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レジェンド漫画家・遊人氏が原画を大量ヤフオク出品!背景に漫画界への憂い「安い原稿料で質の低い作品が溢れる」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2022.12.03 06:00 最終更新日:2022.12.03 06:00
「僕の漫画をリアルタイムで読んでいた方たちは、今は50歳前後。趣味にたくさんお金を使える方が多い世代なので、僕の原画は今がいちばん売りどきだと思います」
そう語るのは、数々のお色気美少女漫画で一時代を築いた、レジェンド漫画家の遊人氏(63)だ。1988年に「週刊ヤングサンデー」で連載を開始した『ANGEL』は、単行本第1巻が発売されると、単巻で100万部を超える大ヒットとなった。
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「登場する女のコは美少女の造形として、当時最先端でした。しかも、描写が緻密で過激。漫画史に残る衝撃作です」(漫画ライター)
『ANGEL』以降もヒット作を量産した遊人氏は、最盛期には9年間で10億円を稼ぎ出したという。
「時代もよかったんです。バンバン雑誌が売れる時代だったし、僕もその波に乗ろうと意識しました。それまでは、劇画調のまったく違う作風だったのですが、当時は高橋留美子先生や、あだち充先生がすごく売れている時代。同じように、かわいい女のコを描けば売れるといわれて、徹底的に練習しましたよ」
そんな遊人氏は近年、自分のホームページや、ヤフーオークションで、1点しかないオリジナル原画の販売を始めた。実際にヤフオクで確認してみると『ANGEL』の第12話がなんと62万1000円で落札されている。なぜ、大切な原画を売りに出したのか?
「いちばんの理由は、保管の問題ですね。30年間分の原稿がトラック1台くらいあるのですが、僕が亡くなったら、これはどうなるのだろうと思いまして。遺族が管理していくのは大変だろうし、盗難とか火事に遭ったら、一度になくなってしまう可能性もあります。そう考えると、いちばんいいのは僕の原稿を欲しいと思ってくださるファンの方に買い取っていただくことなのかなと思いました。高いお金で買ってくださった方なら、僕より大切に保管してくれるでしょ(笑)。結果、僕の原稿も長生きできますし」
いわば、先を見据えた漫画家なりの“終活”なのだ。原画はおもに1話ごとでまとまって売られており、ほとんどは10万円以上で落札されている。作家の試行錯誤の跡が残る1点ものだからだ。
「でも、今は僕もペンタブを使ってデジタルで描いています。アナログの時代は終わったんですよ。全盛期は、1本の漫画を描くために、高いギャラを払ってアシスタントさんを何人も雇って描いていました。だから、質を落とさず、集中的に量が描けた。ところが、今は雑誌が売れない時代。出版社の体力がなくなって、原稿料が安い。そこまで時間とお金をかけて、作品を描く価値がないんです。
一方で、電子書籍の漫画の世界では出版社が印税を払わず、作品を買い取るなんてケースが増えていると聞きます。これじゃ、作家さんはやる気が出ないですよね。この先、電子書籍の漫画は安い原稿料で描かれた質の低い漫画で溢れ返るんじゃないですかね」
だが、時代の流れには逆らえない。遊人氏も“紙じまい”をするつもりだ。
「それが、原画を売る第2の理由です。高解像度でスキャン済みなので、先々はデジタルデータであるNFTとして売ることも考えています。今後は、遊人というペンネーム以外で、ホラーやSFなど描きたいものを好きに描いていくつもりなんです。半分趣味ですが、ネットを駆使すれば、世界中に簡単に作品を届けられる時代ですからね。大手出版社に権利を取られたうえに、あれこれと指示されるよりも自由ですよ。もちろん原稿料はもらえないので、稼げるように自分で工夫する必要がありますが、それが楽しい。これからの漫画家はYouTuberのようになっていくんだと思いますよ。SNSや動画サイトなど、いろんなプラットフォームを通じて、漫画を描きながらいかにファンを広げて人気になるか……。わくわくしますよね」
と、未来に目を向ける遊人氏。だが、我々は青春の“お供”を手に取って懐かしむのもアリかも……。