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「人影の石」で日本人の心を震わせた!ゼレンスキー大統領、世界を動かした「5つのスピーチ」すべての演説が過去のものに

社会・政治 投稿日:2023.05.30 06:00FLASH編集部

「人影の石」で日本人の心を震わせた!ゼレンスキー大統領、世界を動かした「5つのスピーチ」すべての演説が過去のものに

広島平和記念公園で献花をおこなったゼレンスキー。ロシアの “核の恫喝” を非難した(写真・時事通信)

 

「私は『人影の石』になりかねなかった国から来ました」

 

 5月21日に閉幕したG7広島サミット。目玉は、ウクライナから駆けつけたゼレンスキー大統領だった。原爆資料館を訪れ、その直後に日本人の心を震わせる演説をおこなったのだ。

 

「戦争の “勝利条件” がはっきりしたことが、サミットの収穫です。ロシアが不当に占領する地域を解放することが目標であると、明確になりました。また、F16戦闘機の供与をめぐっても進展がありましたが、この戦闘機は、使い方によってはゲームチェンジャーになり得ます」(防衛省防衛研究所・高橋杉雄氏)

 

 

 世界各国で、ロシアの非道を告発し、兵器の供与や支援を取りつける――。まさにゼレンスキーは、話術で祖国を救おうとしている。

 

「演説術に関する教科書をすべて過去のものにする、素晴らしいスピーチですよ」

 

 こう絶賛するのは、多くの経営者や著名人のスピーチライターを務める蔭山洋介氏だ。

 

「ゼレンスキーさんのスピーチで優れている点は、自分の言葉ではなく、相手がわかる言葉を使うことです。今回の『人影の石』も、まさに日本人ならピンとくるワードです。

 

 ほかにも、イギリスではシェイクスピアのハムレットの一節『生きるべきか、死ぬべきか』を引用して、聴衆を引き込んでいます。日本の右派からは反発がありましたが、米国で『パールハーバー』を出したのも同じ理屈でしょう」(同前)

 

 第2のポイントは「聴衆の価値観を尊重する」ことだという。

 

「たとえば、カナダでの演説に出てきたCNタワーは、日本の東京タワーのような存在です。愛着のある建物がある日、攻撃されたら……と、相手の価値観を尊重し、訴えかけるのです。2022年の米国議会の演説でも、リンカーンの言葉を引用し、民主主義の価値を訴えるものでした」(同前)

 

 だが、ゼレンスキーのスピーチの特徴は、なによりも “型破り” なことだという。

 

「服装もある意味マナー違反ですし、スピーチをする際は棒立ちで、淡々と語るんです。彼は元芸人なので、もっと抑揚をつけたり、注目を集める話し方をできるはず。しかし、あえてやっていないのだと思います。

 

 これまで、オンラインで何度も演説をおこなってきましたが、まさに『オンラインスピーチ』という新たなジャンルを切り開いたのです。練りに練った力強い言葉を用意して、その言葉だけが伝わるように、よけいなことはしない。

 

 マイクのない時代の演説術が、演劇のように語ることだったように、彼は淡々と語ることで説得力を生み出しているのです」(同前)

 

 蔭山氏が絶賛するゼレンスキ―感動のスピーチを以下に5つ紹介する。

 

■2022年3月16日 米国議会

 

「パールハーバーを思い出してください。1941年12月7日の恐ろしい朝。あなたたちを攻撃してきた飛行機のせいで、空が真っ黒になったとき。それをただ思い出してください。9月11日を思い出してください。2001年の恐ろしい日、悪があなたの街を戦場に変えようとしたとき。罪のない人々が攻撃されたとき。空から攻撃されたのです。誰も予想できなかった形で。あなた方が止めることができなかったように、私たちの領土は、毎日これを経験しているのです。さまざまなウクライナの都市で、毎晩、3週間も」

 

■2022年12月21日 米国議会

 

「この戦いは、領土のためだけではありません。この戦いは、ウクライナ人の生命や自由、安全のためだけでも、ロシアが征服を企てているほかの国々を守るためだけでもありません。私たちの子供や孫、そしてその子孫が、これからどんな世界に生きていくかを決める戦いなのです。ウクライナとアメリカ、すべての人々にとって、民主主義が達成されるかどうかを決める戦いなのです」

 

■2022年3月8日 英国議会

 

「『生きるべきか、死ぬべきか?』。あなた方はこのシェイクスピアの言葉をよく知っていると思います。13日前は、まだこの質問がウクライナに提起される可能性がありました。しかし今は違います。返事は明らかに『生きるべき』です。明らかに、自由であるべきです」

 

■2022年3月15日 カナダ議会

 

「想像できますか? トロントの有名なCNタワーがロシアの爆弾で攻撃されることを。もちろん、私は誰にもこんなことを望んでいませんが、これが、私たちの生きる現実です。ハリコフ市にはホロコーストの犠牲者が埋葬されている自由広場があり、今日、ロシア人によって爆撃されました。想像してみてください。私たちの建物や記念施設が爆撃されているのと同じように、カナダの施設が爆撃を受けることを。数多の家族が亡くなりました。すべての夜が、恐ろしい夜です」

 

■2023年5月21日 G7広島サミット

 

「ウクライナは影だけになっていたかもしれません。全土(の人々)が、影だけに。けれども、ウクライナの人々は果てしなく勇敢で、自由を愛しています。私たちは生き続けていきます。自由に生きていくのです。敵が使っているのは核兵器ではありませんが、ロシアの爆弾や砲撃によって焼き尽くされ、廃虚となった私たちの街は、私が今ここ(原爆資料館)で見てきたばかりのものと似ています」

 

 プーチンにはけっして語れない言葉だ。

 

写真・久保貴弘、時事通信

( 週刊FLASH 2023年6月13日号 )

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