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490万部超の大ベストセラー『日本沈没』誕生50年 本誌が公開していた小松左京の「構想メモ」
エンタメ・アイドルFLASH編集部
記事投稿日:2023.03.16 06:00 最終更新日:2023.03.16 06:00
1973年3月20日、小松左京の小説『日本沈没』が、光文社カッパ・ノベルスとして出版された。2023年は、作品誕生からちょうど50年となる。
上下巻にわたる長編にもかかわらず、作品は一躍、ベストセラーとなり、同年にコミック化、映画も劇場公開され、日本中を巻き込んだ大ブームとなった。その影響は一過性のものにとどまらず、これまでに映画化が2回、テレビドラマ化も2回されたほか、アニメ化やコミック化などもされている。2021年10月には、小栗旬主演で日曜劇場『日本沈没―希望のひと』(TBS系)が放送されたのも記憶に新しい。
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原作は,後に多くの出版社から刊行されており、累計部数はなんと490万部超。昭和から平成、令和と、まさに時代を超えた作品だ。
そんな『日本沈没』が世に出されてから50年の節目にあたり、「小松左京ライブラリ」で、新たな資料が発表される。「小松左京ライブラリ」は、2011年に亡くなった小松左京の作品の著作権を管理する遺族が設立し、稀代のSF作家についての幅広い情報などを網羅する公式サイトだ。今回、発表されるのは、遺品の中から見つかったオーストラリアへの取材旅行に関する資料、取材旅行時に光文社の担当編集者が撮影した写真だ。
じつは、2021年のドラマ放送に際し、本誌は小松左京の「構想メモ」などを紹介していた。その際、資料を提供いただいた、左京の次男である小松実盛氏はこう語っている。
「日本が沈没する――これはまったくのフィクションです。ただ、フィクションであるからこそ、こと細かに、緻密に描く必要がある、と左京は考えていました。
作品中、さまざまな数字が出てきます。本来はそこまできっちりした数字を出さずとも、物語としては成り立ったはずです。検証しようにも、基本はフィクションですから。しかしこうしたシミュレーションは、リアルであらねばならないというのが、左京の考え方です。本当に複雑な計算を繰り返していたことが、資料からわかります。だから『日本沈没』は、完成までに9年もの年月を要したわけです。
最初のうちは、算盤を使って頭を抱えながら計算していましたが、電卓を導入して以降は、物語を書くスピードも格段にアップしたといいます」
『日本沈没』の醍醐味は、単なるSF作品、パニックものではなく、大災害に対し、政府や社会がいかに立ち向かうかという、「ポリティカルフィクション」であるということだ。1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災などを経て、その価値はさらに重みを増しているといっていい。
出版から50年を迎え、いま一度、小松左京からのメッセージを、社会が進むべき未来を考え直してみてはどうだろう。
( SmartFLASH )