取材すればするほど、違和感の残る現場だった。10月25日深夜、鳥取にて事が起こり、11月14日にスポーツニッポンが報じた暴行事件。加害者が日馬富士(33)、被害者が貴ノ岩(27)であることは周知の事実だ。事件が明るみに出た同日、日馬富士と師匠の伊勢ヶ濱親方(57)は、謝罪の姿勢を見せた。
ところが、貴ノ岩は所在不明で、貴乃花親方(45)は報道陣の問いかけを完全無視。本来、加害者が逃げ回り、被害者が事の重大さを訴えるのが図式であろう。すべての窓にブルーシートが貼りつけられた貴乃花部屋宿舎を前にして、現場では、「どちらが被害者なのか?」との空気が流れていた。
とりわけ、貴ノ岩の所在は最大の関心事。一人帰京した、ホテルに隔離、さらに再入院説と、情報は錯綜した。
報道後、貴乃花部屋宿舎には多くの報道陣が駆けつけていた。しかし、報道当日の11月14日は動きなし。翌日も早朝稽古から多くの報道陣が現場に向かった。2時間ほどの稽古を終えると、力士は朝食を取りはじめた。
そして午前9時、一人の若い衆が大きなお盆に朝食を載せ、幕内力士の宿舎に向かうではないか。彼らは食事を終えているのに「なぜ?」という疑問と同時に、本誌は、「貴ノ岩がそこに引きこもっている」という確信を得た。
それから11時間後の午後8時過ぎ。このとき多くの報道陣は、会食を終えて帰ってくる貴乃花親方を待ち構えて いた。そのとき、一枚のブルーシートが風になびいた。部屋の窓の向こうに、 “被害者” の姿があることを本誌は見逃さなかった。
そもそも暴行事件はなぜ起こったのか。報道では日馬富士が、「もうあなたたちの時代ではない」という貴ノ岩の発言に激怒したとされる。相撲関係者が発言の真意を語る。
「居合わせた力士によると、貴ノ岩の発言は、『いつまでも30過ぎたモンゴル人の3横綱で、星の回し合いをしている時代ではない』という意味だ。彼は以前から、ベテラン3横綱の取組に不信を抱いていた。その不信を口にしたことで、日馬富士の怒りを買った。その際、貴ノ岩が彼女から着信があったスマホを操作したことで、暴行へと発展したのが真相だ」
この暴行をもとに、貴ノ岩の診断書が鳥取県警に提出された。その2週間後、相撲協会にも提出。しかし、2つの診断書に相違があったのだ。初めに作成された県警への診断書には「骨折」の記載がなく、怪我の程度も軽かった。
また、医師たちも協会側に提出された診断書の「全治2週間」という記載に疑問を投げかける。
「髄液漏はすぐわかるので、『疑い』というのはおかしい。本当ならバットで殴られたような痛みが続く。稽古などできるはずがない」(つながわ整形外科・ペインクリニック綱川慎一郎院長)
また脳卒中などを専門とする米山公啓医師も、「診断書に書いてある怪我なら即入院。少なくとも1カ月は激しい運動はやめるべき。全治2週間、経過次第では復帰も可能というのは到底考えられません」と、疑問を呈する。
診断書を書いた福岡市内の病院にも取材を申し込んだが、「何もお答えしません」とのことだった。
(週刊FLASH 2017年12月5日号)