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【王将戦第5局】羽生九段の得意技「横歩取り」が炸裂 ファン歓喜でTwitterトレンド入りする事態に

ライフ・マネー 投稿日:2023.02.25 18:01FLASH編集部

【王将戦第5局】羽生九段の得意技「横歩取り」が炸裂 ファン歓喜でTwitterトレンド入りする事態に

後手番で“ブレイク”を狙う羽生善治九段(写真提供/日本将棋連盟)

 

 藤井聡太王将(五冠)に羽生善治九段が挑戦する、第72期ALSOK杯王将戦七番勝負。その第5局が2月25日、島根県大田(おおだ)市で始まった。

 

 ここまでは両者ともに2勝2敗。わずかに有利な先手番を互いに「キープ」しての星取りだ。

 

 タイトル戦の番勝負では、先手と後手は交互に入れ替わる。本局では藤井が先手だ。

 

 

 藤井の2022年度先手番成績は、驚異の29勝1敗。現在まで26連勝中だ。羽生が18歳から19歳のときに作った先手番28連勝という大記録に迫りつつある。

 

 現在、無敵に近い藤井の先手番を、後手を持った羽生がどう「ブレイク」するか。ここが今期王将戦の大きな見どころだ。

 

 本局で羽生が用意していたのは「横歩取り」だった。この七番勝負でも、どこかで出るだろうと思われた、羽生が後手を持ったときの得意戦法で、羽生の側からいえば「横歩取らせ」となる。

 

 横歩取りは、江戸時代の昔からある戦型だ。先手は飛車を縦に動かして、2筋の歩を交換する。そのあと、飛車を左横に動かすモーションで、相手側の3筋の歩を取る。これが横歩取りだ。

 

 先手は1歩を得するという大きなメリットがある。一方、先手は飛車を多く動かし、さらにその飛車を元に戻そうとすればさらに手がかかるため「手損(てぞん)」になるデメリットもある。

 

 横歩取りは「歩得」の先手がいいのか、それとも「手得」の後手がいいのかは、将棋界200年来のテーマだ。その長い変遷について一言で触れることはできないが、最近では先手番のほうに「青野流(青野照市九段の名にちなむ)」という有力な対策が現れるなど、一般的には、先手側に分があると見られている。強くなったAIもまた、先手有利の数値を示している。

 

 戦法にも、はやりすたりのトレンドがある。現在は後手を持って横歩取りに誘導する棋士は少なくなった。そうした情勢のなかで、羽生は後手番側の研究を深め、結果を残している数少ない棋士だ。王将挑戦権を争うリーグでは、渡辺明名人に横歩を取らせて勝っている。

 

 横歩取りは後手が誘導して、先手に横歩を「取ってもらう」ところから始まる。後手側が十分に研究しているところに、わざわざ飛び込んでいくのは損だと思えば、先手側は別に横歩は取らなくてもいい。

 

 藤井は、将棋界の王道を歩む棋士だ。相手からの注文を避けたことはほとんどない。15手め。堂々と横歩を取って、戦型は横歩取りに確定した。この戦型を見たいと思っていたファンも多いだろう。やはりTwitterでは、「横歩取り」がトレンド入りした。

 

 進んで局面は大駒の飛車、次いで角がいずれも交換される、激しい順へと進む。

 

 藤井は先手番を持てば大半の場合、わずかな利を保ち、そのまま勝利へとつなげる。だからこそ、先手番で26連勝しているわけだ。

 

 しかし本局。41手め、藤井が2時間の長考の末、中段に桂を跳ねた手によって、AIが示す数値は、わずかに羽生よしへと推移した。羽生もまた、ここは勝負どころと見たか、長考に沈む。1日めの現段階では、もちろん、まだまだ勝負の行方はまだわからない。

 

 王将戦七番勝負の持ち時間は各8時間の2日制。勝負が決まるのはおそらく、明日2日めの夕方から夜にかけて。言うまでもないが、七番勝負の天王山ともいえるこの第5局を制した側が、シリーズ制覇に大きく近づく。勝利を収めるのは、果たしてどちらだろうか。

 

(文・相川清英)

( SmartFLASH )

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