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「春になったら」「忍びの家」で話題の筒井真理子、早稲田大学で舞台にハマり、56歳でカンヌ女優「お芝居に国境はありません」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2024.03.03 11:00 最終更新日:2024.03.03 11:00
国道246号から一本入った路地にある、ガラス張りの開放的な外観の和食店「池尻おわん」。四季折々の料理が味わえる、と食通の間で人気の高い店だ。
「旬の食材を最高の食べ方でいただけて嬉しいです。何を食べても美味しいですよ」
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俳優・筒井真理子も10年以上前に知人の紹介で訪れ、常連になった。
「日本酒と合う食事が多いのが魅力的。(珍味の盛り合わせで提供された)店主の自家製からすみは、お酒が進みます」
そう語り笑顔を見せると、場が一気に華やいだ。
筒井は四きょうだいの末っ子で、おしゃべりが大好きな明るい子供だった。
「友達と遊ぶのが大好きでした。家の瓦屋根の上をぴょんぴょん跳んで歩いたりする活発な女のコでした」
彼女が芝居と出合うのは、早稲田大学に入学してから。鴻上尚史氏が主宰する劇団「第三舞台」の公演を観て、いても立ってもいられず入団を決め、上演中にもかかわらず楽屋に向かった……。
「(第三舞台は)大隈講堂の前のテントで上演していたのですが、上演中に楽屋に入っていって『入れてください!』って頼んじゃいました。なぜか今逃したらダメかもと強く思ったんですよ。みんなに『落ち着いて』って笑われました」
初舞台は新人公演。演目もキャストも決まっていたなかでの加入だったため、筒井が演じたのは台詞のない通行人役だった。
「ずっと手を振ってニコニコしているだけの役でした。そのころの私は、少し落ち込んでいた時期であまり笑えなかったんですよ。でも役だと笑える。何も考えずにいられるんです。熱中できるものに出合えたと思いました」
当時の第三舞台は体育会系のノリが色濃く、逃げ出す団員が相次いでいた。
「腹筋とスクワットを各100回、2kmのマラソンは日課で、女のコだから免除みたいなことはないんですよ。男女平等。そして、少しでも先輩に陳情したら叱られる。まさに、 “不適切にもほどがある!” 。
でも、なぜかそれが苦ではなかったです。理不尽をどこかで楽しんでいました」
早大卒業後も舞台で活動していた彼女は、映画やドラマの世界に進出する。なかでも印象的だったのは、『お玉・幸造夫婦です』(1994年、日本テレビ)。演出は、久世光彦氏。
「久世さんは、いいお芝居だと『真理子ちゃん』、いいお芝居ができないと『筒井』、何かがダメで自分で考えなきゃいけないときは『筒井さん』って呼び方が変わるんですよ。 “さん” づけのときは怖かった。でも、考えていい芝居ができると受け入れてくれて。それが嬉しかったのを覚えています。そうやって追い込まれて引き出される環境で育ったので、私、精神的にタフなんです」
近年は、おしとやかな母親から二面性のある怖い女性まで幅広い役を演じることが多くなってきた。
「自分とかけ離れていたり想像もつかない役を演じるのはすごくおもしろいです。もちろん、その人物になるためには、話を聞いたり、本で調べたりしなければならないことがたくさんあって大変なことも多いですが、それを超える瞬間があるというか。初めは理解できなかった台詞が、あるとき急にスッと自分のものになるんですよ。その瞬間、脳がメリッとするというか。アハ体験ですよね。一度こうなったら、役が自分の中で生きてくるんです」
筒井は世界でも注目されている。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査員賞を受賞した『淵に立つ』(2016年)や、日仏合作の主演映画『よこがお』(2019年)、第17回アジア・フィルム・アワード助演女優賞にノミネートされている『Last Shadow at First Light』(2023年)などで評価を高めている。
「不思議なんですが、言葉が違っても、お芝居では曖昧なニュアンスでさえも伝わるし、何が言いたいかわかるんです。
お芝居は、共通言語。海外の監督ともお芝居の話なら普通に盛り上がりますから。何かを作りたいと思っている人たちの間には国境はないと思います」
そうやって作り上げてきた役は、すべて自分の中に残っているという。