スナックで昭和歌謡を熱唱するほど“昭和愛”をこじらせている23歳のモデル・女優がいるという……それが中村里帆だ。
スラリとした165cmの身長とさわやかな表情が印象的な23歳。女性ファッション誌『Ray』のモデルを務めながら近年は女優としても活躍し、現在放送中のドラマ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では、岡山県の地下アイドルグループ「ChamJam(チャムジャム)」の絶対的リーダー・五十嵐れお役を演じている。
昭和歌謡の中でも特に中森明菜が大好きという中村里帆に“昭和愛”について語ってもらった。
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■「私も昭和の時代に生まれて『スター誕生!』に応募したかった」
――そもそも昭和歌謡にハマったきっかけは?
「以前受けたオーディションで『得意なアイドルの曲を披露してください』と言われ、私は声があまり高くないので、現代の高音の歌はうまく歌えなくて……。過去の曲を調べていくうちに“明菜ちゃん”の『少女A』に出会いました。『なに、このカッコイイ曲!』と思い、そこから一気にハマりました」
――中森明菜さんのどんなところが中村さんに刺さったのでしょうか?
「私が初めて見た映像は、デビューして間もない頃の“明菜ちゃん”で、本当に天使のように優しい感じの美少女なのに、ステージに立つと迫力がすごいというか……。それまで昭和のアイドルに対しては、フリフリした衣装を着て姿勢よく歌っているイメージを勝手に持っていたのですが、“明菜ちゃん”は歌も衣装もダイナミックで、唯一無二感がすごいと思いました」
――よく明菜さんの歌を、スナックに行って歌うとうかがいました。
「年の近い友人に、昔ながらのスナックが好きなコがいて、その友人に連れられて行ったのが最初です。コロナ禍以降はあまり行けていないのですが、個人的には『スナックこそが私のステージ』だと思っています(笑)」
――最推しである中森明菜さんの好きな曲ベスト3は?
「ベスト3を選ぶのは難しいですね……。しいて言えば、十八番は『十戒(1984)』です。振り付けも完全にコピーしていて。以前、『Ray』の撮影で“明菜ちゃん”のコスプレをしたことがあって、その時に衣装用の黒い手袋をいただいたんです。それを付けて、スナックでよく『十戒(1984)』を歌います。あと『1/2の神話』とか『TANGO NOIR』ですかね。激しい曲が好きです」
――歌う場所は、やはりスナックなんですね。
「はい。それと、“明菜ちゃん”の曲ではないですが、山口百恵さんの『プレイバックPart1』が好きです。以前スナックで歌ったら周りの人が誰も知らなくて。『プレイバックPart2』は有名なのですが、実は『Part1』があるんですよ。歌詞も曲も『2』とはまったく違って。オススメですのでぜひ聴いてみてください」
――中森明菜さんにハマったことから、昭和のほかの歌手にも興味が広がっていった。
「最近では尾崎豊さん。1988年の東京ドームのライブ映像で『僕が僕であるために』を歌っているのを見た瞬間に鳥肌が立って。声もかすれているし、顔も汗びっしょりで『こんなに魂を削ってステージに立っている人がいたんだ』と衝撃を受けました。ただ、アイドルとしては推しは“明菜ちゃん”ひと筋です」
――歌謡曲以外に、昭和的なものは全般お好き?
「そうですね。昭和アイドルのブロマイドを一時期集めていて、今でも冷蔵庫に貼っています。あと、いただきものの“聖子ちゃん(松田聖子)”の写真集も。デジタル技術が発展していない時代の作品で、フィルムだけで撮ってレタッチもないわけですけど、それが逆に妙にエモいんです! ほかには、母の友人からいただいたバブル絶頂期の肩パット入りのコート。自慢の一着でたまに着ています」
――ひょっとして、ご自宅の内装や備品も昭和レトロに?
「はい。自宅にも昭和レトロっぽさを取り入れています。部屋はジブリ(『となりのトトロ』などのアニメ)を意識しているのですが、花柄のやかんや古い鏡など、昭和のモノをいろいろ買い集めています」
――中村さんにとって、昭和とはどういうイメージですか?
