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こってりラーメン全盛の時代に注目を集める名店の“ノスタルジックラーメン”5杯
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.10.09 06:00 最終更新日:2022.10.09 09:32
家系、二郎系など濃厚で食べ応えのあるラーメンが全盛の昨今。じわじわと注目を集めているのが、ノスタルジックなラーメン、ノスラーと呼ばれる昔ながらの醤油味をベースにしたラーメンだ。開店60年を超える老舗には、オープン前から常連客に交じって若いカップルなどが行列を作っている。
「今はSNSの時代ですから、若い方はユーチューバーさんなどがアップした動画を観て醤油ラーメンに興味を持ってくださるみたいですね。私も最近の客層の若返りには本当、驚いています。ふと厨房から客席を見ると、お客様の半分近くが若い方だったりしますから。店構えはただ古いだけなんですけど、昭和の雰囲気がそのまま残っているので新鮮に感じるのではないでしょうか。いわゆる『映える』というアレですね」と東京・大井町にある「永楽」の店主。
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さらに、2021年から2022年にかけては「新解釈」ともいえる斬新な手法で食べる人をうならせる店が続々と開店。「ノス活」がますます盛んになっているという。新たなブームの背景を、全国のラーメン事情に精通しているラーメンデータバンクの大崎裕史氏に聞いた。
「2010年以降、海老、貝、鴨、鯛などから出汁を取ったラーメンが次々と登場し、ほぼ出尽くした感のある昨今のラーメン業界でした。そんなこともあり、昔からラーメンの食べ歩きをしている人には懐かしく、最近の若い人には逆に新鮮な味としてノスタルジックな醤油ラーメンが受け入れられているのだと思います。新しく登場したお店も、一見すると昔風のラーメンですが随所に今風のこだわりを含んでいることが多く、懐かしさと新しさを両立させているからこそ幅広い層に人気になっているといえます」
確かに、新たに登場した店の店主は他業種から参入した人も多く、必ずしも「ラーメン一筋」ではなかったりする。それが逆に、既成概念にとらわれない味につながっているのだろう。そして共通しているのは「誰よりもラーメンが好きで、どこよりも美味しいラーメンを提供したい」という熱意だ。一般的に「シンプルな味ゆえに、特徴を出すのがすごく難しい」といわれる醤油ベースのラーメン。だからこそ、究めたいと思う店主たちが挑戦したくなる味なのだ。
「ノスラー」の原点3杯
開店60年以上、3代続く愛されラーメン
永楽
住所/東京都品川区東大井5-3-2 営業時間/火~金曜11:30~22:00、土・日曜・祝日11:30~21:00 休/月曜
昭和28年開店。現在は学生時代から手伝っていた3代目が暖簾を守っている。豚と鶏をじっくり煮込んでスープを作り、麺は平打ち。スープが黒っぽく見えるのはラードで揚げた「焦がしネギ」が入っているから。香ばしい匂いが美味しさを予感させ、そこに数種類を合わせた油が加わる。自家製の酢とラー油で味変も楽しみたい。ワンタンメン、チャーシューメンも人気。
「現存する最古の東京ラーメン」の味に偽りなし
春木家本店
住所/東京都杉並区天沼2-5-24 営業時間/11:00~15:00、17:00~21:00(L.O.20:30)休/木曜
昭和6年開店。看板には「現存する最古の東京ラーメン」。鶏、千葉県九十九里の煮干しなどでスープを作り、中細ちぢれ麺は自家製。三角形の海苔は創業当時のままだ。「おじいちゃんに連れられたお孫さんがラーメンデビューすることもあります」と店主。JR荻窪駅近くの「春木屋」は親戚。本家となるこちらの屋号は「家」である。
86歳のレジェンドが腕をふるう!
ゑちごや
住所/東京都文京区本郷4-28-9 営業時間/11:00~17:00 不定休
明治10年開店。当時はかき氷などを売っていたが、大正時代には赤飯や団子なども手がけるようになり、昭和25年ごろからラーメンも提供し始めた。86歳になる3代目の店主が作るラーメンは当時のまま。「スープは煮干し、鶏、豚、野菜などで作ります。濁らないように冷まし方にコツが必要です」(店主)
注目の「新ノスラー」3杯
フレンチ・イタリアン・和食の3技で中華そばを大胆に「新解釈」
Ramen Break Beats
住所/東京都目黒区目黒4-21-19 アイビーハイツ 1F 営業時間/火~日曜11:00~15:00(L.O.14:50)休/月曜
9時45分から予約記帳が始まる人気店の店主は、日本でフレンチ、イタリアン、カナダ・トロント在住時に和食店で経験を積んだ。「その合間にラーメンを多数作ったことで引出しが多くなったそうです。醤油は地鶏と羅臼昆布、塩は貝のうま味と鶏出汁をブレンド。どちらも無化調です。醤油にはもっちり麺、塩には低加水麺と、2種類を使っています」(大崎氏)。岩中豚ロース、鶏むね肉、鴨肉の3種チャーシュー、ゆずワンタン、味玉、海苔、揚げたエノキに彩られ、仕上げの鶏油は天草大王地鶏の脂を加熱して作られる。
イタリアと日本の特産品が美味しいコラボ
入鹿TOKYO
住所/東京都港区六本木4-12-12 穂高ビル1F 営業時間/火~土曜11:00~15:00(L.O.14:50)、18:00~20:00(L.O.19:50)、日曜11:00~15:00(L.O.14:50)休/月曜
「西洋のマツタケ」といわれるポルチーニが独特の香り高い風味を醸し出す。「こちらの店のウリは『鶏(名古屋コーチン)×豚(鹿児島産)×海老(伊勢海老)×貝(ムール貝)』の完全無化調カルテットスープです。麺は平打ち低加水麺を使っています。さらに味変アイテムとして、トリュフと数種のキノコを使った『ブラックデュクセルソース』が『引っかけスプーン』で提供されます。常に『美味しさ』を考え、進化を止めない店です」(大崎氏)。豚チャーシュー、鶏チャーシュー、鶏団子、海老団子などのトッピングもとても美味だ。
写真・木村哲夫、伊東武志