ライフ・マネーライフ・マネー

健康食の代表「地中海食」「DASH」を日本食にアレンジしてみよう

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.01.01 11:00 最終更新日:2023.01.01 13:47

健康食の代表「地中海食」「DASH」を日本食にアレンジしてみよう

 

 いわゆる「エビデンス」が一番堅牢な健康食は、地中海食といわれるもので、地中海沿岸の食事をいいます。その構成要素は以下のとおりです。

 

・加工をほとんど施さない、全粒の穀物や豆が主体
・毎日、生野菜たっぷり
・新鮮なフルーツ、ときに蜂蜜
・脂質の供給源としてのエクストラバージン・オリーブオイル、ナッツ、植物の種
・ほどほどに食べる魚
・少量のチーズやヨーグルト。バターやクリームは摂らない。牛乳もコーヒーに入れる分だけ
・赤い肉や加工肉は週に1回、あるいはそれ以下のみ使用
・食事のときだけ、ワインを少々、あるいはほどほどに

 

 疫学研究によると、地中海食により、心血管疾患、脳卒中、肥満、糖尿病、高血圧、ある種のがん、アレルギー疾患、アルツハイマー病やパーキンソン病の予防効果があるそうです。

 

 

 では、なぜ地中海食は体によいのか。そのメカニズムは十分に解明されていないのですが、いくつかの学説はあります。たとえば、不飽和脂肪酸の消費。飽和脂肪酸が心血管疾患を増やす一方、不飽和脂肪酸の消費は、いわゆる悪玉コレステロール(LDL、low density lipoprotein)を減らし、血管の病気の予防効果があります。

 

 地中海食と同様に、臨床医学の世界で推奨されている食事法に、「DASH」と呼ばれるものがあります。これは「高血圧を止めるための食事法アプローチ、Dietary Approaches to Stop Hypertension」の頭文字をとったものです。

 

 高血圧、といっていますが、実際には、健康のための食事、と換言しても構わないと思います。DASHによるコレステロールの低下効果なども実証されていますから。

 

 DASHの特徴は、

 

・カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、タンパク質をたくさん
・飽和脂肪酸、トランス脂肪酸を少なく
・塩分、砂糖、砂糖の入った飲料、赤い肉を少なめに
・全粒粉、魚、鶏肉(白い肉)、ナッツ

 

 とあります。こうしてみると、じつは地中海食とかなりかぶっていますね。

 

 トランス脂肪酸とは、二重結合のところがトランス型(折れ曲がったシス型ではなく、真っ直ぐになっている)の不飽和脂肪酸のことです。マーガリンのような加工食品、羊の肉などにも入っています。転じて、パンやケーキ、ドーナツ、生クリームにもトランス脂肪酸が入っています。

 

 トランス脂肪酸は、LDLと呼ばれる悪玉コレステロールを高める作用が指摘されており、過剰に摂取しないことがすすめられています。WHO(世界保健機関)とFAO(国際連合食糧農業機関)は、トランス脂肪酸を摂取カロリーの1%未満に制限することを提唱しています。

 

 欧米ではトランス脂肪酸の表示義務など、様々な規制が行なわれています。ところが、日本ではこのような規制が行なわれていません。これは、日本人が1日に摂取するトランス脂肪酸が、全カロリーの0.3~0.47%程度と極めて低く、WHOらの基準を満たしているからです。

 

■日本の食事の、DASHや地中海食との親和性

 

 DASHとか地中海食を、そのまんま日本に持ってくると、少し「違和感がある」という感じになると思います。が、よく見てみると、その「本質」は、日本にも持ってこられそうです。というか、ぼくらが普段食べている食事で、十分に地中海食やDASHの「本質」には迫れているのではないでしょうか。

 

「World Population Review」を見ると、BMI30以上の肥満(obesity)の割合は、日本はわずか4.3%です。日本よりも肥満が少ないのは、インド、ネパール、カンボジア、ベトナムなど、わずかな国しかありません。

 

 ちなみに、韓国も4.7%と「肥満」は少ないです。韓国ではBMI25以上の体重過多は増えていても、30以上の肥満はそうでもないのですね。アメリカ合衆国の「肥満」の割合は36・2%ですから、全然違います。

 

 このレポートでは、日本で肥満が少ないのは驚きではなく、それは日本の食事が魚介類や、新鮮な食材を使っており、食事の量が少なく、砂糖を加えた料理が少なく、乳脂肪分をたくさん摂っていないから、と説明されています。これが「とても健康なアプローチ(very healthy approach)」だというのです。世界的には、日本の食事はむしろ高く評価されているのです。

 

 それはともかく、DASHが日本の食事にアプライできるか、ちょっと考えてみましょう。

 

 まずは、カリウムですが、これは野菜、果物、海藻類に多く含まれます。いずれも日本で容易に手に入ります。食物繊維も同様に摂取できます。

 

 マグネシウムは、魚介類、海藻類に豊富です。これも日本ではいとも簡単に手に入ります。

 

 カルシウム。これは従来の「和食」では不足することが多いミネラルだといわれてきました。多く含まれるのは、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品です。「和食」でいえば小魚などです。

 

 でも、「日本の食事」=「和食」ではありません。どこのスーパーに行っても、牛乳、ヨーグルト、チーズは容易に手に入ります。そういえば、コロナ以降、牛乳が余り気味で消費が励行されています。日本の食事(必ずしも和食にあらず)でも、カルシウムの摂取は難しくありません。

 

 余談になりますが、牛乳は以前から、健康によいのか、悪いのかという、侃々諤々の議論が行なわれてきました。カルシウムとタンパク質の多い牛乳は、健康にプラスな側面を持ちますが、反面、カロリーの高さ、脂肪分の多さはマイナス面です。で、たくさんの臨床研究も行なわれてきました。

 

 が、たいていの侃々諤々の議論がもたらすものがそうであるように、牛乳は「善でも悪でもない」というのが結論です。ほどほどの消費は健康によく、過度の摂取は健康によくないと考えるべきでしょう。あたりまえといえばあたりまえですが、世の中の真理の多くは、案外、「あたりまえ」のなかにあったりするのです。

 

 

 以上、岩田健太郎氏の近刊『安い・美味しい・簡単 実践 健康食』(光文社新書)をもとに再構成しました。感染症内科教授でありながらファイナンシャル・プランナーの資格も持つ著者と考える、お金をかけずに美味しく楽しく健康になる方法とは?

 

●『安い・美味しい・簡単 実践 健康食』詳細はこちら

( SmartFLASH )

続きを見る

今、あなたにおすすめの記事

ライフ・マネー一覧をもっと見る