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市街地近くで育った「アーバンベア」、過疎化団地に進出する“新世代”全国で激増する「クマ被害」の恐怖

社会・政治 投稿日:2023.11.19 06:00FLASH編集部

市街地近くで育った「アーバンベア」、過疎化団地に進出する“新世代”全国で激増する「クマ被害」の恐怖

金山町で、11月6日午前3時ごろ、保育所の防犯カメラに映ったクマ。翌朝敷地内は、クマのフンが残されていたという(金山町提供)

 

 クマが人間界に――。

 

「今年はクマの目撃情報が、例年にも増して多い。特徴としては、住宅街への出没の多さです。秋田県では、ツキノワグマによる人への被害の8割が、民家近くなどの生活圏で起きています」(社会部記者)

 

 福島県では保育所に侵入、新潟県では民家に立てこもり……。クマが住宅街に繰りだす現象が相次いでいる。どれだけのクマが、住宅街や市街地など、人間の生活圏で目撃されているのか。本誌が日本全国を調査し、クマが出没した住宅街をマップにまとめると、その数は、本州だけでも延べ86カ所にものぼった。

 

 

 山に潜むクマにはない、住宅街に出没したクマの危険性を説くのは、日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦氏だ。

 

「街に出没するクマというのは、そもそも興奮状態にあることが多いのです。クマは共食いする習性があります。山にいれば、自分を食らうクマから身を隠せるのですが、街だと体をさらさざるを得ない。“彼ら”にとっては、街中で動くものすべてが、自分を襲うクマに見えるのでしょう。見つかった時点で動けば、すぐに襲われます。クマを目撃したら、まずは身を隠すこと。見つかってしまったら、絶対に動かないことです」

 

 今年だけでも6500件以上もの出没情報が寄せられたのは“クマ大国”北海道だ。出没件数のトップ・斜里町や環境省などから業務受託し、出没調査を含むヒグマ対策を実施している、知床財団の担当者は「斜里町の目撃件数は、今年が過去最多です」と今年の異常ぶりを話す。

 

「知床ではクマの目撃情報が増えることは予想されていました。ヒグマの餌資源の調査では、昨年の段階で、ヒグマにとって重要な餌資源の実りが悪いだろうということはわかっていたからです。少ないエサを求めて、ヒグマの動きが活発になっていることが、目撃情報が増えた要因のひとつとして考えられます」

 

 しかし、クマ被害の増大はそれだけが原因ではないというのが、前出の米田氏だ。

 

「全国各地で新興住宅地の造成工事がおこなわれ、市街地近くの森林で育った『アーバンベア』と呼ばれる“都市型クマ”が増えている事情があります。『アーバンベア』は住宅地近くで育つため人慣れしており、必要以上に人に興奮しません。さらにそれとは別に『21世紀グマ』『新世代グマ』と呼ばれる、定住せずに生息地を転々とするクマがいます。こうしたクマは、過疎化した団地や果樹地帯に進出し、生息域を拡大してきました。

 

 最近はクマの頭数が増えてきたこともあり、とくに夏場から秋にかけて、山中でほかのクマにエサの豊かな土地を奪われるなどして街に出てくるケースが見受けられます。また、山間部に定住してきたクマも、現在、深刻なエサ不足で街に降りてこざるを得ない状況です。

 

 これらのクマたちは、先述の『街に出た時点で興奮状態』というクマの習性がありますから危険です。昨今は、人手不足や高齢化で猟友会の力が全国的に弱まっており、こうして街に出てきたクマたちを駆除したり山に戻すことが難しくなってきています」

 

 きれいごとでは片付かないクマ事情。次に現われるのは、あなたの街かもしれない……。

( 週刊FLASH 2023年11月28日・12月5日合併号 )

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