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ラグビーW杯「キーマンは堀江翔太」いきなり髪を切れば流れを変えるワンチャンも!【元日本代表・山田章仁×畠山健介の観戦ガイド】

スポーツ 投稿日:2023.09.08 06:00FLASH編集部

ラグビーW杯「キーマンは堀江翔太」いきなり髪を切れば流れを変えるワンチャンも!【元日本代表・山田章仁×畠山健介の観戦ガイド】

「ラスボス」の愛称もある堀江翔太

 

 ラグビーW杯2023フランス大会が9月9日(日本時間)に開幕する。日本代表は前々回は予選プール3勝、前回は地元開催で初の8強進出と、2大会連続で世界を驚かせてきた。

 

 だが、今大会に向けたテストマッチでは期待された結果が出ず、状態を心配する声も上がっている。ジェイミー・ジョセフHC率いる日本代表は大丈夫なのか? ともに元日本代表でW杯2015イングランド大会では、南アフリカから大金星を挙げるなど、長く日本ラグビー界をけん引してきたレジェンド2人にたっぷり語り合ってもらった。

 

 世界ランキング14位の日本代表は7月以降、いずれもW杯に出場するサモア(同12位、●22-24)、トンガ(同15位、○21-16)、フィジー(同7位、●12-35)との対戦を含む国内でのテストマッチを1勝4敗と負け越すと、8月27日のイタリア(同13位)との最終試合も21-42で敗れた。

 

 

――テストマッチの結果については、どんな印象ですか。

 

山田 W杯で勝てばいいわけで、テストマッチの結果は気にしないでいいと思います。

 

畠山 サモアとは本番でも戦うし、できれば勝っておきたかった。ただ、リーチマイケル(34)が前半途中に退場するアクシデントがありましたし、長い時間を一人少ないなかで戦いながら2点差まで食い下がった内容はそれほど悲観するものでもなかった。それよりも気になったのは、その2週間後のフィジー戦でも危険なタックルで退場者を出してしまったことですね。

 

山田 日本代表はタックルに特化した強化合宿をおこない、柔術や格闘家の専門家を招いていたけど、タックルの判定基準は年々厳しくなっているし、そのへんはしっかり共有されているのかな? 極端な話だけど、本番では開始直後に危険なタックルで退場になるくらいなら、その場は抜かれても、残り時間を15人全員で戦ったほうがいいのではと思ってしまう。

 

畠山 全力でタックルに行っているのは優勝を狙い、フィジカルで上回る相手を本気で止めるためでは。ただ、退場になってしまうと代償はあまりに大きい。僕は、それよりも守備ラインが気になった。前回大会のようにラインが整っていなくて、間を抜かれる場面が多かったので。

 

■4連勝する力はある、勝利のカギはスクラム

 

――W杯に向けて楽しみな選手などはいますか。

 

山田 僕が期待するのは福井翔大(23)。彼は高校ラグビーの名門・東福岡高校から、大学を経ずにトップリーグ(現リーグワン)入りした珍しい選手。おそらく “ドレッドヘア” への批判もあったと思うけど、テストマッチでアピールして代表入りを勝ち取った。FWながら、バックス並みの走力も魅力です。

 

――ラグビー界は、髪型などを注意されるんですか。

 

畠山 今はそうでもないかもしれないけど、(福井より以前からドレッドヘアがトレードマークの)堀江翔太(37)は、ずっと前は言われていた。でも、最初にあの髪型をやったのは山ちゃん(山田)だけどね(笑)。

 

山田 僕はまわりの目とか気にせず、自分に正直に生きていたいと思っていただけ。けど、(前日本代表HCの)エディー・ジョーンズのころは、髪型や髭にはうるさかったよね。代表入りしても、日当は2000円だったし(笑)。

 

畠山 それ、僕がラグビー協会に言って、今は1万円になりました。ちなみに僕は、勝つとか負けるとか関係なしに、W杯で日本のラグビーがどれだけ公共性の高いものになるかってことが気になっている。その意味で、ボールを持ったらワクワクするんだけど、たまに大ポカもするセミシ・マシレワ(31)に注目している。トランプのジョーカーのように二面性があって、シチュエーションによってプレーがどう転ぶかわからない選手は見ていて楽しい。ディラン・ライリー(26)のような、高いレベルですべてが安定している選手も好きですけどね。

 

 日本代表は、予選プールでチリ、イングランド、サモア、アルゼンチンと順に対戦する。

 

――プール突破には何がポイントになるでしょう。

 

山田 今の日本代表は、パフォーマンスを発揮できれば4連勝する力はある。ただ、一方でチームが噛み合わなければその逆もあると思う。

 

畠山 カギはスクラムだよ。初戦のチリには楽に勝てると思っているかもしれないけど、南米のチームは基本的にフィジカルに長けている。日本はスクラムに自信を持っているけど、メンバーによってパフォーマンスが変わってくる。たとえば、ベテランの堀江は僕らと同学年。チリには勝てたとしても、その後のイングランド、サモアと戦い、最終戦のアルゼンチン戦までコンディションを維持できるか。2015年も2019年も、スクラムの安定感がチームを支えていたけど、今はそこが心配。

 

山田 あんまりやり込んでいないんじゃない?

