のおよそ5万人から、急激に増えているというのだ。

 

 現地取材では、キューバを脱出しようと試みる、首都ハバナで17歳の息子と暮らす女性(47)の声を紹介。彼女は、

 

「国の経済状況はとても悪く、食べものも何もありません。月々の配給では足りず、洗剤すらもありません。息子のために、出て行きます。この国には未来がないんです」

 

 と語っている。米国に渡るのに必要な経費は、1人最低1万ドル(日本円で約134万円)。その額を工面するため、彼女は自宅も家財道具も、すべて売り払ったそうだ。

 

 キューバと米国は1961年に国交を断絶。2015年に回復したものの、トランプ政権で再び「テロ支援国家」に指定された。キューバが現在の状況に陥ってしまった背景としては、米国による厳しい経済制裁の復活、そして、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で、キューバの主要な収入源のひとつであった観光収入が激減したことがある。また、キューバが経済的支援を受けていた友好国・ロシアがウクライナに侵攻したことで、支援が滞ったことなど、複合的な要因が絡み合っているようだ。

 

 1959年のキューバ革命後、国家元首となったフィデル・カストロは、国家の全面的な支援によってアマチュア選手を育てる政策を推進。野球を国技に定めて義務教育に取り入れるなどして、キューバを野球強豪国へと育て上げた。カストロは文化芸術の分野にも力を入れたことで、国立バレエ団は世界有数のバレエ団となり、数多くの著名なダンサーを輩出してきた。しかし、野球と同じく、優秀なダンサーが海外に行ったまま戻ってこないことが多く、野球もバレエも存続の危機が叫ばれているという。

 

 歯止めの効かない大規模流出で、窮地に追い込まれているキューバ。ロドリゲスも、そんな現状に見切りをつけてしまったのだろうか。

( SmartFLASH )

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