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岡本太郎からポジティブなエネルギーをもらおう!壮大でアヴァンギャルドな回顧展/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

芸能・女子アナFLASH編集部
記事投稿日:2022.10.29 16:00 最終更新日:2022.10.29 16:00

岡本太郎からポジティブなエネルギーをもらおう!壮大でアヴァンギャルドな回顧展/女子アナ横井弘海の「エンタメ時間」

50分の1の「太陽の塔」1970年、川崎市岡本太郎美術館/写真・岡本太郎記念現代芸術振興財団

 

 東京・上野の東京都美術館で「展覧会 岡本太郎」が開催されています(12月28日まで)。

 

 絵画、立体、パブリックアートから生活用品まで、強烈なインパクトのある作品を次々と生み出し、「芸術は爆発だ!」という流行語でも知られる芸術家・岡本太郎(1911- 1996)。

 

 その全貌を紹介する過去最大規模の回顧展で、大阪に続き、東京、名古屋(2023年1月14日より愛知県美術館)の3会場で、それぞれ構成を変えながら開催されます。

 

 

 東京展では、制作年代にはとらわれず、岡本太郎のエッセンスを詰め込んだ濃密な作品空間が最初に用意され、入場者を岡本太郎ワールドに誘います。

 

 その後は時代を追って「岡本太郎誕生―パリ時代」「人間の根源―呪力の魔力」「ふたつの太陽―《太陽の塔》と《明日の神話》」など6章立てで構成されています。

 

 岡本太郎の作品をよく知っているという人は少ないかもしれませんが、かつてのプロ野球球団「大阪近鉄バファローズ」の猛牛のマークも手掛けています。そして、なにより有名なのが「太陽の塔」と「明日の神話」でしょう。

 

大阪万博のシンボル「太陽の塔」

 

 まずは1970年の大阪万博のシンボル「太陽の塔」。万博のときは、地上30mの部分に大屋根がかけられ、その屋根を突き抜けるような形で、高さ70mの太陽の塔が立っていました。

 

 閉幕後、屋根は取り壊され、このモニュメントだけが永久保存されました。2020年には国の登録有形文化財に登録されています。

 

 万博のテーマは「人類の進歩と調和」でした。関連本には「人類は進歩なんかしていない。むしろ科学技術の進歩に対して人間の心は空しくなっている」とあり、仕事を引き受けたものの、岡本太郎自身は、万博のテーマそのものを否定していたと言われます。

 

 そのことがよくわかるのが、回顧展に出品された彫刻作品「ノン」です。万博では「太陽の塔」の地下に展示されていました。「ノン=否定」のポーズをとる像について、説明には「世界各地から集められた仮面など前近代的な造形とともに並べ、万博の背後にある近代的な思考法をはねつけようとしたのだろう」と書かれています。

 

 そして、「太陽の塔」そのものが、万博のテーマと真逆の価値観といえそうです。人間の太古からの根源的なエネルギーを象徴させ、さらに塔の内部には高さ41mの「生命の樹」がそびえています。

 

 これは「太陽の塔の内臓」と位置づけられたもので、耐震補強と修復工事をおこなった後、2018年から半世紀ぶりに一般公開が始まりました。

 

「生命の樹」には、単細胞生物から旧石器時代のヒトまで生物の進化をたどるように33種類のいきものが張りつけられ、頂に向け、命のエネルギーを噴き上げた姿が表現されています。

 

■渋谷駅にある「明日の神話」

 

「明日の神話」は、渋谷駅コンコースにあり、岡本太郎作品であることは色使いで気づいていましたが、壁画の意味は今回初めて知りました。

 

 メキシコの実業家の依頼を受け、「太陽の塔」の作成と並行して描かれた幅30mの巨大壁画です。原爆のきのこ雲やビキニ環礁で被爆した「第五福竜丸」などの出来事をモチーフに、人類の「進歩」に内在する負の側面を見据え、それを乗り越えていく未来への期待が込められています。

 

 メキシコで不遇な運命をたどり、数十年も資材置き場に放置されていたのが、奇跡的に発見されて日本に戻ってきました。

 

 この「明日の神話」もそうですが、パブリックアートという言葉がない時代から、岡本太郎は公共の場所に多くの作品を残しました。パブリックアートは消える運命にある芸術でもあり、この回顧展では、すでにその場所には存在しない作品も紹介されています。

 

「芸術は大衆のものである」という信念から、自身の作品はほとんど売らなかったといいます。一方、自分が作った後の作品の取り壊しや保存にはとやかく言わなかったとか。それは、つねに未来志向だったからでしょう。

 

 ものごとの本質をとらえる天才だった岡本太郎は、「何が本職なのか?」と聞かれ、こう答えました。

 

「人間。全存在として猛烈に生きる人間」

 

 壮大でアヴァンギャルドな世界観、天賦の才には驚愕します。作品を見れば、きっとポジティブなエネルギーがもらえるはずです。

 

※掲載写真は許可を取って撮影しています。
※写真・岡本太郎記念現代芸術振興財団

 

横井弘海(よこいひろみ)
東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ東京パーソナリティ室(現アナウンス室)所属を経てフリー。アナウンサー時代に培った経験を活かし、アスリートや企業人、外交官などのインタビュー、司会、講演、執筆活動を続ける。旅行好きで、訪問国は70カ国以上。著書に『大使夫人』(朝日新聞社)

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