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元日本代表・平尾剛氏が「秩父宮ラグビー場」移転に猛反対「選手にも観客にも『改悪』でしかない」
スポーツFLASH編集部
記事投稿日:2023.01.17 16:50 最終更新日:2023.01.17 16:50
秩父宮ラグビー場の移転の見直しを求めるキャンペーンが、注目を集めている。元ラグビー日本代表で、神戸親和女子大学教授の平尾剛氏が呼び掛けているもので、オンライン署名サイト「Change.org」には、1月17日時点で1万を超える賛同者の署名が集まっている。
秩父宮ラグビー場は、東京・港区の明治神宮外苑内にあるラグビー専用の競技場で、1947年に完成。「西の花園、東の秩父宮」といわれる、日本ラグビー界の聖地だ。だが施設の老朽化もあり、現在、進められている神宮外苑の再開発の一環として、移転、建て替えが計画されている。
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平尾氏は、新競技場計画を「選手にも観客にもメリットの少ない『改悪』でしか」ないとしている。その理由として挙げるのは、以下の5点だ。
・青空の下での試合はなくなる。屋根は開閉しない
・人工芝のグラウンドになる
・観客席が大幅削減。2万5000人収容から4割減の1万5000人に
・多目的の新施設は、はたしてラグビー場と呼べるのか
・秩父宮の移転から、神宮外苑の破壊がスタートする
平尾氏がどんな思いでこの声を上げたのか。本誌のインタビューに答えた。
「資本の論理で何もかもが決まっていく。そういうことへの抵抗の意志を示したい――今回、アクションを起こした理由は、端的にいえばそういうことになります。
新しいスタジアムの計画案を見ても、ラグビーのあるべき姿、今後、日本でいかに普及させていくのか、そういった意図がまったく見えてこない。経済や効率性、つまりは資本の論理しか、読み取れないんです。
もっとラグビーを知ってもらいたい、広めたいのであれば、収容人数の大幅減などはあり得ません。なぜ1万5000人なのか。どうやら、巨大なスクリーンを設置するために、その数になるようなんです。人工芝あるいはハイブリッド芝を導入するのも、維持管理の経費や、イベント開催のため。人工芝だと、選手は火傷やけがのリスクが高くなります。また、開閉しない屋根になれば、天候とも戦うラグビーの醍醐味は失われてしまいます。ラグビーの持つ文化的な価値、社会的な役割など、失うものは少なくありません。
本来であれば、まず検討すべきなのは、建て替え以前に、いまの競技場の改修だと思います。しかし、ラグビー協会内でそのことが検討された形跡はありません。完成から75年経ち、老朽化しているので、耐震工事やバリアフリーの対応などは必要です。秩父宮より古い阪神甲子園球場は、シーズンオフに改修工事をおこなっています。それがなぜ、検討さえされないのか。
ましてや、新しい競技場の建設予定地は、『建国記念文庫の森』となっています。建設のために、樹齢100年を超える多くの樹々が伐採されます。
古いものを残せば何でもいい、というつもりはありません。ただ、先人たちの思いを汲み、ラグビーの本質とは何かを考えたうえで、ここの部分は新しくしよう、ここは残そう、と考える必要はあるのではないかと思うのです。
残念ながら、この新競技場について知っている人は少ない。私のまわりのラグビー関係者でさえ、そうなのです。新しい競技場はこうなるんだと説明すると『なんでだ』と、みんな驚くんです。
だから、ひとりでも多くの人にこの問題を知ってほしい、興味を持ってほしいと思って、この運動を続けていきたいと思っています」
1月16日には、ジャーナリストのロバート・ホワイティング氏が同じく「Change.org」で「『野球の聖地』伝統ある、緑の神宮球場を守ろう!」というキャンペーンを開始。24時間で9000を超える署名が集まっている。
平尾氏は、神宮外苑再開発の問題点について情報発信するプロジェクト「外苑フューチャー」などとも連携し、呼びかけていきたいと話している。
( SmartFLASH )