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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』「反対星人」を仲間にする方法
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.09.19 06:00 最終更新日:2022.09.19 12:59
先日、3泊4日で北海道の余市町をベースにニセコ町、赤井川村、仁木町などの後志地区でビジネス視察をしてきました。乳牛や羊の牧場、野菜農家、フルーツ農園、ワイナリー、レストラン、オーベルジュなどを訪れ、現地の10名以上に取材をしました。さらに、ワインツーリズムによる町おこしで注目を集めている余市町の町長のお話もうかがえて、非常に有意義な視察になりました。
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農業というと斜陽産業のように思えます。実際、今回訪れた後志地区でも、過疎化など少子高齢化の影響がすでに深刻な問題として表われていました。
しかし、その一方で、本州から北海道に移住して、新たに農業を始める人もいます。実際、そういう人に何人もお会いしました。今回の視察を通して強く思ったのは、「最高の野菜を作ろう!」「最高の牛乳を生産しよう!」「世界に負けないワインを作ろう!」「地場食材の魅力を最大限に引き出した料理を作ろう!」という情熱的な生産者やシェフがたくさんいるということです。彼らは、自分たちの夢やビジョンを熱く語ってくれました。
こうした人たちの力が結集してムーブメントになれば、地方の過疎地を盛り上げることができる。過疎化、少子高齢化に対する処方箋となり得る。「日本の未来は明るい!」と私は感じました。そんな、北海道視察からの気づきを、皆さんとシェアしたいと思います。
■新しいことをすると、バッシングを受ける
視察の日程にはビニールハウスでのメロン栽培も入っていました。本州ではメロンを収穫した後に別の作物を植えて二毛作にするのが普通ですが、この地区では雪が降る冬までにハウスを撤去しなければならないため、メロンしか育てません。
そんな常識を破り、メロンの後に別の作物を植えて収益を上げようという新規就農の農家がいました。最初は「金の亡者だな。そこまでして稼ぎたいのか」と昔ながらの農家から罵声を浴びせられたり、「この地区では二毛作は絶対に無理」と技術的に否定されたりしたそうです。実際に技術的な部分をクリアするなど手間暇はかかったものの、現在、二毛作でおいしい野菜が収穫できているとのこと。結果として、大きな収益増につながっているそうです。
新しい作物を植えようとしたら、あるいはこの地域では誰もやっていない新しい技術を導入しようとしたら、近隣農家から大バッシングを受けたという話は、今回、何人もの方から聞きました。また、農協を通さずにネットで直販するだけでも、相当に風当たりが厳しいとのこと。
こうしたことは、農家に限らず、あなたの身近でも間違いなく起きているはずです。
会社でせっかく斬新な企画を出しても、上司に「前例がないから認められない」などと杓子定規の理由で却下され、意気消沈したという経験を持つ人も、少なくないでしょう。
■反対星人vs.チャレンジ星人
なんでもかんでもとにかく「反対」したがる人たちを「反対星人」と呼びましょう。そして、新しいことに挑戦し、より効率的で合理的な方法を積極的に取り入れようとする人たちを「チャレンジ星人」と呼ぶことにします。じつは、この「反対星人」の正体は「インプット星人」であり、「チャレンジ星人」の正体は「アウトプット星人」なのです。
インプット仕事とアウトプット仕事については、過去の連載でもお話ししました。言われたことを言われたとおりにするだけの受け身型の仕事がインプット仕事。自分で考えて、判断、提案し、自ら能動的に動くのがアウトプット仕事です。
インプット仕事しかしてこなかった人は、自分のアイデアを実行に移すなどのアウトプットができません。アウトプットできないので、成長もできない。最新の情報や最近の動向について疎いから、大昔にインプットした知識や過去の経験と前例だけで判断するしかありません。また、変化することを恐れるので、判で押したように、「反対」するのです。
一方、最新の情報、最近の動向について十分なインプットをしたうえで、さまざまな試行錯誤(アウトプットとフィードバック)をしているアウトプット星人は、現状を踏まえ、未来予測もできるので、「新しいアイデア」を発想し、実現することができます。
会社や組織などでは、だいたい9割の反対星人と1割のチャレンジ星人がいると思われます。
この1割が、新しい企画や改革案などを社内で提案しても、「前例がない」「うちの会社では無理」と、9割に否定されてしまう。こうしたことが続くうちに1割が持つチャレンジ精神や進取の気性もそがれていって、日々のインプット仕事をこなすだけの、インプット星人に変貌する。つまり、9割に飲み込まれてしまうのです。これでは、まもなくこの会社や組織は市場や環境の変化に対応できなくなってしまうでしょう。