■多様性の議論
2022年はダイバーシティ(多様性)という言葉をよく耳にしました。人種や国籍、性別、年齢、障がいの有無、宗教、性的指向、価値観などさまざまな属性や指向を認め合って生きていこう、という考えが広がりつつあるのは、とてもよいことです。
しかし一方で、SNSでの投稿などで差別や偏見にあふれた、明らかに多様性を否定する投稿がたくさん見られるのもまた事実です。
れいわ新選組所属の水道橋博士参議院議員が「うつ病」をカミングアウトした際には、「議員辞職しろ」という声が多数上がりました。「メンタル疾患の患者に議員の資格なし」という差別や偏見には、恐怖すら感じます。
心身が疲弊している人たちを引きずり降ろそうとする社会と、「自分もそうなる可能性が十分にある」ことを理解して彼ら・彼女らをサポートしようとする社会の、どちらが生きやすいか? 後者であることは論をまたないでしょう。
■イーロン・マスクのTwitter改革
「テスラ」創業者のイーロン・マスク氏が10月末にTwitter社を買収するや、従業員の約半数に当たる3千700人を解雇、凍結されていたトランプ前大統領のアカウントの復活、認証済みバッジへの課金、投稿できる文字数を280字から4000字へ引き上げると明言するなど、次々に改革に着手しました。それらが2カ月弱という短期間に実現していることには驚かされます。
まさに「旧勢力」を「新勢力」が一気に駆逐していく様相を見せていますが、Twitter社自体そんなに古い企業ではありません(2006年創業)。しかし、日進月歩のネットの世界においては、すでに旧勢力と見なされているのです。
古い体質に縛られ、高齢の経営者に牛耳られて、何ひとつ改革が進まない日本企業の現状……。マスク氏のような変革者が現われないと、猛スピードで進化する世界のビジネスの状況から、日本は取り残され、沈没するしかないのではないかと危惧します。
■日本人アスリートの大活躍
サッカーW杯で日本がベスト8入りまであと一歩というところまで迫ったことは記憶に新しいでしょう。
北京2022冬季オリンピックでは、歴代最多となる18個のメダルを獲得。エンゼルス・大谷翔平選手は、規定投球回数・規定打席到達という史上初の記録を達成。
国内では東京ヤクルトスワローズの村上宗隆選手が、日本人選手最多の56本塁打達成、史上最年少(22歳)で三冠王達成。
2022年はスポーツの世界で記録的な出来事がたくさんありました。
世界の舞台で活躍する日本人のアスリートが増えてきたのには、技術的なことだけでなく、メンタルヘルスの点においても教育やサポート体制が進化したことも大きいでしょう。この流れが定着することを期待します。
■国内旅行客の復活
昨年の、私の個人的なニュースの第1位は「伊勢神宮まで自転車旅行」。約370kmを6日かけて自転車で走破するなかで、日本という国が自然豊かで非常に美しく、また非常に安全な国であるということを再発見できました。
先日は金沢に行きましたが、新幹線もホテルも満員で、観光客でとても賑わっていました。全国旅行支援の効果もあり、国内旅行に回復の兆しが見られています。
日本には素晴らしい観光名所がたくさんあるし、食べ物も美味しい。旅を通じて、日本のよさを再発見していくことの大切さを感じます。日本は、まだまだおもしろい!
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし