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ランボルギーニ・カウンタックのデザイナー死去…愛車はスズキのワゴンR「外出するときはこれしか乗らない」の素顔

社会・政治 投稿日:2024.03.17 17:40FLASH編集部

ランボルギーニ・カウンタックのデザイナー死去…愛車はスズキのワゴンR「外出するときはこれしか乗らない」の素顔

ランボルギーニ カウンタック LP400(写真・アフロ)

 

 3月13日、イタリアのカーデザイナーの巨匠、マルチェロ・ガンディーニさんが亡くなった。85歳だった。

 

 ガンディーニさんは、ドアが上に開く「シザーズドア」で知られるランボルギーニ・カウンタックをはじめ、ランボルギーニ・ミウラ、ランチア・ストラトスなど、数々の高級車のデザインを手がけた。日本車でも、1980年代に量産されたマツダのルーチェや、日産のコンセプトカーAP-Xなどに携わっている。

 

 

 元レーシングドライバーで自動車評論家の桃田健史さんは、20年ほど前、ガンディーニさんの自宅を訪れ、アトリエを見るという貴重な体験をした。本誌の取材にこう話す。

 

「あまり表に出たがらない方と聞いていたのですが、イタリアの協力者を通じて取材を依頼したところ、『うちに呼んでくれることになったよ』と言われて。このことを人に話すと、『珍しいね』ってよく驚かれます。

 

 ご自宅はトリノの修道院を改修したものです。スイスのアルプス側へ走っていくと、あまり木が生えていない崖がたくさん現われ、その急斜面の中腹に建っていました。本当に改修しただけで、派手なものはほとんどなく、アトリエも非常にシンプルでした。余計なものは置いていない印象でした」

 

 当時、桃田さんは『週刊ヤングジャンプ』で連載中の漫画『カウンタック』の技術監修をしていた。その取材のなかで、ガンディーニさんの口から意外な言葉が飛び出した。

 

「カウンタックの話をしてほしいと伝えていたのですが、すでにフリーランスとして小型ヘリコプターなどいろいろな工業デザインをやっていらしたので、話題がどんどんそっちに行ってしまったんです。かなり長い時間ご自宅にいましたが、なかなか聞きたいことが聞けない。

 

 そこで、『これまでいちばん優れていると感じたカーデザインはなんですか?』と水を向けると、『“ジャバニーズ軽自動車” に決まっているだろ』と、断定的な言い方をしたんですよ。“ジャパニーズ軽” が突出していると。英語の『コンパクトカー』などではなく、まさに『ケイ』と言って、ほかにはないというような口調でした。

 

 決められた車両規格のなかで、日常的に使え、スポーツ仕様からファミリータイプまで多様にあり、なおかつ価格まで安い。『こんなものはあり得えない』と。ものすごく優れていると強調した姿が強く印象に残っています」

 

 さらに驚いたのが、愛車がスズキの「ワゴンR」だったこと(日本で「ワゴンRプラス」として販売されていたモデルの欧州仕様)。

 

「出かけるときは、ほとんどこれしか乗らないとおっしゃっていました。ご自宅は山の上のほうにあるため、周りにスーパーなどがほとんどなく、車で20~30分走らないとお店にたどりつかない。だから、『買い物のときはこのクルマで行くから』と」

 

 スーパーカーに携わってきた稀代のデザイナーが、日本の軽自動車を絶賛する。そのギャップがなんとも興味深い。

 

「自動車メーカーもデザイナーも、車はどんな車でも同じで、たまたま需要やマーケットが違うからそういう形になっているだけ、という発想をします。カウンタックにしても、ただ夢の絵を描いているわけではなく、技術的な裏づけがあるし、売値は何千万円もするから成り立つんじゃないですか、という考え方です。

 

 企画の段階で、マーケティングをして需要と供給のバランスを見る。製品の形は違っても、そのプロセスはランボルギーニでも軽自動車でも同じです。

 

 今のようにインターネットもなく、情報を手に入れるのが難しかった時代で、ガンディーニさんは非常にバランスの取れた考え方をする方だったと思います。

 

 近年まで、カーデザイナーの地位というのはそれほど高くなく、自動車の見映えの話であって、本質ではないという見方がされてきました。しかし、ガンディーニさんは、デザインで車はここまでイメージが変わるという認識を定着させたうちの一人です」

 

 素人目には二極のように映る高級車と軽自動車が、自身のなかで矛盾なく同居していた。心から車を愛した証だろう。

( SmartFLASH )

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