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野村貴仁、ロッテ佐々木朗希を初めて “生観戦”…「闘争心、気迫、スタミナが足らん!」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.16 11:00 最終更新日:2022.09.16 11:00
現在、野球評論家として活躍する野村貴仁氏(53)が、9月14日、ZOZOマリンスタジアムで先発した佐々木朗希(20)の投球を初めて “生観戦” した。
これまで何度か佐々木の登板試合のチケットを入手したが、雨天中止などに見舞われ、本人曰く “6度めの正直” の念願成就だ。
野村氏といえば、現役時代、オリックスで投手として活躍し、1996年の日本シリーズでは元巨人の松井秀喜を三振に仕留めるなどチームの日本一に貢献。2004年の引退後、2006年に覚せい剤取締法違反で逮捕された一方、大工や農業、バー経営などさまざまな分野で活躍。2021年には、元プロ野球選手が高校生と大学生を指導する際に必要な「学生野球資格」を回復している。
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この日、佐々木は日本ハムを相手に5回4安打1失点無四球で9勝めをあげた。野村氏がその投球を総括する。
「初の2ケタ勝利に王手をかけましたね、見事です。日本ハム戦では初めての勝利ですね。
ただ、今日はストレートの走りが悪かったのでしょうか。前半戦でよく見た160キロ台の球は今回は皆無で、最速159キロ。もっと速い直球を見られるかと予想してたんですけど、びっくりするようなスピードではなかったですね。
変化球を主体に投げていました。(9月3日の前回登板と)間隔があきすぎてエンジンの回転数が上がらなかったのかもしれません」
――佐々木の魅力は?
「とにかく角度ですね。身長の高さを利用し、上から投げ下ろす。高い角度から両コーナーをズバッと突けるのは強みです。
それとフォークボールですね。やはり高い位置でリリースされたボールが、さらにガクッと落ちると、バッターは本当に打ちにくい。球種や緩急を使い分けたりするピッチングセンスもありますね。
一方、彼の欠点は勝ちたいという気持ちがちょっと足りないと感じるところです。MLB(米メジャーリーグ)なら中4日で100球のルーティンを守らなければいけませんが、今は登板間隔が空きすぎています。今日は前回から中11日です。ちょっと “過保護” ですね。
投手のことをよく知っている吉井(理人)さんがコーチだから問題ないと思いますが、自分はちょっと疑問に思う。何か問題を抱えているのかと勘繰ってしまう。投手のエンジンは中5日サイクルのほうがバンバン回る。そのなかで自分の限界に挑むんです。
佐々木の場合はまだそこまで行ってない。いつもサイクルが空きすぎです。立ち上がりも体が重い印象です。エンジンが調子よく回ってきたら、4連勝5連勝としてくるはず。そうしたら、また上の段階が見えてくるものですが、まだまだ彼はそういう段階まで到達してない気がする。
なぜローテーションを崩してまで、まだ10勝もしてない投手を特別待遇するのか疑問です。投げないと肩のスタミナはつかない」
――「勝ちたいという気持ちが足りない」のは、たとえばどんな部分ですか?
「いい例は、2試合連続の完全試合がかかったとき(4月17日のオリックス戦で史上初の大記録まであとアウト3つだった)です。あれは普通の投手なら怒って、監督とケンカしますよ。2度とあるかわからないチャンスなのに、素直に引っ込んでしまった。ロッテ首脳陣も1本打たれてから代えたらいいじゃないですか。
佐々木自身ももっと投げたいという貪欲さがないと、これから長いプロ野球人生で活躍し続けるのは厳しいんじゃないかな。
MLBに行きたいなら、闘争心はとくに必要だと思う。勝ち星につなげたいという姿勢を見せていかないと。先発投手は勝ってなんぼですから。リリーフなら抑えてなんぼです(※編集部注:野村氏は現役時代、おもにリリーフ投手として活躍した)」
――佐々木にとってロッテという球団は合っていた?
「今のロッテは下位にいますから、いい意味で合ってると思いますよ。チームが強くてクライマックス・シリーズがかかったりしたら、こんな登板間隔で特別扱いのようなことはしてくれない。ローテーションをしっかり守って、どんどん投げないといけない。最後は中2日でいってくれ、というときもあると思う。
でも、僕はそういう姿を期待してるんですよ。いざそうなったときに、佐々木に行ってほしい。僕は当時の強いチーム、オリックスや巨人で優勝争いをしてきた。無理している先発投手を何人も見てきた。チームは優勝してなんぼですから。優勝するために集まった選手たちですからね。
では強いチームで投げる場合にどうすればいいかというと、やっぱりもっと肩のスタミナをつけて、中5日でバンバン回っていくしかないんですよね。
佐々木は、かつての “サンデー兆治”(ロッテで活躍した村田兆治投手の愛称で、選手時代の後半、ケガの影響で中6日の毎週日曜日に登板した)やないんですから。あの人の場合は歳を取って、『トミー・ジョン手術』をしてからそうなったんですからね。それでも17勝とかしてますから」
――MLBで21試合登板経験のある野村氏から見て、佐々木はアメリカで通用しますか?
「今のままではちょっと難しいと思います。まず中4日でローテーションを回れん投手にMLBではチャンスはないですからね。中4日で100球。これができなければ無理です。
まだスタミナも、勝とうという意識も足りない。大谷(翔平)のように闘争心がないとダメなんですよ、MLBというのは。心技体が揃ってなかったら通用しない世界です。
ケガをしない強い肉体、技術はあるとして、『心』は絶対勝ちたいという意識。技術以外は、佐々木はまだまだ幼いなという感じがします。
いい球をもっていてもコースを揃え過ぎれば打たれますから、大谷みたいに荒々しい投球をしないと。アウトコースの低めに球が決まってくると、バッターはホームベースに覆いかぶさって打とうとしてきます。そうすると、バッターには “真ん中の低め” となって、打てる位置になる。それを防ぐためには、厳しい球でインコースを突いてバッターの上体を起こさせたりしながら、抑えていかないといけない。
佐々木は球を揃えすぎてます。コントロールがいいんだから、わざとインコースに厳しい球を投げたり、アウトコースに投げたりして “振り幅” をつけたらいいと思う。変化球の場合はコーナーを投げ分けられていますが、ストレートでそういうふうにせんとあかんですよね。あくまで現状ではという意味ですが、まだMLBではローテーションに入れんでしょうね」
――3年目の大谷翔と比べるとどうですか?
「大谷は二刀流だから一概に比較できませんが、『投手』として比べたら佐々木のほうがいいでしょう。真っ直ぐで空振りをとれるし、ワンバウンドする変化球でも空振りをとってますから。そういう意味では投球は完成されつつありますよね。
でも、“完成” していたら、アメリカに行くと打たれるんですよ。さらに現地で進化する必要があります」
――将来的に大谷以上の投手になる可能性はある?
「今の大谷みたいになるのはなかなか厳しいと思います。あんなスライダーは見たことないですから。一球一球、ものすごく気合を入れて投げてるじゃないですか。迫力が違いますよ。日本にいるときには感じられなかった、勝ちたいという意欲が出ている。大谷はほかの誰とも比べられない選手になっています。
もちろん、佐々木もアメリカに行って、ああいうふうになってくれたらいいなと思う。佐々木手みたいに静かな選手ほど、敵が巨大やったらもっと凄い力を見せてくれる可能性があるかな、と思いますね。
とにかく、佐々木には大谷の投球を目指し、見習ってほしい。それに闘争心と気迫です」
――佐々木がMLBで活躍するにはどうすればいい?
「フォークという武器があるし、コントロールもいい。あとは中4日、100球というのを守れる体力と気力をなんとかしないと。日本では抑えられる球が、MLBでは簡単に打ち返されます。簡単にストレートでストライクを取りに行ったらあかんのです。コントロールがいいぶん、荒々しい投球をしないといけない。あの程度のストレートでは狙われてしまいます」
――2メートルを超す身長から「ビッグ・ユニット」と呼ばれ、MLB最高の投手とされるランディ・ジョンソンの160キロと、佐々木の160キロでは質が違う?
「指のかかり具合がまったく違うと思いますね。佐々木は今日5球ほどいい球を投げたんですけど、ランディ・ジョンソンが軽く投げたような感じの球でした。5回58球のうち5球しかいい球はなかったですね。
ランディ・ジョンソンだったら、そんな球がどんどん来るんですよ。ボールへの指のかかり具合が違います。佐々木のいい球が10球に1球だとしたら、ランディ・ジョンソンは8~9球は指がボールにかかったいい球なんです。パーセンテージが違う。迫力も、球のキレも、威圧感も違います。先発投手ならこのパーセンテージを上げないと、MLBでは厳しいです」
令和の “完全男” への評価は少々辛口だった。しかし裏を返せば、佐々木の伸びしろはまだまだ大きいということだ。
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