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忖度するテレビはもはや報道機関やない!“建前マスコミ” に騙されるな【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第6回】
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.06.16 06:00 最終更新日:2023.06.16 06:00
ジャニーズ事務所の「性加害問題」が、なかなか収まりません。6月5日には、『news zero』(日本テレビ系)で、嵐の櫻井翔くんがこの問題に関し、初めて発言したことも耳目を集めています。
そもそも、この問題は「週刊文春」が1999年に報じて裁判にまでなったのに、英BBCが今年3月に取り上げるまでは、日本の大手マスコミは腫れ物にふれるような感じで、黙殺を続けてきました。
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今回のジャニーズ問題は、今のマスコミが抱える悪弊の典型やと思うから、見過ごすわけにはいかんでしょう。
じつは、私はマスコミと縁が深い。大学を出て、最初に入ったのがNHKで、その後テレビ朝日でも仕事をしました。20代のころは、マスコミセミナーの専任講師をしていて、当時の教え子の多くが新聞、テレビ、出版業界に入っています。だからこそ、マスコミへの期待は大きいし、そのぶん、失望も大きい。
マスコミにいちばん言いたいのは、どっち向いて仕事しとんねん、ということ。マスコミとは広告、テレビ、新聞、出版の4部門で、最近はネットも加わります。
まず、広告業界。電通や博報堂です。広告業界は、言ってしまえばカネで動く。だから、そのカネを持っている権力者のほうを向く。
たとえば、オリンピックや万博という巨大イベントに参画して、イメージ戦略で国民の賛同を集めながら、巨額のカネを稼いでいます。
カネ儲けは悪いことだとは思いませんが、東京オリンピックでは談合事件で逮捕者まで出た。それも、カネばかり見ている業界の体質の表われやと思うんです。
続いてテレビ。テレビはNHKと民放に分かれ、それぞれ違う方向を見ています。NHKは、本来は受信料を支払っている国民のほうに目を向けなあかんはず。私がNHKに入った当時は、新人研修でそう教えられました。研修では受信料の徴収もやらされ、視聴者の家を一軒一軒回って、大相撲や大河ドラマの話をしながら、「こういう視聴者に支えられているんや」と実感したもんです。
ところが、今のNHKは視聴者よりも、放送法を司る政府のほうばかり見ている。それを見透かした国民のなかからは「なんやねん、もう受信料は払わん」という視聴者も出てくるんです。
民放が顔を向けているのは、明らかにスポンサー。力関係でいえば、もはや完全に「スポンサー様々」となっている。背景には経営難があると思います。
もっと景気がよくて広告収入が多かったころは、テレビ局のほうが力があり、スポンサーを選ぶような状態でしたが、今やスポンサーが番組内容まで差配している。そして、ついに報道番組までがスポンサーの意向を気にするようになった。
テレビ局では、大きく分けて報道分野とドラマやバラエティの制作分野があり、経営が厳しくなると、報道が弱くなる。すると視聴率稼ぎのために、報道でもジャニーズのタレントを使ったりする。結果、ジャニーズへの批判がタブー化する。
さらに、最近は電波を握っている総務省にも気を遣うようになった。今の民放は、スポンサーと政府のダブルの影響を受けています。
本来、タブーに斬り込むのが報道なんやから、自らがタブーを作るのは言語道断。忖度報道なんて言葉は自己矛盾で、そんなことをするテレビは報道機関やない。
一方、同じ放送業界でも、ラジオは比較的まし。ラジオは制作費が安いし、スポンサーの影響を受けにくい。そのぶん、自由度が高いと感じます。歯に衣着せぬ発言をする私は、テレビ局からは出演依頼がないのに、同じ系列のラジオ局からはけっこう声がかかるんですよ。
続いて新聞。新聞は購読料で支えられているから、当然、お金を払ってくれる読者のほうを向いていなければならない。かつての新聞はプライドが高くて、「社会の木鐸」と胸を張っているイメージがあった。じつは、私は大学時代、入社するならNHKか新聞かで迷ったくらいです。
ところが、この10年で坂道を転げ落ちるように購読者が減ってしまい、広告に依存せざるを得なくなった。「朝日」なんて、不動産業で食っているのが実態。収益構造が変わってきて、もはやメディア本来の姿ではない。
もっとも危機的な状況にあるのが新聞業界といえます。最近は、購読料を値上げするという悪循環にも陥っていて、このままではもっと読者を減らすでしょう。すると広告への依存度がさらに高まり、読者よりもスポンサーを見ざるを得なくなる。悲しいことやけど、「貧すれば鈍する」ということでしょうか。
今の日本のマスコミは、「建前マスコミ」と「本音マスコミ」に大きく分かれると実感します。
明石市長時代、全国紙やテレビのキー局とは “バトル” もしてきましたが、そもそも私に対して懐疑的で、なかなか取り上げてくれなかった。反面、地方紙や地方局は好意的に私の発言や政策を報じてくれた。きれいに割れてます。これは、きれいごとばかり扱う「建前マスコミ」と、国民の真の興味に応える「本音マスコミ」の違いでしょう。
「本音マスコミ」の代表がネットやと思います。ネットは、閲覧に付随する広告収入を得ている。そのためには閲覧数を稼がなあかんから、より多くの国民に読まれることを目指す。とにかく記事をクリックしてもらうために、読者の心に突き刺さるような見出しや文章を書かなあかん。
結果的に読者、国民のほうを向いた仕事をしているんです。記事の分量に制限がないから、かなりまとまった内容で発信できる強みもある。だから、私のようなキャラクターは、やたらネット媒体から取材依頼が多い。
じつは、私がいちばん期待しているのは雑誌などの出版。出版には、“ジャーナリスト魂” が残っていると思う。
その大きな理由は、読者に買うてもらわなあかんから。「FLASH」にしても、政府が買うてくれるわけやないし、スポンサーを気にするほど広告収入が大きいわけでもない。だから、お金を出して買ってくれる読者を見る。
とくに、私にオファーしてくるのは、「FLASH」を始め、女性の水着写真が載っているような週刊誌が多い。もちろん、ありがたいこと。
ただ、週刊誌はネット記事も含めて読者にアピールしようとするあまり、内容から離れた見出しになる傾向がある。私が言ってないことを見出しにされると困るから、それはやめてくれと担当者に物申したことはある。
でも、一人でも多くの読者の目に留まらな始まらんから、なかなか難しいところやろうね。ともあれ、今後も「本音マスコミ」として、「FLASH」には大いに期待しています。