■気が利く人は、「観察」して「予測」する
じつは「気が利かない」ということについては、チーズイベントと同じ日にもうひとつ経験しました。
イベントの後、夫婦でタイ料理のお店に移動。現地さながらの本格的な料理を堪能した後、「会計をお願いします」と言って、店員さんが持ってきた伝票の上にクレジットカードを置きました。その後、夫婦でおしゃべりをして5分ほどの時間が経過したのですが、店員さんは一向に私たちのテーブルにやってきません。
その間、店員さんはどこにいたのかというと、私たちのテーブルの3mほど前に、ずっと立っていたのです。私が手を上げると、ハッと気づいたように、すぐにテーブルに駆けつけて、伝票とクレカを持っていきました。
私が手を上げた瞬間にテーブルに駆けつけたわけですから、店員さんが怠けていたわけではありません。しかし、店員さんは立っている間、何も考えていなかったのでしょう。つまり、頭の中は「空っぽ」の状態。会計を頼まれたわけなので、「次は伝票とクレカを取りに行く」という予測ができるはずですが、それも考えていない。
お客さんに呼ばれたら迅速に対応する。それはそれで素晴らしいことですが、それだけではインプット仕事なのです。
重要なのは、「観察」と「予測」です。特に仕事がないとき、店員さんはホールに立っていることが多いでしょう。そのとき、頭の中がどういう状態であるかが、気が利く人と気が利かない人の分岐点になります。
お客さんに呼ばれるまで何も考えずに立っているだけなのか。それとも、「グラスが空になっている人はいないか」「食べ終わったお皿はないか」「帰り支度をしている人はいないか(会計間近)」「お手洗いの場所がわからなくて困ってる人はいないか」など、お客さんの様子を細かく観察しているか。もちろん、後者が「気が利く人」です。そういう人は、お客さんから言われる前に自分から行動することができるのです。
■気が利く人は「貴重な人材」
私の友人には経営者が多いのですが、昨今の人材不足は非常に深刻だそうです。特に、自分で考えて判断し臨機応変に動ける人材、アウトプット仕事に長けた「気が利く」人材は、非常に貴重だと言います。
実際、自分で考えて行動できる「気が利く人」は、会社での評価が高く、昇進も早いでしょう。安心して仕事を任せられるので、チーフやリーダー、管理職として起用したくなるのは自然なことです。逆に、インプット仕事しかできない指示待ち人間に、責任ある仕事を任せることはできません。
あなたが会社で評価されていないとしたら、それはズバリ「気が利かない」からではありませんか? 今日から「観察」と「予測」に気をつければ、きっと「気が利く人」に変身することができます。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし