主人公の “プライドのなさ” が、とにかく最高で最強だった。
月9ドラマ『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)は、今夜、最終話を迎えるが、先週放送の第10話は、吉沢亮が演じる主人公・志子田武四郎のすごさが際立った回だった。
「PICU(Pediatric Intensive Care Unit)」とは、副題にあるとおり、“小児専門の集中治療室” のこと。舞台となる北海道は、土地が広大すぎるゆえに大規模PICUの運営は困難と言われているそうだが、そんな北海道で創設された丘珠病院PICUで、若手小児科医・志子田の成長を描く医療系ヒューマンドラマである。
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物語序盤は、経験が浅い志子田が自信なさげにオロオロするシーンが多かったが、その自信のなさが彼の長所にもなっているということが第10話で描かれた。
■バチバチに罵った因縁の相手に助力をあおぐ主人公
拡張型心筋症を発症した12歳の少年・圭吾。第5話で初登場した彼は、第10話時点で命の危機に瀕しているが、必死に生きようとがんばっている。
そんな圭吾を救うために、志子田が取ったプライドのない行動がめちゃくちゃかっこいいのだ。
自分の知識や経験の少なさをきちんと自覚している志子田は、ほかの病院の医師たちに圭吾を治す方法がないか尋ねまわっていた。そのなかには、第2話から登場し、敵対関係にあった札幌共立大学病院の渡辺純(野間口徹)救急科科長も含まれていた。
志子田の仲間である救急救命医・綿貫りさ(木村文乃)は、札幌共立大学病院に対し、妊娠36週でお腹の中にいた娘が亡くなった責任を追及する裁判を起こしていた。第4話で志子田は裁判を傍聴し、病院の言い分に激昂して渡辺と弁護士に面と向かって食ってかかったほど。
そう、志子田はバチバチに罵った因縁の相手に助力を仰いでいたのだ。そして、志子田の熱量が渡辺をはじめとした道内の医師たちを動かし、渡辺は率先して圭吾のための研究チームまで作ってくれたのである。
志子田には、自分を大きく見せたいといった安いプライドはない。
一方の渡辺は、患者を救うために最善を尽くすという医師としての根源的なプライドは元来持っていたのだろう。それで、なりふり構わずアドバイスを仰いできた志子田に共鳴したに違いない。
とにかく志子田の “プライドのなさ” が最高に輝いた瞬間で、医師の在り方として最強なのだと証明したように感じた。
■上司・安田顕が語る「掛け値なしの本音」が胸アツ
丘珠病院PICUで志子田をずっと見守ってきた植野元(安田顕)科長は、アメリカで資格を取得し、日本各地にPICUを整備してきた小児集中治療のパイオニア的な存在である。
そんな彼が、渡辺らは協力してくれないだろう、と決めつけていた自分を恥じる。そして志子田にこう告げるのだ。
「『医者ってなんだろう』って言ったでしょ? 正直、わからない。でもね、僕にとっては、実はいつも君が教えてくれるような気がする。経験とか僕のほうが確かにあるでしょ。でもね、ちょっと先に君がいて、こっちですよーって君が道を指さしてる感じがするんだよな」
志子田より知識も経験も実績も肩書も上の人格者・植野が、志子田に導かれていると語る。
複雑なしがらみも患者のためにあっさり取っ払える志子田へのリスペクト。これは謙遜でも志子田をおだてたわけでもなく、植野の掛け値なしの本音だったんじゃないだろうか。
――本作の世帯平均視聴率(※ビデオリサーチ調べ/関東地区)は第1話から第10話まで10.3%、7.5%、9.2%、9.1%、7.5%、8.4%、8.3%、8.4%、8.5%、8.4%と推移。二桁に乗せたのは初回のみで第5話までは乱高下していたが、第6話以降は8%台で安定している。
また、最近は視聴率と並んで人気の指標とされているTVerのお気に入り数(12月17日現在)で、『PICU』は103.6万人と大台を突破。
今期ドラマで大ヒットしている『silent』(フジテレビ系)の245.5万人には遠く及ばないが、日曜劇場『アトムの童』(TBS系)の65.2万人、全話二桁視聴率で好調だった『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)の44.8万人を大きく引き離す数字だ。
視聴率やTVerのデータから、固定ファンをガッツリ掴んでいることがわかる。今夜放送の最終話、圭吾が無事に治るのかも含めて、涙なしでは見られないエンディングになりそうだ。
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中
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