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【統一教会と戦う弁護士1】自宅住所の書かれたビラを10万枚以上も撒かれて…山口広氏が明かす教会の“異質”さ
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.09.07 06:00 最終更新日:2022.09.07 06:00
統一教会の問題がメディアで連日取り上げられるようになり、教団の問題があまり顧みられなくなった“空白の30年”においても、なお教団と戦ってきた男たちにようやく光が当たっている。
前号では、ジャーナリストの鈴木エイト氏と有田芳生氏(70)の戦いの歴史を紹介したが、今回、本誌は統一教会と対峙してきた弁護士を取材した。不法行為を糾弾しつづける彼らの根底には、徹底したプロ意識と温かな人間性が垣間見える。
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「週刊思想新聞号外」と題されたビラの大見出しは「暗闘する左翼弁護士」。当時37歳の山口広弁護士の名前と顔が載っている。発行元は国際勝共連合。統一教会の開祖・文鮮明氏が日本で創設した反共主義団体だ。
1987年2月、山口弁護士らが霊感商法対策弁護士連絡会を立ち上げた直後から、統一教会の“攻撃”は始まった。
「霊感商法の被害者相談会を開いたことがメディアで報道されると、ビラが撒かれるようになったんです。ビラには僕の生年月日や自宅住所が書かれていて、自宅周辺や職場に向かう道中でも配られていましたよ。ビラは全部で10万枚以上も撒かれていたと、後に元信者から聞きました」
同時に、自宅への無言電話もあったという。
「一日200~300件の迷惑電話が3週間続いたんです。ほとんどは無言でしたが、なかには『私は壷を授かって喜んでいるのになぜ悪口を言うんだ』などと、延々と話す者もいた。元信者の話では、10円玉を数十枚渡されて、指定された番号にかけ続けろと指示されていたそうです。刑事告訴も考えましたが、『朝日新聞』が迷惑行為を記事にすると、翌日からスパッと止まりました(笑)」
統一教会問題と関わるようになったのは、霊感商法の被害者の救済活動を始めた’86年10月のこと。被害者の相談に乗るうちに、放っておけなくなったのだという。
「『自分を変えたい』『今のままではダメだ』という向上心のある人、そして家族思いの女性が引っかかりやすい。そして、騙された後で『私がバカでした』と、自分を責めてしまう。当時は、大半の弁護士が『納得のうえで買ったのならどうしようもない』と、相談を断わっていたんです。でも、弁護士が行き場のない被害者を放っておくわけにはいかない」
そしてみえてきたのは、統一教会の異質さだった。
「統一教会と関わるようになってからさまざまな宗教書を読み込み、優れた宗教家たちと語り合うなかで、統一教会の異質さが深く理解できました。この宗教は、人間を食い物にする。信者の勧誘は、カネを集める手段にすぎない。宗教は人間に必要なものですが、それを金儲けの道具にすることは絶対に許せません」
いまも、身の危険を感じることは日常茶飯事だという。
「電車に乗るときは、ホームの端には立たないようにしています。それと、活動は絶対に一人ではおこなわない。オウム真理教に殺された坂本堤弁護士のことは、他人事とは思えません」
だが、山口弁護士はいささかも怯むことはない。
「攻撃を受けると、ますます引けなくなる性分なんですよ。『絶対に許せん!』と熱くなってきてね。その思いで36年間、統一教会に関わってきた。いま73歳だから、ちょうど人生の半分を懸けたことになるが、これからが正念場です」
やまぐちひろし
1949年6月 福岡県久留米市生まれ 東京大学法学部卒業。1978年弁護士登録。1987年5月 全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長。日弁連消費者問題対策委員会委員長、内閣府消費者委員会委員などを歴任