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吉沢亮『PICU』なかなかの良作だが…少女2人を救えなかったシビアすぎる展開に視聴者離れの懸念も
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.10.17 11:00 最終更新日:2022.10.17 11:00
第1話は、ご都合主義を排除したシビアかつシリアスな作りで好感が持てた。しかし、第2話以降はエンターテインメント作品として、視聴者をつなぎとめられるかがカギになってきそうだ。
先週月曜にスタートした月9ドラマ『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)。昨年の大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)で主役を演じた吉沢亮が、大河以来、初となる主演ドラマである。
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「PICU(Pediatric Intensive Care Unit)」とは、副題にあるとおり、“小児専門の集中治療室” のこと。
舞台となる北海道は、土地が広大すぎるゆえに大規模PICUの運営は困難と言われているそうだが、そんな北海道で創設されたPICUで、若手小児科医・志子田武四郎(吉沢)の成長を描く医療系ヒューマンドラマだ。
テレビ業界全体の視聴率が急激に下落している現在において、第1話の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は10.3%で、これは上々の数字と言える。月9枠としては16作連続で、初回二桁視聴率スタートとなった。
■少女が大量吐血…初回からあまりにつらい描写
第1話では2人の少女の死が描かれた。
冒頭で天才子役の少女がドラマ撮影中に体調不良となり、そのまま亡くなってしまう。この少女の死がメディアで大きく報じられたことがきっかけとなり、3年後に志子田もメンバーに加わるPICUが立ちあげられた。
そして志子田たちのPICUが迎え入れた最初の患者である少女も、尽力むなしく亡くなってしまう。
少女が運び込まれたものの、経験が浅くオロオロするばかりの志子田。「ママ」と不安そうにつぶやく少女を少しでも安心させようとして寄り添うが、少女が大量に吐血して志子田は顔に浴び、なすすべなく茫然と立ち尽くしてしまう……。
初回から2人の少女が命を落とすというシビアな展開。医療体制の問題点や現状の限界といった現実を真っすぐ描いたゆえだろうが、あまりにつらい描写が続いたのである。
■子育て経験のある人ほど正視できない可能性も
本作はそういった問題や限界を改善していくために戦う医師たちの物語だと考えれば、このハードな描写の連続は必要不可欠だったと思うので、個人的にはご都合主義に走らなかった真摯な作りを称えたい気持ちでいっぱいだ。
ヒーロー(天才医師)がその凄腕で奇跡を起こして患者を救い続ける作品なら、エンタメ的な面白さを出しやすいが、本作はその路線は選ばなかった。
むしろ志子田は本当に何もできない無力な若手医師として描かれていたので、けれん味をなくして地に足の着いたドラマを作ろうとしているのがわかる。
少なくても第1話はエンターテインメントとしての爽快感はほとんどなかったが、視聴者への問題提起やPICUの必要性の周知にはつながったはず。そういった面から、じっくり・しっかり作っていこうという気概を感じたので高く評価したい。
けれど、掴みとなる第1話でこのような鬱々とした展開が続いたため、精神的に正視するのがしんどいと思った視聴者が離れてしまう懸念はある。
特に子育て経験がある方ならば、わが子が急病やケガをしたこともあるだろうから、感情移入しすぎて観続けるのがつらいと感じる人がいてもおかしくないだろう。
本作は安田顕や大竹しのぶといった円熟した役者が吉沢の脇を固めている。
安田が演じるPICU科長は、穏やかな口調で物腰が柔らかい小児科医だが、緊急搬送された少女を診る際の張り詰めた空気を作る演技がすさまじく、緊張緩和のギャップで魅せていた。
大竹が演じる主人公の母親は、からっとした明るい性格の肝っ玉母ちゃん。脚本のセリフをしゃべっているとは思えない自然な演技で、暗い雰囲気が漂っていた第1話において、大竹の出演パートだけが唯一ほっと安らげるシーンだったように思う。
また、後輩に厳しいが確かな腕と信念を持つ小児外科科長(正名僕蔵)や、冷静沈着で口数は少ないが情熱を秘めた救命医(中尾明慶)など、いい味を出していた。
安田や大竹が演じるキーパーソンや、正名や中尾が演じるバイプレイヤーが、作品に奥深さを与えてくれているのだ。
わかりやすいエンタメ性は薄いかもしれないが、大河主演を経て一皮むけた吉沢亮を座長に据えた良作だと思うので、埋もれずに世間からも高く評価されてほしい。第2話は今夜放送だ。
●堺屋大地
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『週刊女性PRIME』『日刊SPA!』などに寄稿中
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