「僕は全球団のファンクラブに入っているので、20年連続で日本一になったチームの会員であり、毎年、日本一の喜びを味わっています」
こう語るのは、ヤクルトファン歴45年の作家で、世界でただ一人の「12球団ファンクラブ評論家(R)」の長谷川晶一氏(54)。書籍『プロ野球12球団ファンクラブ全部に20年間入会してみた!』(集英社)を上梓した長谷川氏は、楽天とソフトバンクが誕生した2005年から12球団のFCに入り、特典グッズのユニフォームを着て観戦チケットを片手に地方へ遠征し、選手とのふれ合い体験などにも積極的に参加してきた。FC会員の恩恵を最大限享受して、毎年、自分基準でFCを査定。ランキング化してきた。
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「きっかけは、2004年に入会したヤクルトのFC特典でした。年会費5000円で5試合ぶんのチケットのほか、『帽子』『お守り』『缶バッジ』などで、それが僕には貧相に見えた。そこで、他球団はどんな特典があるのか? と素朴な疑問が生まれました」
好奇心から始まった12球団FCチャレンジだった。
「20年前は、ファンを獲得するために、パ・リーグのほうがファンサービスに熱心でした。どの球場も観客が少なかったので、FC会員にチケットを配って、球場に足を運んでもらい、飲食やグッズなどでお金を落としてもらったほうがいいと考えたわけです。以降、時代とともに変化と発展を遂げて、近年はどの球団もレベルが高くなっています。グッズの質も変化していて、阪神のグラブ革を使用した『長財布』や『名刺入れ』、ロッテの『真空断熱炭酸用ボトル』ほか、自分ではわざわざ買わないけどもらったら嬉しいアイテムが揃っています」
ヤクルトの熱狂的なファンで、アンチ巨人だったと公言していた長谷川氏。FC会員とはいえ、東京ドームで巨人のユニフォームに袖を通すことに抵抗はないのだろうか?
「さすがに、巨人戦で巨人のユニフォームは着ていません。以前のように強烈なアンチ巨人というものではなく、純粋にプロ野球を楽しめるようになってきました。FCに入ったことで選手について詳しくなり、いい選手は純粋にいいと評価できるようになった。全球団FC会員効果ですね」
以下は、長谷川氏が身銭を切ってガチ調査した“12球団ファンクラブ”ランキングだ。
■1位 埼玉西武ライオンズ 殿堂入りしていい! 最高のサービスを展開
「松坂大輔のポスティングによる移籍金60億円の一部の資金がファンクラブで活用され、以降は観戦特典、グッズ、ポイント制度、継続特典、来場特典ほか、ファンのために考えられる限りのサービスを展開しています。ここ数年は停滞気味ですが、他球団のよいサービスをすぐに取り入れる姿勢も高評価で、20年間トータルでの1位となりました」(長谷川氏・以下同)
■2位 千葉ロッテマリーンズ 最高の先行者にして功労者
「2005年からの10年間は、全球団のFCを評価する際の基準点にしていました。『OUTDOOR PRODUCTS』とコラボした『バッグ』(2016年)や『スタジアムジャンパー』(2018年)はお気に入り。一時期は『ロッテリア試食券』があり、『目覚まし時計』(2019年)には名物ウグイス嬢の谷保恵美さんの『おはよーー』と美声が響きわたるコールも入っていた。特典に独自性がある」
■3位 東京ヤクルトスワローズ 早期入会特典も多種多彩
「ヤクルトのファン歴45年。FC比較については私情を挟まないポリシーだが、ヤクルトは他球団を凌駕するセンスのいいグッズを提供している。つば九郎という大スターがいるのも魅力。早期入会特典は、本格絵本『つばくろうをさがせ!』(2019年)、チョロQタイプ『てくてくつば九郎』(2020年)など充実」
■4位 読売ジャイアンツ 金もあるが、魂もある!
「この20年でもっとも紆余曲折があった。2005年に入会したときは質・量ともにハイクオリティでおなかいっぱいだったが、2019年にリニューアルして特典の複数選択制を廃止(2020年に復活)。2023年からは打撃練習見学など『体験特典』が始まった」
■5位 中日ドラゴンズ 派手さはないが堅実な運営が光る
「長年、会報は新聞形式で会員証は紙製だったが、現在は他球団同様、パンフレット形式の会報、プラスチック製の会員証になった。2006年、スタジオジブリの宮崎駿監督がデザインした新キャラクターが登場。ドライバーのツールセット『ドアライバー』(2019年)も秀逸」
■6位 福岡ソフトバンクホークス 選択できるアイテムが豊富
「発足時、孫正義オーナーが『世界一のFCを目指す!』と高らかに宣言。複数選択制の特典の数が多いのが特徴。ハイグレード会員なら15種類から選べる。近年は『本革路線』で、『トートバッグ』(2019年)などがラインナップされています」
■7位(同率) 広島東洋カープ 12球団唯一無二の手作り感
「会員は定員制で、メイン特典はオリジナルユニフォーム。予算やマンパワーに限りがあるなかで知恵を絞って、一定のクオリティを保ちながら運営。社風に好感が持てる」
■7位(同率) 阪神タイガース 継続年数重視 ファンの忠誠心がすべて
「阪神の特典はいい意味で『コテコテ感』がある。なかには20年継続しなければ入れない『プレミアムプラス』(年会費+7万円)があり、カネも必要だが忠誠心も求められる」
■9位(同率) 横浜DeNAベイスターズ 革命か迷走か、それが問題
「親会社がTBSからDeNAへ変わる時期は迷走。近年は『キャッチャーマスク』(2018年)、『ファーストミット』(2020年)などガチ野球路線を進む」
■9位(同率) オリックス・バファローズ 脱マンネリを目指せ!
「『宮崎牛の肉』(2022〜2023年)は衝撃的だったが、一方でユニフォーム、バッグ、タオルを繰り返している。抜本的な改革に期待しています」
■11位・東北楽天ゴールデンイーグルス プレミアムコース以外は、うーん
「プレミアムコースは質・量ともに最高だが、ほかは年会費相応。非公認キャラクター・Mr.カラスコがいたころは斬新な特典が満載だった」
■12位・北海道日本ハムファイターズ 個性に乏しく影が薄い
「存在感は希薄だったが、新球場が誕生した2023年から生まれ変わった。特典グッズも『スタジャン』『キャリーケース』(同年)など豪華に」
※特典グッズは毎年変わります
長谷川晶一
1970年生まれ 東京都出身 出版社勤務を経て、2003年、ノンフィクションライターに。野球、サブカルなど多くの作品を執筆