 

畠山 たとえばプロップのシオネ・ハラシリ(23)は、もともとナンバー8でしょう。代表キャップもないし、いきなり本番でうまくできるのか。プロップは職人的なポジションだからね。ラーメン屋が寿司屋に転職して、すぐに一流になれますかって話。ロックも怪我などで、本職の選手が少ないのは気になる。

 

山田 キャップ数がない選手は、ある意味で未知数。ただ、僕はそういう選手がアクセントになる可能性もあると思っている。たとえば、チームがうまくいっていないなら福田健太(26)とかね。そういう選手の活躍が、チームに勢いを与えてくれるというか。

 

畠山 登録メンバーは前回より2人増えて33人。前回大会後、層の厚さが今後の課題という話があったけど、それなのにノンキャップの選手が複数入っている点は、個人的にどうかなという思いもある。

 

山田 この4年間でいえば、新型コロナウイルスの影響もあって、他国と比較しても強化の時間が思うように確保できなかった影響はあるかもしれないね。

 

■初戦のチリに勝ったら「メルシー!」と叫んでほしい

 

――チームの雰囲気を変えるムードメーカー的な存在といえば誰でしょう。

 

山田 小倉順平(31)は経験は少ないけど、ムードメーカーとしていい味を出すと思う。

 

畠山 選手プロフィルによると、座右の銘は「ケセラセラ」(スペイン語で「なるようになる」の意)だって。こういうメンタリティは大事だよ。

 

山田 リーチもキャプテンから外れて、肩の力が抜けているというか、今まで以上に活力を感じる。あと、前回「笑わない男」としてブレイクした稲垣啓太(33)に、今大会はぜひ笑ってほしいね。

 

畠山 クレイグ・ミラー(32)あたりに「笑わない男」を引き継いでほしい(笑)。

 

山田 今回、ガッキー(稲垣)が笑ったら、さすがだなってなる。たぶん99.9%笑わないと思うけど(笑)。

 

――流れを変えるために何が必要ですか。

 

畠山 堀江がいきなり髪を切ってくるとかかな。

 

山田 それは、ワンチャンあるかも。サッカーの長友佑都選手が、W杯のときに髪を金や赤色に染めたようにね。

 

畠山 去年のサッカーWは、長友選手の「ブラボー!」で盛り上がったので、ラグビーW杯はフランスだし、初戦でチリに勝って、誰かが「メルシー!」って叫んで盛り上げてほしい(笑)。キャラ的には、中村亮土(32)だな。

 

――一般的には、チリとサモアに勝ったうえで、イングランドかアルゼンチンのどちらかに勝てれば、プール突破できると考えられているように思います。イングランドは、2022年末にエディー・ジョーンズHCが解任されましたが、影響はあるでしょうか。

 

山田 それによって戦いやすくなったとかはないと思う。選手は揃っているので。

 

畠山 ただ、イングランドは調子を落としているので、勝つチャンスはあると思う。レッドカードのこともあるし(主将のオーウェン・ファレルが、日本戦は出場停止の見込み)、どうなるか楽しみ。

 

■プール突破のポイントはサモア戦でリベンジ

 

――ズバリ、日本の勝敗を予想すると?

 

畠山 本当にどうなるかわからない。前回大会だって、誰もプールを4勝0敗の首位で突破するなんて予想していなかったじゃないですか。

 

山田 初戦でチリに負けて「やばい、あとがない」となって、そこからパパパッっと3連勝するかもしれないし。イングランド戦がどっちに転ぶかわからないことを考えると、ポイントはサモア戦じゃないかな。連勝でくれば、そこで一気に決められるかもしれないし、負けたら終わりって状況になるかもしれない。

 

畠山 しかも、リベンジ戦になるしね。ただ、日本人は勝利を求めがち。どうなるかわからないからこそ、ドラマがあっておもしろいんじゃないですか。

 

取材&文・栗原正夫 ※日時は日本時間

( 週刊FLASH 2023年9月19日号 )

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