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吉高由里子『星降る夜に』時代に合った “凪” の最終話は見逃し配信のおかげ?【ネタバレあり】

エンタメ・アイドル 投稿日:2023.03.15 21:10FLASH編集部

吉高由里子『星降る夜に』時代に合った “凪” の最終話は見逃し配信のおかげ?【ネタバレあり】

 

 すべての登場人物が愛おしく、この世界観にずっと浸っていたいと思わせる、じんわりと心の奥底から温かくなるドラマだった。

 

 3月14日放送の最終話(第9話)で大団円を迎えた吉高由里子主演『星降る夜に』(テレビ朝日系)は、全方位にハッピーエンドだった。これはいい意味で言いたいのだが、クライマックスは第8話で迎えていた。そのため、最終話はエピローグの要素が色濃く、せかせかといろいろな要素が詰め込まれることもなく、時間たっぷりに登場人物たちの幸せな様子で魅せたラストとなっていた。

 

 

■【ネタバレあり】最終話はハラハラが終わった状態で迎えていた

 

 35歳の産婦人科医・雪宮鈴(吉高)と、生まれつき聴覚を持たない25歳の遺品整理士・柊一星(北村匠海)が運命的に出会い、惹かれ合っていく純愛物語。最大の特徴は、恋のお相手がろう者でありながら、聴覚障害が “恋の障害” として描かれておらず、耳が聴こえないことが一星のひとつの個性として描かれているところにある。

 

 そんな本作で最大の問題になっていたのは、鈴が大学病院で働いていた5年前、運び込まれた妊婦の命を救えず、その夫・伴宗一郎(ムロツヨシ)から逆恨みされ、犯罪まがいの執拗な嫌がらせを受けていたことだった。伴からSNSに誹謗中傷を書き込まれたり、自宅の窓ガラスを割られたり、病院で罵詈雑言を浴びせられたりと、怯える日々を過ごしていた鈴。伴の蛮行はもはやホラーでさえあった。

 

 しかし、鈴の後輩で45歳の新人産婦人科医・佐々木深夜(ディーン・フジオカ)にも、10年前に妊娠中だった妻とお腹の子を亡くしていた過去があり、伴は深夜と対話したことで少しずつ心境に変化が……。そして、伴との問題は第8話のラストで解決。失意のなか、海に身を投げようとしていた伴を、鈴、一星、深夜たちが止め、彼の心に積っていた淀みを少しずつ晴らしていった。

 

 しかも、第8話終了後の次回予告では、一星や深夜が伴と一緒に銭湯にのんびりつかっているシーンも流していた。要するに、最終話を迎える前に、この問題がきちんと解決したことを視聴者に提示していたのである。

 

 普通に考えれば、劇中最大の問題の決着は最終話まで引き延ばすのがセオリーだろう。けれど、本作はあえてその定石は踏襲せず、視聴者たちに最終話を穏やかな気持ちで迎えられるようにしてくれたのではないか。

 

 こういうところにも、脚本家や制作陣の “温かいドラマを作ろう” という矜持が表れている気がした。

 

■見逃し配信が浸透したから穏やかな最終話にできた?

 

 最終話、メインは深夜のエピソードだった。

 

 深夜は、妻と暮らしていた家を当時のまま残していたのだが、前に進むため、一星が務める会社に遺品整理を依頼。妻が亡くなったときに涙を流せなかった深夜だが、妻が生前に用意していた自分あてのプレゼントが見つかり、それを胸に抱いて号泣。

 

 本作のメインは鈴と一星のカップルであり、深夜は三番手のキャラクター。だが、あえて最終話で三番手の心を救済するエピソードを長尺で取るあたりも、脚本家や制作陣のキャラへの愛情があふれていると感じた。

 

 そして、ラスト10分ほどで舞台は1年後に。ここで描かれたのは、登場人物たち全員の幸せそうな日々。一人残らず笑顔の全方位型ハッピーエンドだった。

 

 伴が店員として働くスーパーマーケットに、たまたま鈴と一星が訪れ、2人が買おうとしている春菊とネギに、伴が半額シールをそっと貼ってあげる姿にほっこり。鈴と伴の確執も解けたわけだが、もし伴が暴れまわっていたときに警察を呼んでいたら、こんなふうに穏やかな会話を交わすことなどできなかっただろう。

 

 鈴は警察を呼んで伴を排除することもできたが、そうはせず、彼の気持ちを受け止めようとしたからこそ、伴とわかり合えることができたのだと思う。

 

 これは批判ではないのだが、最終話なのに鈴や一星にフィーチャーする大きなエピソードは用意されていなかった。鈴の最大の問題だった伴との関係は解決済みだし、鈴と一星のカップル間の衝突や不和もなく基本ずっとラブラブ。つまり、ハラハラするような緊迫感はほとんどなく、主要キャラ2人にとって “凪” の最終話だった。

 

 でも、それが本当に素晴らしかった。

 

 ――今までのドラマ業界は視聴率の高低で作品のよし悪しを評価されていたので、リアルタイムで観てもらうため、視聴者をハラハラさせた状態で最終話まで引っ張る必要があった。しかし、昨今はTVerなどの見逃し配信が浸透し、制作陣もリアルタイム視聴にそこまで躍起になる必要がなくなったのだろう。

 

 最終話前に最大の問題が解決し、ただただ主人公たちの幸せな姿を描く “凪” の最終話というのが、今後増えていくのかもしれない。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』に恋愛コラムを連載中。ほに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

( SmartFLASH )

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