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肉食の時代はもう終わり? 昆虫食・培養肉の未来をジャーナリストに聞いた/女子アナ日下千帆の「私にだけ聞かせて」

芸能・女子アナ 投稿日:2023.02.05 16:00FLASH編集部

肉食の時代はもう終わり? 昆虫食・培養肉の未来をジャーナリストに聞いた/女子アナ日下千帆の「私にだけ聞かせて」

森さん(左)と日下アナ

 

 みなさんは、肉をどのくらいの頻度で食べていますか?

 

 2022年9月、河野太郎消費者担当大臣が東京大学でおこなわれている「培養肉」の研究現場を視察し、「非常に将来性がある。地球環境を考えるといろいろな面で大事な技術なのではないか」とコメントされました。

 

 実は現在、世界的に肉食離れが進んでいるそうです。SDGs の観点から、資源の大量消費につながる家畜の飼養に批判的な意見が集まっているほか、アニマルライツ(動物は財産や資源として扱われない権利があり、人間はそれを認める道徳的な義務があるという考え方)やアニマルウェルフェア(家畜のストレスを減らすため、本来の行動欲求が満たされるよう飼育環境を整えること)が実践されていないという観点から、肉食を拒否する人も増えています。

 

 

 日本でも、いくつかのハンバーガーショップで、大豆ミートで作られたハンバーガーが売られるようになりました。こちらは、美容と健康に敏感な女性たちの支持を集めているようです。

 

 私たちの食は、今後どうなっていくのでしょうか。『ヴィーガン探訪』(角川新書)を書かれた森映子さんにお話を伺いました。ヴィーガンとは、動物性の食材をいっさい食べない人たちを指しています。

 

 森さんは、京都出身。上智大学卒業後、1991年に時事通信に入社。現在は、文化特信部デスク・編集委員を務め、著書には『犬が殺される 動物実験の闇を探る』(同時代社)があります。

 

――世界的に肉食離れは進んでいるのでしょうか?

 

「日本ではまだ興味が薄いようですが、欧米の若者の間では確実にヴィーガンが増えています。彼らは、地球環境問題に関して、上の世代の “ツケ” を払わされているという意識をもっています。

 

 また、海外では、アニマルウェルフェアやアニマルライツに関する取り組みも進んでいるため、ヴィーガンになる人が増えているんです。

 

 有名人では、2020年にグラミー賞5部門を受賞したシンガーソングライターのビリー・アイリッシュ、映画『ブラックスワン』でアカデミー賞主演女優賞に輝いた俳優のナタリー・ポートマンなどが、ヴィーガンを公言しています」

 

――アニマルウェルフェアに関する取材をされて、森さんご自身がショックを受けたことはありましたか?

 

「はい、身動きできないほど狭いスペースでの採卵鶏のケージ飼いなど、集約型畜産のひどい側面にショックを受けました。生産効率が最優先され、動物たちは、感情や感覚を持つ生き物としてではなく、工業製品のように扱われています。

 

 たとえば、養豚場の母豚が、排せつや人工授精の管理がしやすいという理由で、1年に2回出産するとして、計7カ月ほども妊娠ストールという体の向きを変えられない狭いオリに閉じ込められているのです。私は、母豚の写真入りで問題提起の記事を書いたこともあります。

 

 ほかにも、明かりの差し込まない日本の鶏舎で、ケージにぎゅうぎゅうに押し込められた雌鶏の腹部が異様に膨らんでいたり、内臓が飛び出たりしている状態で放置されている動画を見たことがあります。数万羽も収容する鶏舎では、毎朝、死体を取り除くところから仕事が始まる有様です。

 

 また、ある大手加工肉のメーカーで、病気などで弱った処分対象の子豚をコンクリートの床に叩きつけて殺している動画が暴露され、動物愛護管理法の傷害・虐待罪に相当するとして宮崎県警に告発されました。

 

 畜産動物を農場内で処分する場合は、アニマルウェルフェアの殺処分指針を参考にすることが求められますが、法的効力もなく、生産者がはたして指針の内容を知っているのか、どの程度守られているのかさえ不明なのです」

 

――動物たちの扱われ方を知ると、若者の肉食離れも納得できます。代わりのたんぱく質として注目されているのか、最近、昆虫食の話題も多く聞かれるようになりましたね。

 

「2010年代半ばから、欧米では昆虫食の市場に参入するベンチャー企業が増加しているそうです。日本能率協会総合研究所の調べでは、2025年度の世界の昆虫食市場は約1000億円となる見込みです。

 

 昆虫食に抵抗がある方も多いと思いますが、このまま世界の人口が増えると、2022年の80億人から2050年には104億人になると予想されています。人間の食べる肉の量も1.8倍に増えるとされているため、食糧不足は深刻な課題です」

 

――森さんは培養肉の取材もされたそうですが、試食されたこともありますか?

 

「2019年3月、東京大学と日清食品が『培養ステーキ肉』の小さな塊をつくることに成功したと発表があり、それから継続して取材しております。

 

 でも、残念ながら、試食したことはありません。研究者の話によると、培養に生理食塩水を使用しているため、味はしょっぱく、噛んでいるうちに海産物に近いうま味が出てきたそうです。

 

 東大の手法は、牛肉から採取した細胞を体外で増殖させて3次元の組織を作るものです。一方、大阪大学と島津製作所などの研究では、3Dプリンターで培養肉を “立体印刷” するそうです。

 

 代替肉の研究は、欧米などで積極的な投資や助成金があり、すごい勢いで進んでいます」

 

 弘前大学と日清食品が2019年におこなったアンケート(20~59歳の男女2000人)では、『培養肉』について聞いたことがあるという人は27%しかいませんでした。しかし、動物愛護に関する情報を伝えたあとでアンケートを取ると、 培養肉を試しに食べてみたいという人は、24.4%から36.8%まで増えたのです。

 

 動物愛護、つまり家畜を殺す数を減らせるメリットを知ったうえで培養肉を『食べたい』と答えた人の割合が大きく伸びたことについては、動物愛護への関心がけっこう高いんだな、と改めて思いました」

 

 一方、アンケートの自由記述では「安全性」に対する関心や不安が最も多かったそうです。未知の食べ物である培養肉に対し、普通の人が心配するのも当然かもしれません。食の未来には、考えるべき課題が多いようです。

 

■食から健康になるための3カ条

 

(1)バランスよく食べる
 雑穀やナッツ類も摂りましょう
(2)アニマルウェルフェアを意識して食品を選ぶ
 平飼い・放牧で育てられた雌鶏が産んだ卵や、抗生物質を使っていないお肉の方が健康にもよい
(3)塩分と砂糖の摂り過ぎに注意
 漬物などは塩分が高めなので要注意

日下千帆

1968年、東京都生まれ。1991年、テレビ朝日に入社。アナウンサーとして『ANNニュース』『OH!エルくらぶ』『邦子がタッチ』など報道からバラエティまで全ジャンルの番組を担当。1997年退社し、フリーアナウンサーのほか、企業・大学の研修講師として活躍。東京タクシーセンターで外国人旅客英語接遇研修を担当するほか、supercareer.jpで個人向け講座も

( SmartFLASH )

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