
第108回全国高等学校野球選手権大会に出場した宮城・仙台育英高の須江航監督
連日の猛暑のなか、熱戦が続く第108回全国高等学校野球選手権大会。今年の夏の甲子園は選手のプレーととともに、監督の存在も注目される大会となっている。
出場49校中、元プロ野球選手の監督が率いる高校が4校も出場するのだ。しかも監督は、いずれも母校に戻って選手たちを甲子園に導く快挙を成し遂げている。
3年ぶりの甲子園出場を決めた山梨・東海大甲府を率いるのは巨人や楽天でプレーした仲澤広基監督。自身も2004年夏の甲子園大会では主軸打者として活躍し、ベスト4に進出している。
栃木・佐野日大を率いる麦倉洋一監督は、1989年夏の甲子園に出場。エースとして記念すべき開幕戦で好投し、勝利投手と本塁打の快挙を成し遂げた。同年ドラフト3位で阪神入団。監督就任9年めの今年は、春夏連続で甲子園出場を果たした。
4監督のなかで、選手としても監督としても群を抜く実績を残しているのが和歌山・智弁和歌山の中谷仁監督だろう。1997年夏に主将として甲子園優勝を経験。その後、阪神、楽天、巨人の3球団で捕手としてプレーし、2018年9月に母校の監督に就任した。 2021年夏の甲子園優勝、2025年センバツ準優勝など、輝かしい経歴の持ち主だ。
元プロではあるが、異色の存在と言われるのが東京・八王子実践を春夏合わせて初の甲子園に導いた河本ロバート監督だ。自身に甲子園経験はないが、投手として亜細亜大卒業後はドジャースのマイナー、独立リーグ、台湾プロ野球などを渡り歩いた。NPBでのプレー経験はないが、豊富な経験に裏付けられた野球知識は本物だ。
監督に注目するならば、プロ経験はなくとも、この人を忘れてはいけない。2022年夏の甲子園で初優勝した宮城・仙台育英高の須江航監督だ。優勝インタビューで、コロナ禍に悩み、苦しんだ選手たちを慮って出た「青春って、すごく密なんで。でもそういうことは全部ダメだと言われて。でも本当にあきらめないでやってくれた」と発したコメントは、いまも多くの人たちの心に残っている。
その“須江節”は今大会も健在のようだ。今大会は猛暑を考慮し、開会式は午後4時から、開幕戦は午後5時39分からとなり、仙台育英は北海道・札幌日大を3−1で下した。これで仙台育英は夏通算49勝となり、奈良・天理と並んで歴代4位タイとなった。須江航監督は監督として春夏通算20勝め。
試合後、須江監督はナイターでの勝利について「彼らがここまで味わってきた、人生最高の夜更かしだと思います」と表現。“言葉の魔術師”の本領発揮だ。
また、プロ野球やMLBでも使用するビデオ検証が今大会から導入されたが、「やたらめったらリクエストするつもりはありません」と宣言。「この試合でも素晴らしいジャッジをしていただきました。何一つ疑問を持つようなジャッジはありませんでした」と、審判へのリスペクトを忘れなかった。
「発言がクローズアップされがちですが、春夏で20勝している名将です。野球の指導はもちろん、人生の先輩として、子どもたちからは人としての成長を手助けしてくれると評判なんです。その一つとして、監督が常に言っているのが『負けたときの振る舞い』ということなんです。勝ったり、優勝したりしたときではなく、負けたときこそ自分を支えてくれた人たちへ連絡、感謝をしなくてはいけない、という教えです。
当然、須江監督に教えてもらいたい子どもたちは今後も増えていくでしょう。女性ながら記録員としてベンチ入りし話題を呼んでいる、学生コーチ兼マネジャーの星よつはさんもそのうちの一人です」(スポーツライター)
星さんの父は仙台育英OBで、巨人、西武でプレーした孝典氏だ。
元プロの指揮官たちの挑戦と、言葉で球児の心を鼓舞する名将の采配。ベンチのドラマからも目が離せない。
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