「住宅ローンの借り換えで得するかどうかには、目安があります。ポイントは、『金利差が1%以上出る』『残高が1000万円以上ある』『返済期間が10年以上ある』の3つです」
こう語るのは、日本ファイナンシャルプランニング・不動産事業部の田中大輔氏だ。田中氏が指摘する3つのポイントに該当していれば、いま住宅ローンの借り換えをして得する可能性は大だ。
「人それぞれ条件が違いますから、これらはあくまで目安と考えてください。借り換えを考えているなら、専門家に相談してみるのがおすすめです」(田中氏、以下同)
住宅ローンアドバイザーの資格を持つ田中氏に監修を依頼し、実際に住宅ローンを返済しているサラリーマンの借り換えを、シミュレーションしてみることにした。
借り換え条件は一律で設定。「フラット35」に、金利は1.39%に設定。借り換えの際に必要な融資手数料は、融資額の2.16%。登記費用35万円、収入印紙代2万200円とし、これらを借入残高に上乗せして借り換えることにする。
「借り換え不要」と判定されたのは、50代会社員・Xさんと40代のYさんだ。
「どちらも変動金利型ローンを利用されており、現時点での金利は十分低いので、借り換えによるメリットは大きくありません」
X氏は2007年にマンション(3LDK/80平米)を4430万円で購入し、2042年まで変動金利で支払い予定。現在の残高3363万円に、融資手数料・登記費用など約112万円を加え、借入金額を3475万円という条件に設定した。
「Xさんの場合、現在の総支払額は3861万円になっていますが、あくまで今の金利での計算。ただし、今後金利が変動して上がれば総支払額も増えるのです。
手数料を含めて250万円程度の違いで固定金利に借り換えられるなら、今のうちに検討される価値は十分にあるといえます。もちろんYさんにも同じことがいえます」
●東京都杉並区在住・X氏の場合、借り換え不要だが…
【借り換え前】
金利=1.175%
月々の支払い=13万4000円
総支払額=3861万円
【借り換え後】
金利=1.39%(+0.215%)
月々の支払い=14万2000円(+8000円)
総支払額=4112万円(+251万円)
Y氏は、2007年に一戸建て住宅(3LDK/80平米)を5300万円で購入し、2042年まで変動金利で支払い予定。現在の残高2658万円に、融資手数料・登記費用など約96万円を加え、借入金額は2754万円という条件で設定した。
じつはY氏、購入時にはもっと高い金利(3%以上)でローンを組んでいたという。5年前に住宅ローンの金利が下がっていることを知り、借り換えたのが大正解だった。
「銀行からわざわざ『金利が下がったので借り換えませんか』などと言ってくることは絶対にありません。自ら情報を得て動かなくてはいけないのです」
●東京都世田谷区在住・Y氏の場合、借り換え不要だが…
【借り換え前】
金利=1.075%
月々の支払い=10万5000円
総支払額=3016万円
【借り換え後】
金利=1.39%(+0.315%)
月々の支払い=11万2000円(-2万7000円)
総支払額=3261万円(+245万円)
ローンにおける金利の重要性を示してきたが、今後の金利はどうなるのか。
「プロの経済評論家でも先のことはわかりません。ただ、金利は下がりきっている状態で、今より下がるとは考えにくい。今後は上がっていく可能性のほうが高いと言わざるをえません」
安倍晋三首相の総裁任期は最長で2021年まで。そこでアベノミクスは終了し、以後は金利が上昇するとみる向きも強い。
また、1年後の2019年10月には消費増税が予定されている。金利への影響もさることながら、家計が圧迫されることは間違いない。やはり、借り換えるなら今、は間違いないようだ。
もちろん、借り換えは簡単ではない。書類の準備や審査など、もう一度住宅ローンを契約することを考えただけでも……という人は多いだろう。しかし、今こそが絶好機。数百万円のメリットがあるとなれば、ぜひ検討してみるべきだ。
※大手銀行のローン金利引き上げ表について、2018年9月に適用された固定型金利の最優遇金利。カッコ内は8月適用分との比較
(週刊FLASH 2018年10月16・23日合併号)