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子供の“夏風邪”が治らない!医師・薬剤師が嘆く深刻な抗生剤不足「入手できたら『ラッキーでしたね』と言われることも」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2024.07.06 14:00 最終更新日:2024.07.06 21:01
「治療できるかどうかは運次第……。こんなことでいいのでしょうか」
とぼやくのは、都内薬局に勤務する薬剤師だ。
“災害級”と言われるほどの熱波に襲われた日本列島。夏の訪れとともに、いわゆる“夏風邪”といわれる溶連菌感染症が広がっている。
「溶連菌感染症はおもに子供に多く、『A群溶血性レンサ球菌』に感染して発熱やのどの強い痛みが起きます。基本的な治療方法は、ペニシリン系抗生剤やマクロライド系抗生剤を10日間服用することになっています」(前出・薬剤師)
ところが冒頭のように、全国的な抗生剤不足で、各地の医療機関では悲鳴が上がっているという。
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Xにも抗生剤に関するツイートが多く投稿されている。
《抗生剤が品薄らしく、これから往復1時間かけて在庫のある薬局へ行くことに…》
《朝一で病院に行ったものの貰いたい抗生剤が品薄らしく薬局を3件たらい回しにされたあげく最終的に隣駅に辿り着いた》
《処方された抗生剤が品薄で、一件目の薬局には無く、2件目にFAXしてくださって、そちらに向かいました》
実際、麻布十番ジャガークリニック院長・木下博勝医師も抗生剤不足をこう嘆く。
「私はもちろん、溶連菌に感染した患者さんに対し、ペニシリン系の抗生剤を7〜10日分処方するのですが、薬局に薬が無いんですよ。さらにペニシリンアレルギーがある患者さんの場合、別の抗生剤を選ぶ必要があるのですが、とくに小さいお子さんの場合、在庫のある薬の選択肢が少なく、苦労しています。
ほかの種類の抗生剤も不足し始めているので、このままだと必要な治療ができなくなるのではという不安を感じています」
前出の薬剤師はこう語る。
「薬の卸業者に発注しても、“出荷調整”や“限定出荷”という表示になっているんです。
“限定出荷”の場合は、普段の使用量に応じて最小限の入荷がありますが、それもごくわずか。結局、直接電話してなんとか交渉するのですが『今、1箱、入荷したから渡せます。ラッキーでしたね』なんて言われることも。こんな状態でいいわけがないですよ」
また、くぼたクリニック松戸五香の窪田徹矢医師は、抗生剤の不足は溶連菌だけでなく、“ある重病”にも影響を与えるという。
「ペニシリン系抗生剤の不足が解消されなければ、増加している梅毒患者の治療にも影響がでるでしょうね。治療ができないと、さらに感染が広がるリスクもありますし、最悪のケースでは死を招く恐れもあります」
いったい、なぜこれほど抗生剤が不足しているのか。製薬業界関係者はこう語る。
「いろんな要因が重なってしまいました。薬の元となる原料を製造する中国企業が供給を停止したことや、抗生剤の原薬を製造しているヨーロッパの大手製薬会社で異物混入事件が発生し稼働が停止していたこと。そもそも、コロナ禍が明けて濃厚接触機会が増えたことで、ウイルスや細菌による感染症が急増しており、抗生剤の需要が国内で高まっていることなど、非常に多くの要素が絡んでいます」
それにしたって、薬不足で死にたくない。
( SmartFLASH )