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トルコ・シリアで4.6万人が死亡…活断層2000カ所を抱える日本で「内陸型直下地震」起きるのか、専門家に聞く

社会・政治 投稿日:2023.02.24 11:00FLASH編集部

トルコ・シリアで4.6万人が死亡…活断層2000カ所を抱える日本で「内陸型直下地震」起きるのか、専門家に聞く

トルコ南部ハタイ県の建物倒壊現場でたたずむ人々(写真・時事通信)

 

 トルコ南部のシリア国境付近で、2月6日に大地震が発生してからまもなく3週間となる。

 

 生存率が急速に下がるといわれている「発生から72時間」以降も “奇跡の救出” が相次いだが、トルコではとくに被害が大きかった一部の地域を除き、捜索活動が終了している。

 

 これまでに死亡が確認されたのは、トルコとシリアを合わせて4万6000人を超えた。

 

 

「トルコには北アナトリア断層と東アナトリア断層があり、この2つの非常に長い断層で、多くの地震が起きてきました。イスタンブールのすぐ南の海岸あたりから、トルコの北部の陸地を東西に横切り、東の国境まで抜けているのが北アナトリア断層です」

 

 トルコの断層についてこう話すのは、東北大学災害科学国際研究所の遠田晋次教授(地震地質学)だ。

 

 北アナトリア断層ではこれまで、1939年に起きたエルジンジャン地震で3万人以上の犠牲者が出ており、最近でも1999年に起きたコジャエリ地震で、死者・行方不明者が合わせて2万人以上にのぼっている。

 

「今回はこの北アナトリア断層ではなく、近年それほど大きな地震が起きていなかった東アナトリア断層の西側部分で、マグニチュード(M)7.8の地震が起きました。断層は横にずれるタイプと縦にずれるタイプがありますが、今回は横にずれるタイプです。

 

 日本では、2016年にM7.0を記録した熊本地震が、横ずれの活断層型の直下型地震でしたが、今回のトルコ地震の実際の揺れは、熊本地震の15倍ほどの大きさに相当します。とてもつもなく大きな、内陸型の直下地震だった、ということです」

 

 日本でも、こうした内陸での地震が起きる可能性はあるのか。

 

「数え方にもよりますが、日本列島の内陸には2000ぐらいの活断層があるといわれています。ひとつひとつの活断層は、数千年や数万年に1回しか地震を起こしませんが、2000もあれば、どこかしらで起こりますよね。

 

 最近の内陸型の直下地震だと熊本地震があげられますが、そういった震源が、日本列島の直下にはたくさんあるということです。

 

 地震の大きさは、動いた断層の長さに比例しますが、今回のトルコの地震では300kmほどの断層が動いています。

 

 熊本地震のときに動いた布田川(ふたがわ)断層の長さが、30kmほど。1891年に起きた、明治以降で最大の内陸地震といわれる濃尾地震で、断層の動きは約80kmでした。

 

 日本のなかでも、非常に長い断層といわれる糸魚川静岡構造線は約160km。四国を横断する中央構造線はところどころ切れ目がありますが、400kmほどあります。現在、日本政府はこの中央構造線の400kmが一度に動くとは想定していませんが、トルコではその距離の断層が、そのまま動いたんです」

 

 あらためて、トルコの地震の大きさがわかるだろう。ただ、被害の大小に影響を与えるのは、単なる揺れの大きさだけではない。

 

「日本でも首都直下地震の危険性が指摘されていますが、断層の真上に人口密集地があったケースとしては、1995年に起きた阪神・淡路大震災が有名です。

 

 トルコ地震の被災地域は古い建物が多く、耐震基準を満たしていない建物の多くが倒壊したといわれます。日本は耐震基準が厳しくなり、新しい建物も増えているので、トルコほどの建物被害は出ないとは思います。

 

 ただ、注意しなくてはいけないのは、トルコには木造建築がないため、火災が起きていないんです。日本は頑丈な建物が多いとはいえ、木造建築も多い。もちろん地震が起こる時間帯にもよりますが、日本ではトルコよりも火災の危険性が高いと考えるべきです。

 

 また、内陸地震の場合、『緊急地震速報』が鳴ったとしても、揺れが始まるまでに避難する時間はないとされています。

 

 というのも、このシステムは気象庁の地震検知ネットワークが、揺れを検知してから計算をおこない、揺れの範囲などを推定して、情報を送ってくるものです。震源が海など、私たちから距離があれば間に合いますが、直下型の地震は震源が真下ですから、間に合いません。

 

 身構えるまでに数秒しかないので、つねに大地震に直面する可能性は頭に入れておいたほうがいいでしょう」

 

 あなたのなかの「備えよ、常に」の意識が、生存確率を上げるかもしれない。

( SmartFLASH )

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