「なんというか……ギラギラしたイメージです(笑)。1980年代当時の音楽番組とかを見ると、すごく豪華ですし。当時ならではのギラギラした演出、ミラーボールとか、生バンドとか、空港で歌ったりとか、本当にうらやましいです。私もできればその時代に生まれたかったですね。それこそ“明菜ちゃん”と同じか少し後ぐらいの年代に生まれて、『スター誕生!』に応募したかったです(笑)」
――そこはファンとして“推し活”に徹するのではなく、中森さんと同じステージに立つことを目指すのですね?
「私が芸能界に入ったのは雑誌『nicola』のモデルが最初だったのですが、それも当時、飯豊まりえさんに会いたくて応募したんです。だから、もし、昭和に生まれていたら、同じように中森明菜さんに会いたくて、芸能界を目指していたと思います」
■「ドラマの中でも、推されるのは新鮮な感覚です」
――現在放送中のドラマ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(ABCテレビ・テレビ朝日系)では、地下アイドルグループ「ChamJam(チャムジャム)」のセンター・五十嵐れおを演じられています。中村さんの昭和アイドル好きが、お芝居に活かされていることはありますか?
「れおの心情をいろいろ想像したりするのには、役に立っているかもしれません。でも、『ChamJam』は現代のアイドルグループで、歌い方や楽曲は昭和とはまったく違うため、撮影中は極力“明菜ちゃん”の曲を聴かないようにしています。聴くと影響を受けてしまうので(笑)」
――昔と現代とではアイドルとファンの関係性も変わっているように思います。
「そうですね。昔も今もファンの方々の熱量はすごいですが、現代のほうがアイドルとファンとの距離が近いと思います。ドラマでもアイドルとファンが一丸となって、一緒に武道館を目指す要素があるんです。それに比べると、昭和のアイドルのほうが遠く崇拝されているような存在なのかなと」
――れお役でアイドルのファン役の方々に推されてみた感想は?
「普段SNSとかでファンの方々がいてくださるのはわかるのですが、実際に対面することはあまりないんです。それが、アイドルの『ChamJam』を演じてみて、ライブの会場に足を運んでくださるファンの方々が真剣に思いを言葉にしてくれたり、目に見える形で推してくださるのがわかり、役とはいえすごく新鮮な感覚です」
――主人公・えりぴよを演じるのは元乃木坂46の松村沙友理さん。ChamJamの熱烈なオタファンを演じています。アイドルとしての松村さんに現場で教わったことはありますか?
「現場ではアイドルの沙友理さんではなく、オタクのえりぴよさんでしたので、教わるというのは特になかったですが、元乃木坂46でまさにトップアイドルとして活躍されてきた方なので、真正面から自分のパフォーマンスを見られるのはすごく緊張しました。でも、すごく満面の笑みで見守ってくださって、歌やダンスの振りも覚えて真似してくださったりして、そこからいつもパワーをもらっています」
――最後に、もし中森明菜さんに会えたらどうします?
「えっ……どうしよう。ディナーショーとかを開いていただいて、それを遠巻きに見るだけで充分です。今はもう、緊張しすぎて会えないです。もしお会いできたら死んでしまうかも(笑)。少なくとも、失神してしまうと思います。ちょっと想像できないです」
なかむらりほ
23歳 1999年8月6日生まれ 高知県出身。2013~2016年に雑誌『nicola』専属モデル。2017年より雑誌『Ray』レギュラーモデル。モデルと並行して女優としても活躍し、2021年にドラマ『シンデレラはオンライン中!』で初主演。2022年10月より放送中のドラマ『高嶺のハナさん2』に淀屋橋うめ役、ドラマ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』に五十嵐れお役で出演するほか、2023年度前期NHK連続テレビ小説『らんまん』への出演が控える。
取材/文・新藤琢磨
写真・宮本賢一
ヘアメイク・イワタユイナ
スタイリスト・和田ミリ
取材協力・SUPER MIX
( SmartFLASH )